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第二章   作者: 灯
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現在から未来へ

だいぶ間が空きましたが続きです。

実は元々書いていたのに加筆修正を加えているのでかなり時間がかかります。

なのでまた間があくと思います。

あの襲撃事件から数日の時が経ち、今は裁判が王城、それも王の前で行われていた。

人数は少なく、王と罪状を読み上げる検事、そしてヴァン・トライシンしかいなかった。

弁護士がいないのはこの裁判は形だけの、彼の罪状を言い渡すだけのものだからだ。


「被告人、ヴァン・トライシン、君の罪状は村を襲い、人々に危害を加えた。ただし奇跡的に死者は出ていない。それに間違いはないな」

「それに第一王子、暗殺をつけくわてくださいよ」

「……それはもう終わったことだ」


今、罪状を読み上げている男は七年前のあの事件を担当していた男だった。

七年前は駆け出しで、雑用もままならないような人物だったのにずいぶんと偉くなったなと彼は思った。


「いや、終わってないよ、誰一人おかしいと思わないのか、それにあの人がやったという証拠はなかった!」

「あの人がやらなかったっていう証拠もなかった」

「それは俺が真犯人で証拠を片付けたからに決まってるだろう、そんなこともわからんのか、この国の検事は」

「……言いたいことはそれだけか?」


検事の彼は冷たい視線をヴァンに向けた後大きなため息を吐いた。


「君は何か勘違いをしているようだから言っておくが、ここは七年前の事件の再審ではない、これは君の新しい罪の裁判だ。それに君の意見は聞いてない。君はただ判決を聞くためだけにここにいる」

