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第六十二章 菊子、テレジア星に帰る

フジコは、「原因と対処方法が決まったので、女神ちゃんに連絡しますね。母親ですから知らせない訳にも行きませんでしょう。」とアヤメに知らせようとしていた。

モミジは、「えっ!?今迄連絡してなかったのですか?確かに女神ちゃんがここにいないので不思議に思いましたが、何故ですか?」とわざとらしくフジコに確認した。

フジコは、「いいえ、菊子ちゃんは最初、女神ちゃんに連絡したのよ。女神ちゃんは、涙で水分が出たので水を飲めば治るだなんて、いい加減な事を言うものだから、菊子ちゃん、可哀そうに動かない体で水を飲み治らなかったので、私に連絡して来たのよ。誤燕しなく良かったわ。呪縛らしいなどと女神ちゃんに言うと、“菊子は半分地球人だぞ。火を着ければ死ぬだろう。”などと大騒ぎして、治療方針が決められないでしょう?ですから、はっきりしてから連絡したのよ。今、ヴィーナス小母様のアイアック号で、ここへ向かっている所よ。」と説明した。

モミジは、“女神ちゃんがトンチンカンな事を言えば、博士が地球に行くと言っていたが、水を飲めば治るだなんて、誤嚥したらどうするつもりだったのかしら。他に別の言い方がなかったのかしら。”と呆れていた。

やがてアヤメが到着して、「おい!博士、何故直ぐに連絡しない!私は菊子の母親よ!」とわざとらしく怒っていた。

フジコは、「あれ?水を飲めば治るのではなかったの?私だって直接確認してみないと解らなかったのよ。解れば女神ちゃんに連絡するよりも菊子ちゃんの事を最優先にしたので連絡が少し遅れただけよ。」とその理由を説明した。

アヤメは、“そうか、だから博士がテレジア星を発ってから、私に連絡するまで時間が掛ったのか。モミジからも連絡がないし、心配したわ。しかし、これ以上文句をいうと、私が菊子の呪縛に気付いていた事がばれるわね。”と思い、それ以上文句は言いませんでした。

モミジが、「陽子さんの葬式を挙げなければいけませんね。それまで陽子さんの遺体は腐敗しないように、ヴィツール号かアイアック号の冷凍室に保管しましょう。今菊子ちゃんは動けないので女神ちゃん、陽子さんをお願いしますね。」と依頼した。

アヤメは、前回は菊子が呪縛の可能性があると思い、陽子と無理に引き離さなかったが、今回は陽子が亡くなり、親友との悲しい別れで一晩中泣き明かしたので、このまま地球に住めば、寿命の関係で今回のような悲しい別れを何度も経験する事になり可哀想なので、今度こそ何とかして菊子をテレジア星に連れて帰ろうと考えていた。

アヤメは、「仕方ないわね。厄介だけれども葬式に協力するわよ。ったく面倒だな。菊子、お前が地球に住んでいるから、また厄介な事に巻込まれたじゃないか!でも今度は私が喪主をやらなくても良いのだろう。」と確認した。

フジコが、「喪主と言っても、女神ちゃんは何もしていなかったじゃないの。全て菊子ちゃんが取り仕切っていたじゃないの。」と指摘した。

アヤメは、「じゃかましい!菊子、葬式が終われば、もう親友も地球にいないので、今度こそテレジア星に帰って来い。こんな面倒な事に巻込まれるのは二度と御免だ。テレジア星には重力の関係上住めないかも知れないが、衛星だったら、地球に似た環境の衛星があるからそこに住め!」と強制した。

フジコは、「女神ちゃん、そんな一方的に決めたら菊子ちゃんが可哀想よ。地球には陽子さんとの思い出も色々とあるのよ。菊子ちゃん、どちらにしても良いから後悔しないようにじっくりと考えてね。」とアヤメを地球に釘付けにする要因を少しでも多くしようとしていた。

アヤメは、「博士、お前は余計な事を言うな!思い出でお腹が膨れるか、ボケ!菊子、兎に角テレジア星に帰って来い!解ったな。」と命令した。

フジコは、“モミジさんのいう事は素直に聞いて、菊子を地球に残してテレジア星に帰ったのに、私のいう事は聞いてくれないのね。”と思いながら、「女神ちゃん、お腹が膨れるかどうかの問題ではなく、・・」と反論しているとアヤメが、「博士、お前は黙っていろと言っただろう。ぶっ飛ばしてやる。」とフジコを襲おうとしていた。

険悪な雰囲気になって来たのでモミジが、「まあまあ、女神ちゃん落ち着いて。陽子さんは不妊症で子供はなく、親とも死別していますよね。離婚も最近ではなく数十年前ですから身内はいないですよね?」と話題を変えた。

