プロローグ~転生、そして決意~
ふと、誰かに抱きしめられているような感覚とともに、大きな安心感を感じた。
『貴方達には大変な人生を歩ませてしましました……せめて……せめて来世だけはいい生を歩めます様に……』
そんな声を聞いたように感じた直後、少しの浮遊感と風を感じ水に落ちた。
最後に見えたのは聖母の微笑みを浮かべた光り輝く女性が幾つもの光の玉を抱えている様子だった……
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目が覚めると、暗く狭い空間に押し込められていた。
「此処は……何処だ??」
試しに少し暴れてみると、壁にヒビが入り少しの光が漏れこんできた。
「この壁壊せる!!」
さらに暴れまわると、雄大な景色が目に入った
「は?な、なんだここ!」
そこは高い崖の上で、あまりの絶景に僕は絶句した。
もっと良く見たい一心で前に進もうとしたが上手く歩けず、コケてしまった。
地面に手をつこうとして前に出したのに、爬虫類の腕が目に入った。
「うわ!?」
驚いて飛び退いた筈なのに爬虫類の腕は未だに目に入っていて、不安を感じながら腕を動かそうとすると、爬虫類の腕が僕のイメージ通りに動いた……
「ど、どういうことだあ~!?」
地響きを感じ後ろを振り向くと、翼の生えた巨大な爬虫類……いや、『ドラゴン』とでも言うような生物が目に入った。
「これは夢だ……悪い夢だ……夢なんだぁ……」
僕は気を失った。
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目を覚ますと、巨大な鱗が目に入った。
「夢じゃ……無いんだな……」
鱗をよく見ると、そのドラゴンを小さく、長くした様な……言うならば『龍』とても言うべき生き物が目に入った。
「これは……俺?」
自分のイメージ通りに動く生き物を見てそれを確信した。
本は余り読まないのだが少し読んだことがある。その中にこんな題材の物があったような気がする。これは────
「『人外転生』とかいうやつかな……」
─────────────────────────────────────あの後僕は、人間じゃなくなったということに絶望して虚空を眺めていた。
しかし、ある事を考えたのだ。
(これは新たな生で幸せを掴むチャンスなのでは……)と
そして、僕は決意した。
「僕はこの新たな生の中できっと幸せを掴んでみせる!」
その時、寝ていたドラゴンが目を覚まし、僕の首元を掴んだかと思うとなんと崖の下に放り投げたのである。
「……今生はなかなかハードモードなようだね」
現実逃避をしながら僕は落ちていった。