「……俺の判決は」

「君の判決は無期懲役だ」


通常は死傷者が全くいない場合は長くて10年ぐらいが妥当だが、この罪状は明らかに通常よりも重い。


「……村を一つ襲っただけにしては随分と重いな」

「さあ、私が決めたわけではない、決めたの皇帝だ、あの人が君の罪を決めた」


その言葉に怒りで頭が沸騰しそうだったが何とかこらえた。

この皇帝が自分たちにしたことを考えたら何もおかしいことはないと思ったからだ。

だが彼はささやかな抵抗として大声で叫んだ。


「相変わらずあんたは悪魔だ、俺はあんたが俺たちにした仕打ちを忘れない、仮に死んでも俺はあんたを忘れない絶対にだ」


攻撃性を見せたからか叫んでいる途中で彼は引きずられるように退室させられた。

それを見ていた王様は眉一つ動かさずに彼を見ていたが口元だけは何故か笑っていた。



物音が一つもしない薄暗い帝国の牢屋にヴァンと襲撃者たちは入れられていた。

彼はただうつむいていた。

先程の裁判の結果についてただただ考えていた。

他の襲撃者は死傷者をだしていないという理由で懲役は3年と明らかに対応に差があった。

彼が首謀者だとしてもあまりにも対応に差があった。

しかし彼にはそれよりも大切なことが果たせなかったことが辛かった。

牢屋の壁にもたれかかり、力なく呟いた。


「汚名返上をできなくて、すいません」


そうして彼はその場でうずくまったが、近づいてくる足音に気がつき顔を上げる。


そこにいたのは彼にとって懐かしい人物だった。

その人物は、ロッシュの父、ロックだった。

それに驚くでもなく彼は至って普通に対応する、ただしとても冷たい目を彼に向けてはいた。


「何しに来たんだ、ロック」

「貴方の様子を見に来たんですよ

「見たまんまだよ、これで気がすんだか? なら帰れ」

「そんなにつれなさそうにしないでください」


あくまでロックは普通に話しがしたいといった感じで彼に話しかける。


「話すことなんかない、特に復讐をしなかった、臆病者にはな」

「私は復讐よりも大事なものがあると知っていたから考えもしなかったのですよ。貴方もいい加減諦めなさい。きっと死んだ貴方の姉さんも復讐なんて望んでいませんよ」


ロックは知っている。

彼がこんなことでは諦めない人だと、それでも彼は忠告をしたかった。


自分の自己満足でもあるが、なにより彼にはもう別に大切な人がいるのだから。

その人のことを考えるならばこんなことをしては欲しくなかった。


「お前は姉さんの何を知っている? 何も知らないだろう? それなのに望まないなんて、どうして言える? 姉さんはあいつが好きだったのに、あいつは裏切ったんだよ」


彼はロックを冷ややかな目で睨んでいた。

ロックはそれに動じはしなかったが言葉が出なかった。


「それに姉が止めてと頼んでも止まる気はない、その為に生きてきたんだからな」

「やはり無駄ですか……」


ロックは露骨にため息をついた。


「それだけ言いに来たのなら無駄だったな」

「いやいや、本題は別ですよ。この国に未来についてですよ」

「あの皇帝がいる限り、この国に未来なんてあるのか?」

「聞きなさい。彼女が国を変えると言っていました。これで多少はよくなるかもしれませんよ」

「……そうか」

「しっかりと伝えましたよ。それじゃあ僕はこれで……」


ロックは言いたいことだけ言ってその場を去った。


再び牢屋は静寂に包まれた。そしてヴァンはゆっくりと呟いた。


「そんなに簡単に国が変わるなら、こんなことをやろうなんて思うかよ。それに俺がやろうと思ったのはこの国のためじゃない」


それは静寂に吸い込まれていった。








彼らが悲しみを少しだけ乗り越えたのは、一週間後だった。

彼らは海の見える岬にいた。ここはセルマとよく修行をした思い出の場所だ。


「グリス、お前大丈夫か?」


彼は心配そうに問いかける、そんな彼も辛そうだった。


「うん、大丈夫だよ、ロッシュも大丈夫?」


「ああ大丈夫だ」


そう言いつつも彼の表情は暗い、それを振り払うかのようにグリスが話し出す。


「ねえロッシュ、僕ね、今回のことで決めたんだ、僕は騎士になるよ。師匠が守ったこの村をいや国を守りたい」


「グリスならやれるさ」


そして彼も何かを決意したのか、それを口に出した。


「俺も決めたことがあるんだ、あの事件の時に自分の無力さと感じたんだ。それに自分も母のように医術を学んでいればセルマ師匠を助けられたかもしれないと後悔した。だからそう思わないためにも、助けられなかったセルマ師匠のためにも人を救える医者になりたいんだ」