菊子は、「いいえ、子供も孫もいます。陽子は若い頃に暴走族数人にレイプされ、その後、嬲り者にされた事が原因で不妊症になりました。その時に妊娠して出産しています。陽子から、この事は黙っていてと頼まれたので、今迄黙っていました。連絡とってみます。」と口が動かない為に、意思波で伝えた。

フジコが、「何故中絶しなかったの?」と確認した。

菊子が、「それは私も勧めたわ。でも陽子が、“新しい命を殺したくない。”と出産を選んだのよ。」と返答した。

モミジが、「何故陽子さんは菊子ちゃんに助けを求めなかったの?」と暴走族に阻止されたのか確認した。

菊子は、「暴走族に両手両足を押さえ付けられていて、どうにもならなかったらしいのよ。暴走族達が陽子を放置して逃亡した後、しばらく呆然として、その後私に泣きながら電話して来たのよ。直ぐに駆けつけてタイムマシンでその暴走族を捜し出そうとしましたが、陽子から、“人に知られたくないので何もしないで。”と言われたので、捜しもせず何もしませんでした。こんな事がなければ、陽子も幸枝のように幸せな結婚生活を送れた筈よ。」と泣いていた。

モミジは、「御免ね。辛い事を思い出させて。もう良いわよ。」と菊子を慰めた。

その後モミジは、「陽子さんの孫って、ひょっとして、陽介という名前ですか?」と質問した。

菊子が、「確か、陽子からはそう聞いた事はありますが、何故モミジさんが知っているのですか?」と不思議そうでした。

モミジは、「別に知っていた訳ではありませんよ。菊子ちゃん、陽子さんの枕元に置いている、鶴の折り紙を透視で確認すれば解りますよ。陽子さんは、たまに孫と会っていたようですね。」と教えた。

菊子は、鶴の折り紙の内側に文字が書いている事に気付いて、「陽子お婆ちゃん、早く風邪を治して元気になってね。陽介より。」と読み上げた。

フジコが、「部屋の中を透視で確認すれば、連絡先も解るかもしれません。」と透視で確認すると、陽介から来た年賀状を見付けた。

モミジが、「菊子ちゃんにも内緒で会っていたのでしたら、私達も気付いてない振りをして、年賀状の住所に通夜と葬式の連絡をしましょう。女神ちゃんは陽子さんをお願いします。」と指示した。

アヤメは、「誰かさんが地球に住んでいるおかげで・・・」とブツブツ文句を言っていた。

モミジが、「私も一緒に行ってあげるから。」と陽子の遺体を二人でヴィツール号の冷凍室へ運んだ。

モミジはヴィツール号で、「陽子さんを襲った暴走族は、暴走の傍ら、若い女性を輪姦していたようです。被害女性が何人もいました。ある日、一匹狼の不良少女、スケバンの菊枝が、人気のない夜道を歩いている時に、陽子さんの様に輪姦しようとして携帯で仲間を呼んで数人で襲った所、女一人だと思い油断したのか、逆にやられて片端になっていたわ。」とアヤメの性格からしてリベンジするかもしれないので、リベンジしないように伝えた。

アヤメが、「何でも調べるのは秘密調査官の悪い癖ね。片端になるという事は、大きな石か太い木の枝のような武器でも使ったのかしら。不良少女だけあって、無茶苦茶するわね。天罰ね。」と私が菊子の代わりにリベンジしようとしたが、その必要はないわねとリベンジしない事にした。

モミジは、「そうね。動けなくなったので、仕方なく仲間に連絡して援助を依頼したが、素人が無理に動かしたので、益々痛くなりどうにもならなくなり救急車を呼べば、救急隊員が警察に通報した。警察の取り調べで、体のがっしりした複数人数の男性が女一人に倒されて片端になったと証言しても信じて貰えずに、暴走族同士の勢力争いだと処理されて、スケバンの菊枝には捜査の手は及ばなかったわ。」と警察の対応を説明した。

アヤメは、「それだと、その暴走族は黙ってないだろう。リベンジしなかったのか。」と聞いた。

モミジは、「片端になったのは、仲間が無理に動かした事が原因なのに、お金で連盟を組んでいる暴走族に依頼していたわ。」と返答した。

アヤメは、「また片端にされなかったのか?」と聞いた。

モミジは、「襲おうとした時に、丸東組の組員に阻止されて刃物で刺されて、矢張り片端にされていたわ。組員はスケバンの菊枝の事を姉さんと呼んでいたので、恐らく組長婦人だと思うわよ。」とその後の事を説明した。

アヤメが、「組長婦人がスケバンなのか?」と確認した。

モミジは、「違うわよ。暴走族が最初片端にされた時にショックで、なんとか片端にならないように色んな病院で診察して、最終的に治らないと諦めた時には、腹の虫が治まらずリベンジする事にしたようですが、最初襲った時から既に数年経っていて、スケバンの菊枝の行方が解らずに、捜すのにも数年かかり、その間にスケバンの菊枝が丸東組の次期組長と結婚したのよ。」と説明した。

