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Requiem of The TAMASYI!! ~転生双子の大冒険~  作者: 平行線R
第1章 requiem of the priest
7/22

7.ヨルト村

 イセナリア連邦の各都市間と村を繋ぐ街道。その街道沿いには、10メートルおきに街道目安と呼ばれる印が設置されている。

 それは、街道を通る旅人が、次の町までの距離を測るための目印となり、また、あえて傷つきやすい素材を用いることによって魔獣の生息場所を割り出す手助けになる。

「499……500……501……502……えーと、502……502……502……?」

 そんな街道目安を、ルナは延々と数え続けていた。

「502……ごひゃ……?」

「お前は502中毒か!?502、502ってうるせえよ!」

「502?何言ってんの?」

「だぁ!!もう!何でもない!」

「……?えーと、503……504……505……」

 ルナがこんなことをしている理由は、立派な行商人になるための修行……ではなく、単純に旅に飽きてきたからだ。

 カロンは全然飽きてなんかいない。後ろにいるエリスも飽きてなんかいない。

 しかし、ルナとソルは、飽きていた。

 パルミコからラルクスへの移動では無かった感情、『退屈』、一度旅を経験したことにより感動の薄れた2人には、思ってもみなかった敵が現れたのだ。

 ルナとソルには何にも仕事がない。馬を操る退屈しない仕事をしている両親に、ただ付いてきているだけの状態の2人は、退屈に(あらが)う術を持ち合わせていなかった。

 いっそ、旅で必要になるから筋トレをしろ、と親の方から言ってくれればいいのに、言ってくれないせいで荷台の上で筋トレもできない。

 まあ、仮に怪しまれずに筋トレができる環境が整ったとしても、この揺れる荷台の上で腹筋をしたりしたら頭を打つに決まっているのだが。

 そんなことを考えながらぼうっと街道沿いの印を数え続ける。

 ちなみに、わざわざ数えなくても一定間隔で数字の振られた街道目安があるので、完全に無駄な行動である。

「……513……514……あれ?」

「どうした?あってるぞ?」

「いや、あれ……」

 ルナが怪訝な顔で遠くを指さすと、ソルとカロンがルナが指さす方に目を向ける。

「なんだ?ありゃ?」

「魔獣……かな?それにしちゃ、ずいぶんとおとなしいように見えるけど……」

 3人の視線の先にはうっそうと生い茂る森、そしてその入り口付近でちらちらと姿を見え隠れさせるいくつかの影――

「……危険かもしれない。おい!エリス!」

 カロンが後続のエリスに向かって、魔獣を呼び寄せない程度に声を張り上げる。

「なに?どうしたの?」

 エリスも、3人の雰囲気が変わったことが見てわかっていたので、大方の予想を立てながら聞き返す。

 そして、カロンの指さす方向を見、眉をひそめて考え込む。

「急ぎましょ。魔獣だとしたらいつ出てくるかわからないし、盗賊だとしても危険なことに変わりはないもの」

「ああ。ソル、ルナ、悪いけど、少し飛ばすぞ!ピート、悪いが休憩は後回しだ!」

 休憩を先延ばしにされた馬は不機嫌そうに鼻を鳴らしたが、その要求は聞き入れることはできない。

 もとより、こういった不測の事態のために、休憩はこまめにとっているのだから。

「リーン、あなたもよ。ごめんね?」

 エリスの馬は物分かりがいいもので、わかったとばかりに鼻を鳴らして走り続ける。

 この辺の違いがわかるのは、故郷の村から長く一緒に旅をしてきたカロンとエリスだからこそできることであり、他の者に真似できることではない。

 2台の馬車はそのまま走り続け、その日の夕方には目的地、ヨルト村へとたどり着いた。


   ♪


 ヨルト村は、ラルクスからヨンドルへ向かう道の途中に位置する村で、ラルクスから馬で約3日の距離に位置する村で、他のよくある村と同じく野菜の栽培が盛んな村だ。

 これだけ聞くと、ラルクスで仕入れた商品をここで売り、野菜を仕入れてラルクスに戻れば稼げると思うかもしれないが、実際はこの村で野菜を仕入れることは大損である。

 ヨルト村はラルクス市の食糧源と見なされており、すでに定期的に野菜をラルクスに送る契約がなされているからだ。

 ラルクス市はこの村に飢えてもらっては困るため、野菜の仕入れにはある程度の金額が支払われる。一介の行商人がどれだけ巧みに仕入れをしようとしても、最低価格としてラルクスの商人の値段がある以上、利益はあまり見込めない。

 そのため、今回、カロンたちはあくまでも立ち寄っただけで、ヨルト村での仕入れはしないものと決めていた。

「行商人さんですか。ようこそおいでなさいました。ヨルト村はあなた方を歓迎いたします」

 村に滞在するにあたって、ヨルト村の村長と形ばかりの挨拶を交わす。

 商人は信用が命だが、カロンたちが行商をやめたのが5年前、イセナリア連邦で行商をしていたのがさらに6年前ということだけあって、信頼関係は皆無と言っていい。これから信頼関係を築いていけたらいいとは双方思っているはずだが、残念ながらカロンたちはいずれイセナリア連邦を出るつもりなので、再びこの村に舞い戻ってくるのがいつになるかは見当もつかない。

 ひとまずの挨拶を終えたカロンたちは村で宿をとり、宿の隣の馬小屋に馬をつなぐと、部屋で休憩をとることにした。

「結局、襲われることはなかったけど……なんだったのかしらね?」

 双子で一つのベッドをあてがわれたため、2人で同じベッドに寝そべっていると、不意にルナがそんな呟きを漏らした。

「何が?」

 ソルはむくりと起き上がり、怪訝そうにそう聞く。

「あの森でチラチラしてた影よ。あそこから休憩を挟まずにここまで来たじゃない?」

「ああ。あれか」

 ルナが呆れた口調で説明すると、なんのことだか見当がついたソルは相槌を打つ。

「1体じゃないと思うけど……太陽の加減のせいで結局なんだかわからなかったからな。そもそも見間違いな可能性もあるし」

 結局何も起こらなかったのだからそれでいい。ソルは疑問にそう落としどころをつけて、納得していた。

 長い人生、そんな些事1つ1つに時間を割いてはいられないのだ。あの場での対処は必要だったが、乗り切ったのであれば掘り返すほどの話でもない。

「2人とも、まだその話してるのか。まあ、結局何だったのかは気になるけど、魔獣だって断定できたわけでもねえんだし、そこまで気にする必要はないぞ」

「まあまあ、いくら大人びてるって言っても2人はまだ5歳なんだから。色んなことに興味を持つのは良いことじゃない」

 カロンは人生の教訓を語り、内心ではまだ気になっているエリスはソル達のフォローをする。

「ま、ともかくだ、無事についたから良しってことにしようぜ。2人とも、ゆっくり休めよ」

 勝手に会話に乱入してきたカロンは、勝手に会話から抜けると、さっさと寝てしまった。

 ソルは、自分勝手な親父だな、と思いながらも、自分がそれを思うことの滑稽さに苦笑し、夜中にうるさいおしゃべりな姉を寝かしつけてさっさと寝ることにした。

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