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異世界で美少女が拉致される話  作者:
〈第2幕〉 物語の始まり
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マナー

みやことヒルダがすっかり仲良しになって話し込んでいるとまた例の扉が大きな音を立てて開け放たれた。


「みやこ!ティータイムだ!これからの事で話しておきたい事もある、早速外に出てきてくれないかな?」


ギルは爽やかな笑顔でみやこをお茶に誘いにやってきたのだが、そのデリカシーの無い扉の開け方に女性2人は困惑気味で怒ったら良いのかもう黙って目を瞑っておいた方が良いのか悩んでいた。


なんの反応も見られないのでギルは自分の言葉が聞き取れなかったのかと思い少しばかり側に寄ってきてまた同じ事を言おうと口を開こうとしてヒルダに止められた。


「ギルバート様、女性の部屋の扉は勝手に開けてはなりません。」


「え、そうなのかい?じゃあいったいどうやって入るのが正解なのかな?」


本当になにも知らないと言う顔でヒルダに質問するギルを見てみやこは、「あれ、こいつ紳士の教養はあるって言ってなかったっけ?」と少し疑問に思ったけれどまぁ、いまヒルダに怒られてるからいっか、と思いギルのためにみやこはなにも聞いていない振りをする事にした。


「いいですか、まず部屋に入る前にノックを2回!」


コンコンッ!


「こ、こうかい?」


何故か説明と同時進行で身体にも覚え込ませられているギルを見て少し滑稽だなとみやこはクスッと微笑み、それを見たギルは一瞬で耳まで真っ赤になって照れてしまった。


「みやこ、ちょっとだけ我慢してて?」


ヒルダが真っ赤になって硬直してしまったギルを呆れた目で見てみやこに優しくするなと注意を促す。


「ごめんヒルダ、つい!」


顔の前で両手を重ねて少し角度をつける、あろうことか口の端から少しだけ舌なんか出しちゃう始末。


「あざとい。」


思わず口に出してしまったがヒルダ的にはそれは褒め言葉なのでみやこは悪い気はしない、むしろヒルダは後で鏡の前で練習すると思うし、まぁお互い見なかった聞かなかった事にするのが一番だ。


「あの、この後はどうすれば?」


2人が仲良くなったのを微笑ましく眺めていたがついつい手持ち無沙汰になってしまったギルがタイミングを見計らってヒルダに質問してきた。


「次は名前と要件を言うんです。」


「ギルだよ!お茶に誘いにきたんだ、開けてくれるかい?」


「どうします?」


とヒルダ。


「お茶、行こう。ヒルダも一緒なら。」


とみやこ。


「では、今ドアを開けますので少々お待ちを」


ガチャンっと重厚なドアノブを捻りすーっと扉が開かれる。


「こんな静かに開けられる扉だったんだ?」


「ギルバート様はいつも乱暴すぎるだけです。大して重くもないのに力一杯扉を押し開けて、壊れたらどうするつもりなのか。」


「え、だってそうやって開けた方がババーンって感じでかっこいいじゃないか!」


ちょっとなに言ってるのかわからなくて女子2人は呆れ顔で応戦してみる。


「わかったよ、次からは静かに開けるよ。」


ギルはやっとわかってくれたようで少しつまらなそうにそう呟いた。


そしてヒルダに追い打ちをかけられる。


「そもそも女性の部屋に入る時は内側から扉を開けるのでそれまで入ってこないで下さい、絶対に自分で勝手に開けようなんて思わないでいただきたい。」


ギルはもう自分の全てを否定されたかのようで泣きそうになっている。


みやこも流石に可哀想だと思い、つい、大丈夫?と声をかけてしまった。


デッキにテーブルと椅子を用意して水平線を眺めながらお茶をする、なんだかのんびりしてて贅沢だなぁとこの間まで感じてた恐怖はどこへやら、みやこはヒルダの入れた紅茶で優雅に唇を濡らす。


「ところで、今後のことでお話しってどういった要件でしたの?」


景色ばかり眺めてぼーっとしてるみやことそれに見惚れてぼけーっとしてるギルに我慢出来ずにヒルダは尋ねる。


ギルは慌てたように、まるで見惚れてませんでしたよばりに顔をキリッと整えヒルダに向き直った。


「そうそう、今朝しばらく何処にも寄らないってみやこには言ったばかりだったんだけど、ちょっと事情が変わって一時上陸する事にしたんだよ。」


「へぇ、どこへ?」


「ランスさ、ここからだとそこが一番近いんだ。」


ギルはニヤッと笑みを浮かべつつヒルダの問いかけに答える。


「そうですか、くれぐれも気取られないようにして下さいね、次捕まったらあなた、死刑になるんですからね?」


「わかってる、ギリギリのところで楽しむさ。」


呆れた顔のヒルダと無邪気な子供のようなギル、みやこは我慢出来ずに2人に質問した。


「次捕まったら死刑って、いったい何をしたの?」


「なんにも、ただ、あそこの街では罪人に対する罰が過激なだけなのさ、あのクソヤローのせいでな。」


「へぇ、いったいどんな街なの?」


みやこにはちょっと共感出来なさそうな感情だったので興味無さげに質問を変えてみた。


「いい街さ、住んでる連中はみんな明るいし差別もない、人に優しくすれば自分が死んだ後の魂が救われるんだとさ、ただ悪い事をしてしまうと魂が汚れてしまってそれがまたさらに他の人間の魂まで汚してしまうんだとさ。」


「あぁ、だから罪人に厳しいのね。」


どうやら宗教で統治された街のようで、まぁそんな国は元いた世界にもあったし、例え世界が違ってもなにかを支えにしないと生きられない人間ばかりなんだろうな、みやこはそう1人で納得するともう一つ疑問を投げかける。


「ねぇ、ところで事情が変わって、の事情ってなに?」


「あぁ、奴隷が病気なんだってさ、だから、治療するか、捨てるかその街でしてこなけりゃいけないんだよ。」


奴隷と言う言葉でみやこはまたこの男の異常な部分を思い出してしまい少し後悔した。


「そもそも奴隷って、あんなにたくさんどうする気なの?」


「今回のは商売目的だな、一応頼まれた数だけ奴隷を捕まえて客に売る、んで獲り過ぎて余ったのは船で働かすか海の生贄にするかだな。」


「え、生贄?」


平和で健全な暮らしをしていたみやこはやはりそういった言葉に反応してしまう、人が死ぬのが可哀想だと思ってしまう。


「あぁ、俺たちが海で災害に遭ったり事故で船が沈んだり、そういう事がないように海の神様に俺たちの代わりの健康な魂を生贄にして見逃してもらうんだよ、昔からの風習さ。」


「そんな、酷い話だ」と思ったが口にするといけない気がしてみやこは押し黙ってしまった。


「まぁ、船のルールとかそういうのはみやこにはあまり気分のいい事ばかりではなさそうだし時間を掛けて慣れていきましょう?」


そう言ってヒルダはお茶のお代わりを淹れてくれた。


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