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異世界で美少女が拉致される話  作者:
〈第2幕〉 物語の始まり
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上陸

早朝、まだ暗い時間に船は陸のすぐそばまでやってきていた。


船の上ではギルが船員達に今回の目的を話していた、船員達はみんなまだ肌寒い時間から水浴びをし、髭を剃り、髪を整えてよそ行きの服を着ている、上陸が楽しみなのだろう、今回は略奪ではないし、難しいミッションもない、休日のようなものだ、だからみんなオシャレして街を楽しもうとしているようだった。


「今回あの島に上陸する目的は病気の奴隷の治療、薬の調達だ、病気の奴隷は3人、上陸次第俺とみやことヒルダの3人で奴隷たちを医者に診せに行ってくる、2日程掛かるかもしれないからお前たちは船の番をしててくれ、絶対誰にも海賊船が着岸してるなんて事がバレないようにしっかり周囲の警戒をしておいてくれ!」


「「了解したぜ船長!」」


船員達はみんな視線を床に向けてなにやらぶつぶつと独り言を言ってるようだがギルは気付かないフリをして上陸の合図を出した。



みやこはまだ寝ぼけ眼でヒルダに無理やり起こされ着替えをさせられていた。


「ヒーちゃんどうしたの?こんな朝早くから、まだ暗いよ、みゃーちゃんはまだ寝てたいよ?」


ヒーちゃんて、それより自分の事みゃーちゃんてこいつ正気か?

とヒルダは驚愕に目を見開きみやこを見るがなんか、まぁ、許せる。


「みやこ、昨日ギルバート様が言ってたじゃない、陸にあがるって、私たちもお供するの、忘れたの?」


「え?そうだっけ?なんだかそんな気もしないでもないけどいくらなんでも朝早過ぎだよぉ。」


眠たい目を擦りながらみやこは昨日手先の器用な船員に作らせた小顔ローラーで顔のむくみを撃退し始めた。


「みやこ、それほんとに効果あるの?後で私にも使わせてもらえるかしら?」


ヒルダはみやこの美容グッズに好奇心旺盛でなんでもみやこの真似をしたがるのだが。


「いや、でも天然美人のヒーちゃんには必要無さそうだけどな、むくみとか肌荒れとか縁無さそう。」


「そりゃ、食事である程度はなんとかなるけれど、それ以上にやれる事があるならやらないに越した事はないわ、それになんだか楽しそうなんだもの、ねぇ、お願い私にもやらせて!」


「むー、無邪気だけでここまで可愛くなれるなんてヒーちゃんも大概だな、ういやつじゃ。」


そう言って2人は着替えたばかりのよそ行きの服のままベットの上でキャッキャウフフしながらお互いの顔をマッサージし始めた。


「あ、みやこ、これすごい!なんだかほんとにスッキリしたわ!」


ヒルダが美容グッズの効果に感動していると扉をノックする音が聞こえてきた。


コンコンコンコンコンコン


「おーい!聞こえてないのかい?もしかしてまだ寝てるの?」


ギルの声だ、どうやら何度か呼びかけていたらしく、扉の向こうで「参ったなぁ」とかため息混じりに聞こえて来たのでヒルダが何事かと問いかける。


「いや、そろそろ着岸するからその光景を一緒にどうかと思ってね、というか寝てたのかい?ノックのし過ぎで指の皮が真っ赤だよ。」


「これは失礼しました、ついみやことのお話に花が咲いてしまいまして、全く気付きませんでしたわ。」


そういってヒルダが扉を開けてやり、ギルがほっとした顔でテクテクと部屋の中へ入ってきた。


「やぁ、おはようみやこ、僕のプリンセス。」


キモッ!って思ったけどラテンな色男にこんな事言われたらちょっと来るものがあるわね、いや、しかしこの男は私の首を切ろうとした男だ!ときめいてはいけない。

とみやこは自分の心の中を実況して心を弾ませない様に押さえ込んだ。


「おはよう、ギル、朝早いのね、おじいちゃんみたいね。」


押さえ込みきれていなかったのか、余裕な表情を見せようとして逆になにやら意味不明な事を言ってしまった。


「上陸するってのは一大イベントだからね、内容に関わらず陸にあがって街を楽しんだりなんて滅多に出来る訳でもないしね、なんたって海賊なんだし。」


ハハッっと爽やかな愛想笑いを弾けさせてギルは最後にウィンクをしてきたが、みやこは丁度目にゴミが入って見てなかったようだ、ギルはちょっとやるせない感じで微笑みのまま固まってヒルダの憐れむような視線には気付かないフリをした。


「さて、という訳で着替えも終えているようだし外を見に行こうか。」


ギルに手を引かれるままデッキに出た瞬間みやこの目に映り込んで来た光景は正に大自然といった感じだった、綺麗に丸く形作られた天然の入江とその先には一面の緑の平野、高くそびえ立つ切り立った崖、その頂上にはうっすらと雪まで見える。


日本の街で生きて来たみやこにとってはそれはとても壮大で十二分に感涙出来る景色だった。


だけど


「あれ、ギル!街はどこなの?」


「街はこの入江から半日歩いた先だよ、さすがに海賊船を港に停める訳にいかないし、今回僕等は貴族のフリをするからボートで行っても変な感じだろ?だから歩くのさ。」


「半日も?歩くの?」


驚愕を顔に浮かべてみやこはギルとヒルダを交互に見た。


「半日くらい、体力が無くても休みながら歩けばすぐじゃない、みやこってホントにお嬢様育ちなのね」


「いやいや、なにか乗り物とかないの?」


「さすがに船に馬車なんて積めないしなぁ、あ、でもまてよ、いい考えかもしれない!ちょっと考えてみるよみやこ!」


ギルは閃いたとばかりに嬉しそうな顔でまたウィンクしてきた、が、みやこはヒルダと話しをしていて全然気付かないようだった。


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