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第三十六章 ヴィーナス、菊太郎を説得する

ヴィーナスは菊太郎の様子からして、今は何を言っても無駄だと判断して、落ち着くまでしばらく待っていた。

やがて菊太郎は大声で喚きながら、ひとしきり暴れると息切れして疲れてへたり込んでしまった。

ヴィーナスは菊太郎とは対称的に冷静で、「菊太郎さん、暴れるだけ暴れて気が済みましたか?今迄地球人だとばかり思っていた自分の妻が宇宙人だったと気付いて、頭の中が真っ白になり、どうすれば良いのか解らなくなってしまったのですね?今直ぐに受け入れるのは無理だと思います。急ぐ必要はないので、時間を掛けてゆっくりと話合いましょうね。」と説得した。

菊太郎は、「時間を掛けて話合うつもりはない!だいたい、宇宙人が地球に滞在している必要性は何だ!今直ぐに宇宙人は地球を去れ!そうすれば話合う必要はなくなるから問題解決だ。」と反論した。

ヴィーナスは、「その事について今から説明しますね。」と返答して、テレジア星人や呪縛の説明から始まって、菊子は菊太郎の娘に間違いない事などを詳しく説明した。

菊太郎は、「俺の子供を出産したと騙して信用させようとしたのだな!だいたい、地球人と宇宙人とでは染色体などが異なる為に妊娠しない筈だ!」と疑問点を指摘した。

ヴィーナスは説明の為に、体の形状や大きさ色を変えると菊太郎は腰を抜かして、「ば、ば、化け物!」と驚いた。

ヴィーナスは、「御免なさいね。驚かすつもりはなかったのですが、テレジア星人は今見せたように、体の形状や大きさや色を自由に変えられるのは、染色体などから変える事ができるからなのよ。その時は、地球人の子供を妊娠できるように変えていたのよ。」と説明した。

菊太郎は、「染色体を自分の意思で変化させたり呪縛になったりそんな事は信用できない!もしそうだとすれば、お前達が地球に来た目的は、地球人を食料にする事により、呪縛から完全に開放される事か!お前達が呪縛になったのは、お前達が起こした事故が原因で地球人には関係ない!そんな事で食料にされるのは迷惑だ!地球を去り、二度と来るな!そうすれば呪縛からも完全に開放されるだろう!」と全く信用していませんでした。

ヴィーナスは、「地球人は染色体どころか、心臓も自分の意思で動かしたり止めたりできませんが、これは脳の構造の違いによります。地球人は、大脳は自分の意思で動作させる事を司っています。小脳は心臓など無意識に動作する事を司っています。しかしテレジア星人は、アメーバ状で形状を自由に変えられます、大脳とか小脳の区別がありません。体全てを、自分の意思で自由にできます。従って、私達テレジア星人からみれば、脳からの信号によって動作している心臓の動きを何故自由にできないのか不思議です。」と説明した。

菊太郎は、「何馬鹿な事を言っているのだ?心臓を自分の意思で動かせると、眠っている間はどうするのだ!心臓が止まって死ぬだろうが。それに一日中動かしているので疲れるだろうが。疲れて力尽きた時が死ぬ時か?」と反論した。

ヴィーナスは、「でも呼吸は自分の意思で止める事ができるのに、眠っている間も呼吸しているわよ。それに一日中呼吸していても疲れないでしょう?しかしテレジア星人は寝ません。地球人はどうなのですか?」と確認した。

菊太郎は、「いや、それは・・・」と言葉に詰り、「それではテレジア星人の脳は大脳だけなのか!地球の下等動物と同じだな。」とヴィーナスを馬鹿にした。

ヴィーナスは、「脳の数が少なければ下等で多くなれば下等ではなくなるのですか?テレジア星人の脳はもっと多くあります。各臓器に内蔵されています。」と返答した。

菊太郎はヴィーナスの予想外の返答に、「えっ?」と地球人とは全く異なる為に驚きを隠せませんでした。

ヴィーナスは、「アヤメも菊子は可愛いのです。その可愛い菊子の父親を食べる訳ないでしょう。菊子には地球人の血が半分流れている為にテレジア星では生きていけません。地球で生きて行くしか方法がありません。地球人にテレジア星人の血をひく菊子を育てるのは無理なので、私達も地球に来ました。」と説得した。

