表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Requiem of The TAMASYI!! ~転生双子の大冒険~  作者: 平行線R
第1章 requiem of the priest
10/22

10.キルノト村

 世にも珍しい獣人の神官リシュカ=フランシュカ。彼女と一緒の旅路(たびじ)は、今までの家族だけの旅とは違ったものになった。

「あ、夜の見張り……私がやります」

「服……本当にもらっちゃっていいんですか……?申し訳ないです……」

「あ、ソル君、ルナちゃん、なにかして遊びます?え?走りたい……?すみません、走るの苦手で……」

 基本的に、聞こえてくる言葉は謝罪の言葉や自己犠牲的な言葉が多いのだが、それでも、それまで友達と遊ぶという経験をしてこなかったソルとルナにとっては、新鮮な体験となった。

「リシュカ、ソル、この野菜切って?」

「はいはい」

「はいです……ってソル君(はや)っ!よぉし、私も……イダァ!?」

「ちょ、リシュカ大丈夫?ほら、血、洗って……」

「ごめんなさいですぅ……」

 お料理の手伝いに挑戦中のリシュカは、トントントン、イダァ!?トントントン、イダァ!?と、謎のリズムを刻みながら、食用にヨルト村で少しばかり仕入れた野菜を切っていく。

 隣で約5倍のスピードで野菜を切っていくソルの姿を見てやる気を燃やしている姿は微笑ましいが、止血用のガーゼを構えながら待機するルナは気が気でない。

「リシュカ……?あの……私、代ろっか?」

「いえ、ルナちゃんの手を(わずら)わせるわけには……イダァ!?……お世話になってるんだから、これくらいはしないと」

「そ、そう。無理はしないでね」

「はいです」

 嬉しそうに笑顔を浮かべ、何度目かわからない悲鳴を上げるリシュカを見ると、ルナはそれ以上何も言うことはできない。

「できました。カロンさん」

「ほいよ、お、よく切れて……る……な……?」

 エリスが野菜を洗い、リシュカが赤く染色し、カロンがそれをそのままルナに渡し、ルナが洗った後カロンが鍋に放り込む。

 そんなサイクルが出来上がっていた。

「私、お料理って初めてしたんですが……難しいんですね……」

「その年で……?ええと、リシュカって何歳?」

「えーと、11歳です。おかしいんでしょうか?」

「うーん、まあ、生まれによるとは思うけど……」

 世界には多種多様な国があって職業がある。地域によっても違うだろうし、農民と貴族、商人と兵士の子どもが同じ育ち方をするわけもない。ルナの常識でリシュカを測ることはできないのだ。

 数十分が経過して、野菜と保存が利く干し肉を惜しげもなく投入したスープが完成した。

 宿屋で作ってもらう料理とは違うが、自分たちで作った物には自分たちで作った物なりの良さがある。

 若干、血生臭い気がするが……たぶん肉に火が通ってなかったのだろう。

「おいしいです!カロンさんは料理が上手いんですね!」

「いやいや、そんなことはないぜ」

「ああ。親父よか母さんの方が上手いからな」

「何だと、ソルこの野郎!」

「……?なんでソル君も少し照れてるんですか……?」

 手はボロボロだったが、完成した料理を食べてリシュカから笑顔がこぼれる。

 ルナはそれを見て、まだよく知らないこの少女のことを、少しだけ知れたような気がした。


   ♪


 4日後、前方に見えるのは、ラルクス、ヨンドル間にある2番目の中継地点、キルノト村だ。

 この村は、ラルクスとヨンドルのちょうど中間地点にある村で、東には無数の村や町、西には大国リンチュア皇国とイセナリアを隔てるハイディア砦がある。

「わあ!凄い町ですね!」

 ヨルト村とは比べ物にならない規模のキルノト村に、思わず感嘆の声をあげるリシュカだが、あいにくここは町ではない。

 十字に伸びる街道を通ってくる商人たちの、交通の要所であるため、すでに町とも呼べる規模まで大きくなっているが、登録上は町ではなく村ということになっているのだ。

「むぅ……なんでここが村なんですか?」

「さあな?噂じゃ、村の所属が明確じゃないから、扱いに困ってるって話だが……」

 もともとイセナリアの、都市以外の村や町は、過去の大戦時代に他国に進出しようとした各都市国家の軍隊の野営地の名残などが発展したものだ。

 大戦時代以前の世界では、魔獣の脅威があるため壁のある都市国家以外の町や村というものは、存在しえなかった。しかし、大戦時代、他国への進行の際にルート上の魔獣の掃討、拠点の設置が行われたため、魔獣の生息域が限定され、頑丈な壁を作らなくても人間が暮らすことのできる地域ができたのだ。