「たぶんなれるよ、ロッシュなら」


グリスは少しだけ笑った。それは久しぶりの笑顔だった。

そしてそれにつられるように彼も笑いながら言った。


「たぶんって、何だよ。でもいいや、なろうな絶対……」

「うん、絶対に」


二人は波の音が響くこの場所で約束をした。




そして五年の月日が流れ、グリスは騎士見習いにロッシュは医者見習いになった。

ここから物語は再び転がり始める。


彼らは十七歳になった、ロッシュはあの頃の体型が嘘みたいにスリムになり、適度に筋肉がついた身体になっていた。


グリスはあの頃から筋肉がつき、がっしりとした身体つきになっていた、そして今日はグリスの初任務の日だった。


「大丈夫か? 今日が初任務だって聞いたけどよ」

「うん、大丈夫だよ、それに初任務だから、わりと簡単なものだよ」


昔と変わらずに笑うグリスに少しだけ安心した。

自分が医者になるために学術都市ケンフォンテに行っていなかった五年間、彼は何も変わっていない。

そう思えたからである。


「ならいいんだが……」

「もう、ロッシュって医者を目指してから、僕のことを心配しすぎ」

「そうかぁ?」


ロッシュは頭をかきながら、照れ隠しのように目をそらした。


「まあまあ、グリス君、ロッシュが心配するのも無理もない、騎士団は常に生と死が隣り合わせだから」


彼自身もそのことは理解しているし、感謝もしていたがやはり心配しすぎとも思っていた。

そしてふと壁時計に目をやると任務開始時間が迫っていた。


「あっ、もうこんな時間だ、行くね」


彼はその場で立ち上がり二人に再び笑顔を見せてから、彼は部屋を後にした。

その姿は昔の彼とはまるっきり違っていた。その姿はまるで彼女のようだった。

ロッシュもそう思ったのかぼそりと呟く。


「グリス、セルマ師匠みたいだ」


彼の父親はそれを肯定するように頷いたが、その顔は妙に悲しそうだった。

しかしロッシュは気がつくことはなかった。




リアンゲールの西南の位置にある洞窟、ここがグリスの初任務地だった。

この洞窟は人の手が入っておらず自然の洞窟だった。


グリスは隊長に引き連れられて奥に向かった、入り口は大きく、五人ぐらいならば横に並んでも入れる大きさだった。


今回、彼らに出された任務内容は簡単だった。


この洞窟の奥にある、聖剣エテルノセノクを持ち帰るという任務であった。


この聖剣エテルノセノクとは、はるか昔に交流があったとされる時代に友好の証としてリアンゲールに贈られたと伝わっている剣だが、詳しい文献は残っておらず、よくわからない聖剣である。