菊太郎は、「菊子にはテレジア星人の血も半分流れている為に地球では生きていけないとはならないのか?本当はどちらにでも住めるのではないか?」と質問した。

ヴィーナスは、「環境の違いでは先ほど説明したように重力の違いが大きく、強大なテレジア星の重力に菊子は長期間耐えられません。」と返答した。

菊太郎は、「しかし、アヤメは宇宙人である事や肉食生物である事などを隠していたのだぞ!その他にも色々と隠している事があるのではないか?そんなアヤメを信用しろという事自体無理だ。」とヴィーナスの説明を拒否した。

ヴィーナスは、「それでは、菊太郎さんが草食動物だとアヤメに説明しましたか?だからアヤメも特に肉食だと説明しなかったのだと思いますよ。」と反論した。

菊太郎は、「屁理屈言うな!アヤメが私と同じ地球人だと思っていた為に、そんな事は説明してないだけだ。」と怒った。

ヴィーナスは、「考えてみて下さい。あなた方は動物ですのでライオンやトラなどの肉食動物に近寄る事は危険だとされていると思いますが、それは私達も同じです。私達は植物です。象などの草食動物に近寄る事は危険だとされています。ですから、地球ではライオンやトラなどの肉食動物を襲って食べる事はありますが、草食動物を襲う事は自殺行為なので、それはしません。あなた方とは全く反対だと考えて下さい。その上でアヤメは草食動物のあなたに近付きました。それは、あなたを信頼しているからですよ。お願いですからアヤメの信頼に答えてあげて下さい。」と説得を続けた。

菊太郎は、「肉食のアヤメに信頼して貰わなくても結構です。信頼に答えるつもりはありません。」と反論した。

ヴィーナスは、「という事は、アヤメが菊太郎さんの事を信頼している事を信用して頂けたのですね?一歩進みましたね。」と菊太郎の反応を見た。

菊太郎は一瞬言葉に詰まり、「もうこれ以上、一歩も進みたくない。もう話合う事は何もない!そんな作り話には騙されない。」と黙ってしまった。

ヴィーナスは、菊太郎が言葉に詰まったのは、ヴィーナスの説明をある程度納得したが、受け入れたくない感情が働き、言葉が続かず黙ってしまったのだと思ったが、その後話合いができなくなった。

ヴィーナスが何を言っても、菊太郎は横を向いて無視して何も喋らなくなった為に困り、“そう言えば、警察が容疑者を取り調べる時に、容疑者が黙秘権を使用した時には警察はどのように対処するのかしら?”と警察に何度も厄介になっているアヤメに確認しようとしていた。

菊太郎は、アヤメの事を信用していない為に、通信機で会話している様子を聞かれると都合が悪いので、意思波で通信機を操作し通信機を介して意思波でアヤメに確認した。

アヤメは、“あの子は昔から拗ねるとそうだったわね。擽れば笑い出し機嫌が良くなったわね。”と昔の事を思い出して、「擽れば何か言うわよ。少なくとも笑い出すんじゃないかな。」と返答した。

ヴィーナスは、“擽れば何か言うだなんて何を考えているのかしら。アヤメに聞いたのが間違いだったわ。”とどうしようかと色々考えて、菊太郎を信頼させる為に、第三者に相談して菊太郎の事を真剣に考えている事をアピールしようとした。

誰に相談しようかと考えていると、アヤメと同じスケバングループだったモミジちゃんが、確か軍隊に入隊した事を以前アヤメから聞いた事があった為に、モミジに通信機で意思波を使用せずに直接言葉で相談した。

ヴィーナスから話を聞いたモミジは、「そういう時には強引に事を進めれば、益々信頼関係がなくなります。まず相手に信頼して貰う事から始める事が大切ですよ。」と助言した。

ヴィーナスは、「私は信頼を損なうような事は何もしていないわよ。変な事を言わないでよ。」と不機嫌そうに言い返した。

モミジは、「さあ、それはどうかしら。ヴィーナス小母様は自分の事ばかり考えていませんか?菊太郎さんの事を考えていますか?」と質問した。

ヴィーナスは、「勿論菊太郎さんの事を考えながら話合いをしているわよ。一方的に説明してないわよ。」と先程からムカつくなあとムッとした。

モミジは、「言い方が悪くて御免なさいね。ヴィーナス小母様は説得する事ばかり考えていませんか?」と聞き直した。

ヴィーナスは、「今は説得する以外に何があるのよ。」とモミジが何を考えているのか解りませんでした。

モミジは、「どれぐらいの時間、話をしていますか?地球人は定期的に食事したりトイレに行ったりして睡眠も必要です。その他、今、菊太郎さんは何を考えているのか?なども必要です。説得する事ばかり考えずに、菊太郎さんの事を第一に考えて、信頼関係を築く事から始めて下さい。」とアドバイスした。

