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二話 招かれざる悪意

あらすじの方を大幅に修正しました。

それと誤字等ありましたらご指摘お願いします。

「ごきげんよう、ソウ・ルイス・オルティースです。本日は僕の誕生日パーティにお越しいただいて誠にありがとうございます」

「ごきげんようソウ様。私はフィッツ・シュピーゲルと申します。以後お見知りおきを」


 パーティが始まり、貴族の方々が挨拶に来ますが父様が釘を刺してくれたのか、自分の子供を連れてきて交際を迫ってくる人はいませんでした。

 と言っても大体の方は僕以外の兄弟のパーティにも来たことがあるので、僕の不安は見当違いだったのかも……


 元々父様と母様は身分が違いましたが、互いを思う気持ちを先代の国王が認めてくださり、結ばれることが出来たんだとか。


 なので二人は基本的に僕たち兄弟に政略的な結婚を押し付ける気がなく、恋愛を自由に認めてくださっています。


……ですが、逆にそのせいで兄様達は全く異性の方とのお付き合いに興味を持ってないのです。


 一番目と二番目の兄様は公務や魔道具の研究だとかに精を出していて、二人とも女性の方からアプローチは受けるのですが、それら全てはやんわりとお断りしているそうです。


 フレイ兄様にも好きな人はいるのか聞いたことがありますが、「いない」とはっきり言われてしまいました。


 メリッサ姉様に関してはもう何も言えません。

 第一王女だと言うのにフレイ兄様と毎日剣の稽古をしたり、時折兄様達の魔道具を暴発させたりして城を騒がせています。

 そのせいで、とても美人なのですが結婚を申し込んでくる人は全くいませんね。


 唯一、リーネ姉様だけは好きな人が居るらしいのですが、流石にどなたかは教えてくれませんでした。

 無理に聞くのも失礼だと思いますので、それ以上の詮索はしていません。


 ……かく言う僕もまだ好きな人はいません。

 この城以外へは度々使い魔に乗って町へ赴く程度ですので、女性との交流はあまり多くないですし……


 その後何事もなく貴族の方々との挨拶が終わりました。

 終わったのを見計らって、近くで待ってくれていたフレイ兄様が声をかけてきました。


「お疲れ、ソウ。大丈夫だったろう?」

「はい、少し考えすぎてたみたいですね」

「そうだな……ちょうど今から催し物が始まるようだし、見に行くか?」

「はい!どんな物か楽しみです!」


 大広間へ行くと、丁度演劇団の方々が劇を演じている最中でした。


 かつてこの国を襲った魔王サタナエルとそれに立ち向かった勇者ルイスの物語。

 今は二人の最後の戦いのシーンです。

 双方ともに死力を尽くし、お互いあと一歩というところでルイスの持っていた剣が砕け散ってしまいます。


 勝利を確信した魔王ですが、突如ルイスの体から現れた黄金色の剣に不意を突かれ、体を貫かれました。


 ルイスは、魔王を打ち倒すことは叶いませんでしたが、強力な封印によってその力を消失させ、長き眠りにつかせることができました。


 魔王を封じた功績を讃えられ、王国はその名を歴史に刻むという意味で、この国は勇者の名である『ルイス』を国名に使ったのです。


「とても迫力があった劇でしたね」

「あぁ、しかしルイスが使った黄金の剣がやはり気になるな……」


 もちろんこの物語は本や劇の人気作として国中に知られています。

 ですが不思議なことが多い物語として研究の対象にもなっています。


 特に何の前触れもなく現れ、魔王を封じたと言われる剣の噂は数知れず。


 剣は魔王に封印を施した後、黄金の輝きを放ちながら消えていきました。

 噂の中で有力な説としては、あれはルイスが放った強力な封印魔法では?というものがありますが、真相は定かではありません。


「劇の次は……あ!あれにしましょう!」


 次に選んだのは音楽団の演奏。

 様々な楽器による美しい旋律が耳に響き渡ります。


「あぁ、何だか一緒に歌いたくなってきました……!」

「良いんじゃないか?今日の主役はソウなんだ、思いっきり歌ってこい」

「はい!」


 そういうと僕は音楽団の団長に自分も混ざりたいと話してみました。

 すると団長は快く受け入れてくれて、僕も一緒に歌うことになりました。


 僕を交えて始まったのはこの国では有名な曲。

 団員の方々は、自然と僕の歌声に合わせながら演奏をしてくださいました。


 そのおかげで、僕は心置きなく歌うことができました。

 流石はプロの方々です。

 僕がいきなり参加したにも拘らず、それに見事に合わせるどころか、僕の声を更に際立たせてくれる演出までしてくれました。


 曲が終わり沸き起こった喝采に礼を返し、僕は参加させてくれた団長の元に歩いていきました。