だが洞窟の中はこの聖剣の力のおかげか魔物がいないようで、雰囲気はとても清々しかった。

グリスはその雰囲気に心を奪われていたが、隊長の言葉にこちらに意識を戻した。


「目的地が見えたぞ」


隊長が言った目的地は洞窟の最深部でとても開けたところだった。

そこは洞窟の中なのにとても明るかった。


そしてグリスはその場所で目的のもの、聖剣エテルノセノクを見つけた。

見つけた瞬間、その聖剣に心を奪われた、飾りが派手というわけではない。

聖剣はどこにでもあるような剣に見えた。

ただ彼にとってはとても魅力的で目が離せない物だった。


彼は憑りつかれるように剣の方に向かって歩いていった。

他の隊員が止める声が聞こえた。

だが彼にはまるで耳に入っていないようで進んでいく。


そして彼は聖剣に手をかけた瞬間、目もくらむような眩い光に包まれた。

その光を見て何かに憑りつかれていたような彼は正気を取り戻したようで驚いていた。


「な、何この光は?」


わけのわからないまま、彼は光が消えるのを待った。 そして光が消えた先に見えた光景に驚いた。


「さっきと同じ?」



場所は先ほどとさほど変わらなかったからだ、ただし、少しだけ違ったことがあった。

一つはあの剣がないこと、そしてもう一つは後ろ姿しか見えないが淡い黄緑色のドレスを身にまとっている女性がいることだった。


その女性の髪色は真っ黒で腰まで伸びている。

グリスはその色を見て、セルマを思い出したが忘れるために首を横に振る。


彼は彼女が何者なのか知るために一歩近づいた。

すると彼女は振り向き、ナイフを力いっぱい振り回してきた。

グリスは驚きながらも剣を抜き、むやみやたらに振り回されたナイフを払い除けた。


「危ないじゃないですか、いきなりナイフを振り回すなんて」

「今のご時世に背後に無言で立つような人に言われたくないですわ」


今のご時世? その言葉に疑問を持ちながらも彼女の気迫に負け、グリスは謝った。

そして改めて彼女の顔を見る。

すると彼女はグリスの顔を見て、驚きの表情を浮かべた。


「……そんな、なぜ貴方が」


先ほどの反応で昔に会っていたのかと記憶を辿るが彼自身、人を覚えるのが苦手であったということを思い出したので辿るのを止め、彼女に直接聞いた。


「どこかで会いしましたか?」

「いえ、何でもありませんわ」


彼女の表情はにこやかだったが、何とも言えないものをまとっていた。


――これ以上は聞くなってことかな……。


グリスは即座にそれを読み取り、話題を変えた。

少々不自然かもしれないが仕方がないと思いながら。


「ところで貴女はどうしてこんなところに?」

「ここが一番安全だからです」

「安全? 誰かに追われているのですか? それならば、その相手を撃退しますよ」

「騎士だからですか?」


彼女の答えに頷くと彼女は少し寂しそうに顔を歪める。

それに心配そうに駆け寄る、グリスだったが、それを手で止められた。


「大丈夫です」

「そうですか……」


いまいち納得はできないと思いながらも彼はそれ以上彼女を問い詰めるすべを持っていなかった。

そしてそんな時、少しだけこの場に似合わない声が響いた。

しかしその声はグリスにはとても聞き覚えがあるものだった。

声が聞こえた方を向くと、そこにいたのはよく知っている人物だった。


「姫様、ここにいたんですね」

「ええ、今帰りですか?」

「数刻前に戻りました」

「……ロッシュ?」


そう彼の親友である、ロッシュだった。ただ最後に見た彼と少し違っていた。

同じくらいの背丈だったのに今は彼の方が大きくなっていた。


「確かに俺はロッシュだが? はて、俺には君ぐらいの年の知り合いがいただろうか?

「わからないの?」


そう言われて彼はグリスの顔を真剣に見つめる。

そこで気づいたらしく、驚いた後にばつが悪そうに顔をそむけた。


「その、わからなかったんだ、すまん。グリス」

「わかればいいよ、ロッシュ」


そこで気づく、どうして彼がそんなに変わっているのかということを。


「ねえ、どうしてこんなに変わったの?

「……それを聞く前にお前がいたのは西暦何年だ?」


奇妙な質問だと思いながらも重要なことだとは思わず彼は軽く答える。


「確か西暦七百五年だったような、それがどうしたの?」

「取り乱さすに聞けよ、お前はその時代から五年先の未来にいるんだ」

「えっ? どういうこと」


思わず聞き返してしまったが、それは真実だとグリスには思えた。

なぜなら自分よりかなり成長している親友が目の前にいるのだから。


「信じられないかもしれないけど真実なんだよ」

「それなら、帝国はどうなったの? 他の人は? 皇帝は?

「いっぺんに聞くな、順番に話すから止まれ」


その言葉にグリスは口を閉ざし、ロッシュの言葉を待った。


「まず帝国だが、今は謎の軍団リグレトに占領されている」

「リグレト?」

「ああ、そいつらのボスは五年前にいきなり現れたかと思えば、皇帝を殺害し、それから仲間を集め、魔物を操り、あの帝国を拠点に自分たちが他国を、いや世界を支配し始めたんだ」

「世界を支配?」

「そうだ、場所がわからないエテルノセノク以外の他国はあいつらの支配下になっちまった

「そんな……帝国のみんなは無事なの」

「無事な人たちはみんな近くの村に避難している」

「そうなんだ……」

「それでだ、俺たちはどうにかしようとレジスタンスを立ち上げたんだ、それでその指揮を執るのが、ここにおられるリアンゲール帝国の姫であられる、セレスティア・ロウ・リアンゲール様だ」


グリスはそんなに驚きはしなかった。彼は何となくそうだと思っていたからである。

だから彼はいつもと何も変わらずに自己紹介をした。


「姫様、僕の名前はグリス・エタロンと申します。よろしくお願いします

「グリスですね。わかりました、ちなみに私のことはセレスと簡単に呼んでください」


彼は軽く頷くとにっこりと笑った。


「わかりました、セレス姫」

「まあ、とりあえずそんな感じだな、だいたいわかったか?