ヴィーナスは、モミジがいやに地球人について詳しい為に、「モミジちゃん、いやに地球人について詳しいのね?地球にしばらく滞在していた事でもあるの?」と不思議そうに聞いた。

モミジは、“うわっ、鋭い質問!呪縛の事がばれそうだわ。そうだ女神ちゃんの呪縛開放の時にも地球に滞在した事があったわね。”と考えて、「私は女神ちゃんの呪縛開放の為に、命の恩人がもう長くないと解った時に、しばらく女神ちゃんと地球に滞在した事があります。」と何とか胡麻化そうとしていた。

ヴィーナスはモミジの呪縛の件を知らなかった為に納得して、再び菊太郎との話に戻った。

ヴィーナスは、「菊太郎さん、食事しますか?トイレに行きますか?寝ますか?」と一方的に喋った。

まだ切断されずに通話状態の通信機で聞いていたモミジは呆れて、“さすが元スケバングループのリーダーだけの事はあるわね。”と思いながらモミジは、「ヴィーナス小母様、そんなに一方的に喋っても駄目ですよ。無理に食事させても美味しくないですし、無理にトイレに行かせても、出るものも出なくなるでしょう。もっと相手の事を考えてあげて下さい。」と再度アドバイスした。

ヴィーナスは、「具体的にどうすれば良いの?」と聞いた。

モミジは、今迄の話の内容からして、ヴィーナスが主導権を握って話を進めているようでしたので、菊太郎に主導権を握らせる為に、「話せば長くなるので、具体的な事は菊太郎さんに聞いて下さい。」とアドバイスした。

ヴィーナスは、“モミジちゃんも、もったい振らないで教えてくれても良いのに。”と思いながら、「菊太郎さん、どうすれば良いのですか?教えて下さい。お願いします。」と菊太郎が、今何をしたいのか確認した。

菊太郎は、今迄のモミジとの通信を聞いていた為に、少しだけヴィーナスの事を信頼して、「疲れた、少し横になりたい。」と要求した。

ヴィーナスは早速寝室を準備して、菊太郎にここで横になるように伝えた。

菊太郎は、「少しの間、横になるから絶対に入って来るな!」と部屋を施錠して横になると、今迄の緊張もあり疲れていた為に、そのまま眠ってしまった。

数時間後、目を覚ました菊太郎は少し落ち着いて部屋から出てきた。

ヴィーナスが何もせずに待っていた為に、まだ半信半疑ですが信じても良いかな?と思った。

「頭が混乱しています。しばらく考えさせて下さい。」と要求した。

ヴィーナスは、「解りました。急ぐ必要はないので、ゆっくりと考えて下さい。」と菊太郎を地球へ連れて帰った。

モミジは通信を聞いて、菊太郎さんが、少しは信用してくれたと安心したが、“テレジア星人の説明を聞いてもアヤメの事は思い出さなかったようだわね。”と思い出すのは時間の問題だと考えて、ヴィーナスに、菊太郎が子供の頃に大好きだったアヤメの事を説明しておいた。

ヴィーナスは、「アヤメから、そんな事は聞いてないわよ。」と確認した。

モミジは、ヴィーナスはアヤメが呪縛になっていなかったと知っているとも思わずに、「女神ちゃんは呪縛から開放されて地球を去る時には、菊太郎さんの事は気になっていたようでした。菊太郎さんとは呪縛だけではなく、その他の感情もあるようです。口には出しませんが、きっと今でも菊太郎さんの事は気になっていると思います。恐らく、当時菊太郎さんと遊んだ玩具とか立体映像などは処分せずにどこかに保管していると思います。菊太郎さんが、どうしても女神ちゃんの事を信頼してくれない時には、最後の手段として、この事を使うのね。」とアドバイスして、“女神ちゃんは呪縛ではなかったから当り前か。”と思っていた。

ヴィーナスは、「有難うモミジちゃん、この事は最後の手段として大切に持っておくわね。しかし、あのアヤメがそんなに感傷的になるだなんてとても信じられないわ。」とアヤメの別の側面を知ったようでした。

モミジは、「信じるか信じないかは、ヴィーナス小母様次第です。そういえば地球では、“信じる者は救われる“って言うのよね。」と確認した。

ヴィーナスは、「モミジちゃんが地球に滞在していた時、近くにキリスト教信者はいませんでしたか?そんな事を言うのはキリスト教関係の人だけよ。」と確認した。

モミジは、“そういえば、女神ちゃんの命の恩人である猪熊さんは、キリスト教信者だったわね。”と思っていた。


次回投稿予定日は8月17日です。

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