 イセナリア連邦では、結成当初、各都市の領地の問題が浮上したため、暫定的に、村、町を、ルーツとなっている都市の領地として配分し、その際ルーツが不明だった村や町はイセナリア連邦には所属しているが都市への帰属はなく、自治を認めるという法令を出した。この法令はその後改正されるはずだったが、色々とゴタゴタがあったためにそのままになってしまって、現在でも所属都市が不明な村や町というものがいくつか存在する。

 キルノト村はそんな所属が不明な村の1つだった。

 村の周りは一応柵で囲われており、立派なゲートが入り口として立っている。

 ソル、ルナ、そしてリシュカを乗せた荷馬車は、立派な入り口ゲートを通って村の中へと入り、村長へと挨拶しに行った。

「やあやあ、ようこそ。キルノト村へ。私が町長……ゲフン、村長です。お見知り置きを」

 ジョークのつもりなのか、わざとらしく咳をして握手を求める町……村長とそれぞれ握手をし、挨拶を終える。

 さすが様々な人間が通過する村の村長と言うべきか、子供であるソル、ルナとも握手をして、獣人のリシュカとも嫌がらずに握手をして言葉を交わす。

 リシュカはビクビクしていたが、村長の気さくな態度に安心したのか、次第に緊張が(ほぐ)れていった。

「いやあ、それにしても、今時旅人が挨拶に来るなんて珍しい方々ですな」

「そうなんですか?お世話になる村ですし、まあ、この規模だと確かに来ない方もいるのかもしれませんが……お邪魔だったでしょうか?」

「いえいえ、そんなことありません。この村によく来る人間ほど、手続きだけ済ませて通り過ぎてしまう人が多いですから。あなた方みたいに来てくれる方がいると、昔を思い出します」

 旅人は、さすがに都市や大きな町の町長にいちいち挨拶に行ったりはしないが、村などの小さな集落の場合、村長に挨拶に行くのが通例だ。カロンはその通例に従ったのだが、どうやらこの村は大きくなりすぎて、旅人の中では町の扱いになっているらしい。

「なにはともあれ、お疲れでしょう。宿をお教えしましょう。この村には遠方からくる方もいるので、魅力的な商品が見つかると良いですね」

「はは、そうですね」

 初めて会う人間にもフレンドリーな態度を忘れない村長の態度に感心し、カロン達は紹介してもらった宿へと足を運んだ。


   ♪


「はいよ。1部屋5シル、1人当たり1日3シルね。朝、夕食付き、小腹が空いたときは追加料金ね」

 そばかすが目立つ宿の看板娘にそう言われ、カロンは(ふところ)から2部屋と5人分の代金を5日分、大銀貨1枚と中銀貨2枚、小銀貨5枚を取り出し、目の前の机に置く。

 シルというのは世界中で使われている通貨の単位で、他にゴル、カルがある。

 1000カルで1シル、1000シルで1ゴルで、カルが銅貨、シルが銀貨、ゴルが金貨だ。

 それぞれの硬貨は大中小のサイズがあり、小硬貨10枚で中硬貨、中硬貨10枚で大硬貨となる。

「これで、2部屋を5日分お願いする」

「はいよ。5人入れる部屋ありますけど、いいんです?」

「ああ。2部屋に分けたいんだ。それでいい」

 看板娘とやり取りをするカロンを待ちながら、リシュカはその後ろでキョロキョロと周りを見回す。

「リシュカ、こういうとこ初めてなの?」

「はいです。こういう賑やかなところはあんまり……」

 聞けば、リシュカはキィリュを出てからイセナリアへ入る間は、兵士に守られながら天幕の中で寝ていたそうで、男たちが夜通し酒盛りをしているような宿屋には入ったことがないのだという。

「ところで、カロンさんは何で2部屋にしたんでしょう?1部屋の方が安いのに」

「あー、それは、リシュカもいるから……じゃないかしら?」

「ふぇ?あ、そ、そうですよね……私なんかが一緒の部屋にいたら嫌ですよね……」

「え?ちょ、違うわよ。そういうことじゃないわよ!?」

 勘違いをしたリシュカをエリスが宥めようとするが、効果は薄く、リシュカは(うつむ)いて泣き出してしまう。カロンの後ろでは、エリス、ソル、ルナの3人でのリシュカ泣き止ませ大会が突発的に開催されていた。