アヤメは、「今回は警察に通報しなかったのか?」と警察の話がでなかったので確認した。

モミジは、「今回は、刃物でさされた時に神経が切断されて動かなくなっただけでしたので、仲間に抱えられて逃げていたわ。相手が丸東組なので怖くて警察へは通報せずに泣き寝入りしたようですね。」などと二人で雑談していた。

陽子は寿命を悟った時、菊子の知らない間に、一通の手紙と菊子との通信機を箱に入れて、「困った時には、この箱の中の手紙を読みなさい。きっと役立つから。」と孫の陽介に渡していた。

菊子も陽子に通信機を渡していた事を、陽子が亡くなったショックですっかり忘れていて、通信機は回収せずにそのままになっていた。

菊子は、自分の体の中にはテレジア星人の血が半分流れている為に、異性との付合いがあっても、決して第一線を超える事はなく、結婚もしませんでした。菊子が戦闘艦で地球を守った事は昔話になっていて、菊子の事は誰一人知らなかった為に、陽子が亡くなった後は菊子は呪縛から完全に開放されて、菊子が喪主となり陽子の通夜、葬式をモミジとアヤメとフジコの協力で行った。

通夜の連絡をした時に、幸枝は老人ホームで寝たきりになっていたが、生きている事を知り、幸枝の教え子だと面会簿に記入して面会に行った。

幸枝は、「そうか。陽子は亡くなったのね。先日通夜と葬式の連絡を菊子から頂いた時は驚いたわ。体力は陽子のほうがあったから、てっきり私が先に天国に召されると思っていたわ。」と予想外の出来事に驚いていた。

菊子は、「陽子は若い頃はスポーツをしていたが、私と同居するようになってから私に頼りっきりで、動く事が少なくなったので、体力が衰え、老化現象が早く進んだようです。それに比べて幸枝はいつも動いていたから、老化現象が進むのが遅かった事が一つの要因だと思うわよ。」と予想していた。

幸枝は、「そういう事か。通夜と葬式には私の代理として息子に行かせました。」と何故陽子が先に天国に召されたのか納得していた。

菊子は、「ええ、当日息子さんから声を掛けられました。」と答えた。

菊子は、テレジア星に帰る事を幸枝に伝えて最後の挨拶をして、菊子は人知れずテレジア星へ帰った。

テレジア星の重力は菊子にはきついので、母親であるアヤメのサポートの元、衛星で暮らす事になった。そして菊子が銀河系を離れたので、モミジも銀河系を離れて再び秘密調査官としての任務に戻った。

地球に置いてきた菊子の日記にも、はっきりと子供はいないと記述されていましたが、一部テレジア星の文字で記述されている個所があった。

そこには、内緒で子供を作り、自分が宇宙人とのハーフだという事で苦労したので、その子供は自分よりも地球人の血が濃くなっている筈ですので、地球人として暮らして行けるように、菊子はその子を捨て子して干渉しないようにしていた事が記述されていた。

父親は寺前外科医ですが、妻子がいるので迷惑にならないように、子供の事は何も伝えてない事や、子供が好きで金持ちの人という事で考えたあげく、個人で開業している小児科医院が良いと考えて捜していると、親友の芹沢陽子の親戚が、芹沢小児科医院を開業している事に気付いて、捨て子するのはそこに決めた事や、更に菊子は、その子供の名前をどうしようかと迷っていた事。迷った理由は、菊子の菊を取って菊枝にしようかとも思いましたが同級生から、“菊子なんて、変な名前、最近は菊という名前は聞いた事ない。時代劇でお菊という名前は聞いた事があるぞ。お前の名前は古臭いな。”とよくからかわれたので、親友の名前の陽子にしようかとも迷っていた。

結局、芹沢小児科医院の玄関の前に、“この子の名前を決め兼ねています。できれば、菊枝か陽子と命名して下さい。”と書き、テレジア星人の血筋だという事を伏せて、幸せに育つ事を祈り捨て子した。

捨て子したのは、菊子が陽子の子供になる前の事でしたので、今は成人している筈ですが、何もせずに、そのままテレジア星に帰った。

一方、テレジア星に菊子が帰って来たので、荷物の整理をアヤメが菊子としていると、アヤメは自分が日記の一部を地球に忘れてきた事に気付いた。

アヤメは、またサクラやフジコから、“ドジで間抜け”と責められるのが嫌だったので、テレジア星の文字で書かれているので問題ないだろうと判断して黙っている事にした。

まさかその日記は、影の大ボスが戦闘艦の資料を挟んでいる日記を抜き取っていたとはアヤメは夢にも思わず、てっきり自分が忘れてきたものだとばかり思い込んでいた。

アヤメも、その日記に戦闘艦の技術資料を挟んでいた事は、すっかり忘れていた。


テレジア星人第二部に最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。第三部は12月2日から投稿予定です。第二部同様第三部もよろしくお願いいたします。

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