2.ソルという名の赤ん坊
本日2本目です。
(なんか、長いこと眠ってたような気がするな……)
「あ、起きたのね!」
(ん?エリスか。なんだ、そんなに顔を覗き込んで。あれ?この喜び方……それに、眠ってた感覚……もしかして、俺、ずっと寝たきりだったのか!?)
「カロン!起きたわ!」
(お、おう、そんな大声で言わなくても聞こえてるぞ。っていうか、ヤバイ、ガチで体が思うように動かねえ……。感覚も変だし……)
「おいおい、そんなに騒ぐなよ」
「あ、そうね。ごめん」
(……?だれだこの男の声?俺の友達の誰かがお見舞いに来てくれてるのか?けど、誰だこの声?聞き覚えはあるのに思い出せねえ……)
「どれ、お、元気そうだなぁ。起きたのはソルの方か」
(……!!誰だこいつ!エリスの肩に手を回しやがって!エリスもなんで嫌がらないんだ?おい!ちょっとそこの男、面を見せろ!)
「よしよし……うんともすんとも言わないな?大丈夫だよな……?」
「え……?たぶん、大丈夫だと思うけど……。ソル、おへんじして?」
(ソル?なんだそれ?俺に言ってるのか?エリス、どうしちまったんだよ!?)
「おいおい、そんなんで返事してくれるわけないだろ……。おーい、ソル、返事しろー」
(だからソルってなんだよ!ええい、そんなに返事が聞きたいんなら、してやるよ!息を吸って……お前は誰だ!?)
「オアアァァァ!!」
(あれ?うまく喋れないな……)
「あらら、泣いちゃったじゃない……」
「俺のせいか!?よし、なら、俺が抱っこしてやろう」
(はあ!?俺の目の前でエリスを抱っこするだぁ!?こいつ……は!?ちょ、顔を近づけるな!野郎の顔を近づけられても嬉しかねえ!……って、ん?)
「ほれほれ、ソル、お父さんだぞー」
「ちょっと、カロン、気をつけてよ?ソルはまだ赤ちゃんなんだから」
「わかってるわかってる」
(ん?持ち上げられた?ん?あれ?こいつは俺?あれ?俺は誰?ソル?赤ちゃん?どういうことだ?)
「ほら、泣き止んだ」
「抱っこした時にはもう泣いてなかったけどね。ほら、おっぱい飲ませるから貸して。お腹すいたのかも」
(……!?おっぱい!?飲む?俺が?)
「はい、お姉ちゃんの分は残しておいてねー?」
(ちょ、んぐ!?……エリスの、おっぱいかぁ。こんな味なのか)
「俺は何をしてればいい?」
「飲む?」
「……飲む」
(ちょ、おい!そこの俺!それは俺のだぞ!)
「これがエリスのおっぱいかぁ。こんな味なのか」
(おい!真似すんな!)
「はい、カロンはおしまい。ソルが飲むのやめちゃったじゃない」
「お前から言い出したんだろ……じゃあ、ソルを戻すぞ」
(ちょ、おま、ゲップさせないの!?ん、俺の寝てた場所にもう一人……?あれがさっきエリスが言ってたお姉ちゃん……?」
「ちょっと、ゲップさせないとダメだって」
「お、そうか」
「よしよし、ゲップしてねー」
(あ、背中をさすられるのってこんな感じなんだ)
「ゥエッフ」
(なんだ今のゲップは!?)
「変なゲップね。はい、じゃあ、おねんねしましょうねー」
(そういえば、眠い気がする……ダメだ、状況を把握しないと……ぅ、ねむ、ぃ)
「あらら、本当に寝ちゃったみたいね。一緒に遊びたかったのに」
「エリスもまだ本調子じゃないんだから、休んどけよ。こいつらは俺が見ておくからさ」
「そう?じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっと寝てこようかな?実は少し眠いのよね」
「ああ。またどっちかが起きたら起こすよ」
「うん。じゃあ、おやすみー」
(ぁ……まっ……て……)