「とりあえずね、だけど許せないね、そんなことをするなんて」

「そうだな……でもグリスは気にする必要はない。それよりも、お前が元の時代に帰れる方法を探しやるからさ」


何かが変だ、彼はそう感じた。

そう感じたが彼は口には出さなかった。


「とりあえず今日のところは休め、場所を作ってやるから」

「ありがとうロッシュ」


グリスはその言葉に甘えることにした。


「じゃあちょっと待ってろよ」


ロッシュは用意をするためにこの場からいなくなった。

この場所にはセレスとグリスの二人だけになったが会話はなかった。

お互いに何を話していいのかわからなかったからだ。

ただ彼はこの雰囲気を懐かしく思っていた。


――そういえばセルマ隊長に会った時もこうだったな。


そう思いながらロッシュを待っていると彼は帰ってきた。


「お待たせ、じゃあ行こうか」


グリスは彼の後を歩いた。

どうやらこの洞窟がレジスタンスの本拠地らしく、銃や剣などがたくさんあり、さらにいくつか部屋らしきものが見えたが人は少なかった。


「ねぇ、ロッシュ聞いてもいい?」

「何だ? 言っとくけど、姫のスリーサイズは知らないぞ」

「ロッシュが冗談を言うなんて……天変地異の前触れかなぁ」


グリスの顔は本当に驚いている。

その顔にロッシュは少しだけ懐かしむような表情を浮かべた。


「本当にお前なんだな」

「当たり前じゃない、どうかしたの」

「何でもないさ、それで何を聞きたいんだ?

「どうして人がほとんどいないのかなぁと思って」

「あーそれな、あんまり協力者がいないんだ、みんな今の支配者にあまり文句がないんだ」


彼はグリスの目を見ないで話し続けた。

それに違和感を覚えながらも話しを進めた。


「支配しているのに?」

「支配されているからだよ。強大な力に支配されると人は恐怖を植えつけられて、逆らえなくなる、……それに事実上リアンゲール帝国が世界一の国なったからな、そういう意味では大国と争いたくない人は参加する訳がない」

「僕たちの国の人は?」

「俺たちの場合は今の支配者が国民に資源や食料を分け与えないために、国民には十分な資源も食料もなく、みんな、その日暮らしを強いられている。だから国から避難する人があとをたたない、でも避難先の村も人が増えたことで食糧難という深刻な問題に直面したんだ。そのせいで毎日、飢えで亡くなる人たちも大勢いるんだ」


顔をより悲しみに歪ませ、彼は続けた。


「だから、俺はみんなが平和に暮らせる世界を取り戻したいんだよ

「ロッシュ……すごいね」

「そんなことはないさ、ただ言っているだけだからな。言ってるだけじゃ、叶わないんだ」

「……ねえロッシュ、僕も」

「それは却下、お前は帰ることだけを考えろ」


グリスが言い切る前に彼は止めた。


「まだ何も言ってないのに……」

「わかるって、何年のつき合いだよ」

「ロッシュ……」

「さあついたぜ、休めよ」

「待ってよ、まだ僕は……」


ロッシュはグリスを無理やり用意した部屋に押し込み扉を閉めて、話しをさえぎった。

グリスは部屋の扉を叩き続けたが、その音はむなしく響いた。


「わりぃな、グリス……」


ロッシュはそう呟きながらその場を去った。




彼は姫のところへと戻った。その表情は暗かった。

「どうでした? 彼の様子は?」

「俺の知っているグリスで安心しました。でもだからこそ怖いんです」

「そうですね、でも再び相見えたことを喜びましょう」

「そう、ですね」


それでも彼の表情は暗かった。

それを見兼ねたのか彼女は彼に言い渡す。


「ロッシュ、貴方も休みなさい、明日はようやく場所が判明したエテルノセノクに向かうと言いましたね? 私一人で大丈夫と言ったのに、貴方は医者である自分も行くと同行を願いましたよね? それなのに医者である貴方が倒れたら一大事です」

「……わかりました、姫様もおやすみください」

「ええ……」


ロッシュはそれだけ言って戻った。それを見届けてから彼女はその場で崩れ落ちた。この言葉を吐き出して。


「なぜ、なぜなの……」


この言葉に返答を渡すものはいなかった。



ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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