大騒動 1
騎士団本部に向かいます。
意識が戻った。私の横にはニコさんがいて同じように祈っていた。
私が祈り終わったのに気づいたのか、ニコさんも祈るのをやめた。
「神様への祈りは終わったっすか?」
「はい」
「そうっすか、じゃあ団長たちの所に戻るっすよ」
そう言って私は再びニコさんに抱っこされた。
「あぁ、そういえばハク、その手に持っているのは何すか?」
「手…?」
何気なしに聞かれたその言葉に私はすぐに反応することができなかった。ふと、自分の手に目を落としてみると何かをかたく握っていた。
(何でしょうか?)
ほとんど無意識に握りこんでいた手を恐る恐る開いてみると、そこには1つのロザリオがあった。
首に引っ掛けるタイプのもので、鎖ではなく宝石のような不思議な色合いをした石で繋がれている。派手な印象は受けず、淡い水色や紫、白などで構成されているそれはどこか神秘的な印象を受ける。極めつけはそのロザリオだ。一見、白に見えるそれはよくよく見たら、所々に金色が見える。白と言っても、真っ白ではなく透き通るような石に淡く色付いたようだと言った方がしっくりくるかもしれない。
それはともかく、私はこのロザリオのことを知らない。
(真白様から何か受け取ったような気がするのですが、それがコレなんですかね?)
そうとしか考えられないため、私は大切な人からの貰い物とだけ答え、ニコさんを騎士団の元に急がせた。
だんだんと騎士団の人達の姿が見えてきた頃、向こうもこちらに気づいた。
「おーい!」
1番に声をかけてきたのは副団長のガイさんだった。ガタイも大きく、目元に傷がある彼は少しばかり顔が怖い。だが実際は優しく、頼りになるいい人だ。しかしながら、たくさんの人が行き来する道のド真ん中でそんなに叫ばなくても…、と思いつつ私も手を振った。手を振り返して気づいたが、初めに見た時よりも団員の数が減っているような気がする。
「ガイしゃん、人がしゅくなくなっているような気がしゅるのでしゅが気のしぇいでしゅか?」
むむむ、やはりまだ饒舌とまではいかないか…。
「あぁ、ほかの何人かは先に騎士団本部に戻ってもらってる。これから俺達も向かう所だ」
「騎士団本部?」
よく分からなかったので聞き返したら優しく教えてくれた。聞いたことを簡単にまとめると、騎士団はいくつかの隊に分けられているらしい。しかし、それぞれが別々の場所に拠点を置くわけにもいかず、本部をつくりそこに全ての隊の寮や訓練場を用意したそうだ。団長、副団長は他にもいるのかと聞いたら笑われてしまった。…解せぬ。
まぁ、とりあえず今からその本部に向かうそうだ。
話を聞き終わってさあ行こうと思ったら、ガイさんに腕を掴まれた。
「ガハハハッ、次は俺が抱っこする番だぜ?」
そう言って私をニコさんから取り上げたかと思うとその場からダッシュした。ニコさんやほかの人たちは呆然と突っ立っていた。
◆◇◆◇◆◇
騎士団本部に着いた。私を抱えていたガイさんは、あれだけの距離を走ったのに呼吸を乱していない…スゴすぎる。
門をくぐり、足を踏み入れると怒号が聞こえた。
「おいお前ら!ちんたらしてんじゃねーぞ!キビキビ動け!」
どうやら訓練場から聞こえていたようだ。前世は、高校を卒業するまで運動部に入っていたためこの雰囲気には慣れていた。だから、不思議と殺伐とした雰囲気でも怖いと感じなかった。
私が怖いと思っているんじゃないかとガイさんが顔を覗き込んできたが、大丈夫だと答えた。私が怖がっていないのを不思議だというガイさん。どうやらこの世界では、大の大人でも大抵は尻込みするか怯えてしまうそうだ。
確かにそれだと怖がっていない私はおかしいと思う。しかし本当に怖くないのだ。今更演技したとしても意味は無い。それに私はここの人達に嘘を吐きたくなかった。だからこれ以上深入りさせたくないため、無理やりガイさんを急かした。
“第一小隊”と書かれたプレートが貼られた扉の前に来た。どうやら先程まで一緒だった人達(マティーさん達)は皆第一小隊の人達だったらしい。
私がこれから過ごすことになる寮だそうだ。
ガイさんに地面に下ろしてもらい、期待に胸を膨らませ、いざ、扉の向こうへ!と扉を開けたら、
「ハク!」
開けた扉のすぐ側にいたマティーさんに持ち上げられた。…本当、すぐに持ち上げたり抱き上げるのやめてもらえませんかね。私はすでに諦めの境地にたっしていたが、まぁ、文句を心の中で言うくらい許されるだろう。
そして、ガイさんが扉を閉めたと同時に寮の中は歓声に包まれた。
次からちょっとした騒動になります。まぁ、平和的だと思うので楽しんで頂けたらさいわいです。