「ありがとうございました!皆様のとても素晴らしい腕前のお陰で僕も心置きなく歌えました!」

「いえいえ、こちらも『音精』と名高い殿下と共に演奏をできたおかげで、拍が付くというものです。お誕生日おめでとうございます」


 団長との会話を終えて、僕はフレイ兄様の元に戻りました。


「お疲れ、中々良い歌声だったぞ。楽しめたか?」

「はい、とっても!」

「そうか、それなら良かった」



 その後、さまざまな催し物を見て回り、気が付くと時間はもう昼になっていました。


「お腹が空いてきましたね……兄様も何か食べませんか?」

「そうだな、確か大広間の中央に料理を運んでくると料理長は言っていたが……」


 昼食は催し物で埋まっていた大広間を開けて、そこで料理を皆に振舞うそうですが……


「お、来たな」


 広間の中央に白いエプロンと白い帽子、手にとても長い布を持った高齢の男性とテーブルを運んでいる十数名の人が入ってきました。


「こんにちは、皆様。私は本日のメニューを考案、調理したこの城で料理長を務めている者です。国王のルイス様の名に恥じぬよう、様々な料理を持って皆様を楽しませることをお約束します」


 そう言うと料理長である男性は、後ろで設置されたテーブルに向って手に持っていた布を広げました。

 先ほどまでテーブルをセットしていた数人も、同じ布をテーブルに広げました。


 料理長の合図で一斉に布が取り払われるとそこには……


 テーブルに見事に並べられた、豪華な料理の数々が広がっていました。

 全てが綺麗に彩られていて、何より驚くべきはその料理全てが新鮮なまま現れたのです。


「おぉ!あんなにも豪華な料理が突然……!」

「まぁ、なんて綺麗なのかしら!」

「流石は城の料理人だな、素晴らしい!」


 目の前で披露された驚くべき光景に様々な反応を見せる人たち。


「さぁ、どうぞ。冷めない内にお召し上がりください」


 料理長が一礼して去っていくと、皆が次々に好みの料理をとるために用意された皿に走り出しました。


「すごい、あんなに料理が沢山……」

「お気に召しましたか、殿下?」


 僕が料理の豪華さに驚いていると、すぐそばには先程までの余興を披露していた料理長の姿が。


「はい!一体どうやって料理を布から出したんですか!?」

「実はあの布は一番上のお兄様から受け取った魔道具でしてね。何でも今日のサプライズの為に作ったそうで、料理や素材を質を損なうことなく持ち運べる魔道具だそうです」

「ヤーコプ兄様が?」


 僕が聞き返すと、

「はい。殿下の驚く顔が見たくて作ったそうですが、見られなくて残念でしょうね。それにしても私も料理の質を保ったまま提供できる魔道具は喉から手が出るほど欲しかったので、お兄様には感謝しています」

 と答えてくれました。


「なるほどな、兄さんの魔道具と言われれば納得だ」

「そうですね、流石ヤーコプ兄様です」


 フレイ兄様もヤーコプ兄様の作った魔道具の性能に驚いていました。


「ささ、冷めないうちに殿下達もお召し上がりください」

「はい、いただきます」


 料理長に促され、僕達は早速料理をいただくことにしました。


 料理はどれも全く食べたことのない新鮮な味で、ついつい色々な種類に手を伸ばしたくなるようなものでした。


 僕が料理に夢中になっていると、一人の少女が声を掛けてきました。


「あ、いたいた!ソウ、誕生日おめでとう!」

「ありがとうアリシア、来てくれたんだね」


 彼女はアリシア・カーライル。

 父様の側近兼護衛隊の隊長の一人娘です。


 僕とアリシアは父同士の仲が良く、年も近いことから小さい時からよく一緒に居ました。


「聞いてよソウ!私は早くお祝いに行きたいって言ったのに、父様ったら『昼になるまで辛抱してくれ……』って!」

「一応アリシアも護衛隊の一員だからね、仕事お疲れ様」

「うん、ありがと!」


 アリシアはそう言うと、今度はフレイ兄様の方に向き直りました。


「フレイ様こんにちは!お父様にはいつもお世話になっています」

「あぁ、こんにちは。こちらも君のお父様にはお世話になってるよ。それに、いつもソウに付き合ってくれてありがとう」

「そ、そんな、付き合ってるだなんて……」


 顔を赤らめているアリシアとそれをみて笑う兄様。

 僕もそれに釣られて笑うと、アリシアが何故か僕を叩いてきました。


 そんな穏やかに過ぎていた時間は……
















「本当に憎らしい子ね……殺してあげたくなっちゃう」




 一つの悪意によって崩壊しようとしていました。

三話目もこの時間帯に更新予定。

是非見ていただけると嬉しいです。

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