「……お客さん、ほんとに2部屋でいいの?」

「……1部屋に変更だ」

「はいよ。お客さんも大変だねぇ……」

 自分の後ろで繰り広げられる惨状を見ずとも、聞こえてくる声と、目の前の看板娘の顔を見れば後ろがどうなっているのかは容易に想像がついた。

 看板娘の責めるような表情、そして後ろから響くリシュカの鳴き声を聞いて、カロンは頭を抱えながら部屋を変えたのだった。


   ♪


 人の寄り付かない暗い森の中、魔獣たちの巣くう危険地帯に、焚火を焚いてその周りを囲み、胡坐(あぐら)をかいて座る数名の男たちがいた。

 周囲には何かがゴチャゴチャと乱雑に詰め込まれた袋が散乱し、脱ぎ散らかされた服はどす黒く汚れている。

「依頼主の馬鹿どもめ、あいつら皆殺しにしてやろうか」

 酒を片手に低い声でそういう男のその言葉に、周りの男たちも口々に、そうだそうだと声を荒げる。

「こちとらあの戦闘で3人死んでるんだぞ?それを、なんだ、小娘一人逃したくらいで依頼失敗?1カ月以内に小娘を生け捕りにしろ?依頼内容を急に変更するんじゃねえよ!死んじまえあの阿呆ども!」

 グビッと酒を飲み干し、空になった酒瓶をひっくり返す男は、物騒な言葉を吐くとゴロンと仰向けになった。

「まあまあ、そうカッカすんなよディロン、そんな小娘くらい、その気になりゃあすぐに見つかるさ」

「……ふん、どうだかな。ヨルト村にでも逃げ込まれてたら、少々面倒だ」

 酒瓶の男――ディロンは、仰向けに空を仰ぎながら鼻を鳴らす。

 そして、近くにあった袋の1つから、ゴソゴソと何かを取り出し、しげしげと見つめる。

「こいつだけでも十分価値があると思うんだが、なんで奴らは小娘とセットにしたがるんだ……?」

「そりゃあ、そいつがオカリナの名手だとかそんなんじゃねえの?」

「阿呆、ただ綺麗な音楽が聴きたいってだけで、こんなこと依頼してくる訳ねえだろう」

 ディロンは持っていたオカリナを掲げ、透き通るようなその表面を撫でまわしながら手の中で(もてあそ)ぶ。

「ともあれ、明日からは小娘探しか。特徴ってわかるか?」

「おいおい、お前も依頼主から聞いてきたんだろう?」

(わり)いな。あいにく俺の頭ン中は呪詛の言葉でいっぱいだったもんで」

「はあ、しょうがねえなあ。お(かしら)は。金髪の小娘だぜ――獣人のよぅ」

「へえ……獣人ねぇ……おもしれえ。俺らの奴隷にしちまって、あいつらに引き渡してから自害するように命令しときゃ、結構おもしれえことになんじゃねえの?」

「お、それいいな!やろうぜ!」

「賛成だ!そうなると、どっかの町で奴隷商を探さねえとなぁ!」

 ギャハハと下品に笑う男たちの声が無人の森にこだまし、男たちの酒盛りは続く。


 遠く離れたキルノト村で眠りにつく小さな少女は、悪寒を覚えて布団の中でブルリと身を震わせた……。

一応、分かりにくかったかもしれないのでお金の単位を一覧にします。


1カル=小銅貨

10カル=中銅貨

100カル=大銅貨

1,000カル=1シル=小銀貨

10,000カル=10シル=中銀貨

100,000カル=100シル=大銀貨

1,000,000カル=1,000シル=1ゴル=小金貨

10,000,000カル=10,000シル=10ゴル=中金貨

100,000,000カル=100,000シル=100ゴル=大金貨


ゴールドがゴル、シルバーがシル、と来て、カッパーをどうするかかなり迷いました。

カパにするべきかカルにするべきか、いっそのことドウだからドルにするべきか……最終的にカルになりました。

お金の単位は、ゴル、シル、カル、で言われる場合と、金貨、銀貨、銅貨、で言われる場合があるので、完全に覚えなくてもいいので頭の片隅に置いておいてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