第五十八章 敵本体を撃破する
同僚達は菊子の説明を聞いて驚きながら、「確かに数年前、大騒ぎになっていて、似ているとは思っていましたが、まさかあの時の艦長が菊子だったとはね。でも何故一番頼りになる艦長が地球に近付けないの?」と不思議そうでした。
菊子は、「サクラ艦長には、呪縛という問題があり、地球では平常心が保てない恐れがあるのよ。一種の病気みたいなものね。どうやら、当分治りそうにもないけれどもね。そのほか、地球にゆかりのある、私の母と、モミジ艦長、フジコ艦長らが、銀河系内部で待機していて、太陽系には近付けないようにしています。」と返答した。
同僚達は、「そんな話、聞いた事ないけれども、マスコミや政府は知っているの?報道協定でも結んでいるの?」と地球の危機なので、パニックを避けるために報道しないのかと確認した。
菊子は、「勿論この事は地球政府には伝えています。極秘事項?らしいので、皆、黙っていてね。パニックを避ける為らしいです。警察やマスコミも知らず、アメリカ政府と日本政府だけが知っていて、軍事演習を強化しています。」と返答した。
同僚達は、「そうか。だから最近アメリカ軍と自衛隊との共同演習が多くなってきたのか。」と納得していた。
菊子は、「そうよ。日本政府は自衛隊の予算捻出に苦労しているようですね。」と付け加えた。
同僚達は、「宇宙空間では、現在交戦中なのですか?」と現状を知ろうとした。
菊子は、「まだ交戦状態にはなっていませんが、先遣隊は地球まで来ていて、先程皆を襲ったUFOが、その先遣隊です。私が撃墜しておきました。小型のUFOなので、母も見落としたようですね。本体の一部も地球まで来る可能性がある為に、その時も私が対処する事になっています。」と返答した。
同僚達は、「そうか。だから最近菊子の帰りが早くなったのか。」と納得していた。
菊子は、「そうよ、課長!私は今後も早く帰ります。残業は他の社員に回して下さい。そして皆!友達付き合い悪いけれども、地球の為だと思って勘弁してね。その変わり、この件が片付いたら、宇宙旅行に招待します。私も宇宙戦艦の艦長ライセンスを、やっと取得できたのでね。」と今後の事を同僚達に頼んでおいた。
同僚達は驚いて、「えっ!?宇宙戦艦の艦長?先程の乗組員は、宇宙戦艦の艦長は、雲の上の人物だと言っていましたが、菊子はテレジア星でそんなに偉いの?」と信じられない様子でした。
菊子は笑いながら、「あれは乗組員ではなく、テレジア星のペットよ。皆も、犬や猫などのペットを飼っている人もいるでしょう?ペットからみれば、買主は雲の上の人物になるのよ。戦闘艦などは、宇宙戦艦からリモートコントロールする事が可能な為、その時は、ペットを艦長に指名する事もあるのでそう思ったのね。でもその話から、地球人とのハーフの私は、テレジア星のペットから同等だと思われているのかしら?ショック!」と返答した。
同僚の一人が冗談で、「はい、菊子、お手!」と手を出したので、全員大笑いした。
別の同僚が、「猪熊さん、ペットは先程いましたが、乗組員はどこにいるの?一人も見た事ないわよ。」と質問した。
菊子は、「この戦闘艦は全てコンピューター制御で、乗組員は一人もいません。全て私一人で動かしています。日本がすっぽりと入る大きさのテレジア星の宇宙戦艦も、艦長一人でペットはいても乗組員はいませんよ。」と返答した。
その同僚は、「ペットだか乗組員だか知りませんが、先程菊子は、“直ちに配置に着きなさい。“と指示すると、”了解しました!艦長!”とどこかへ行ったのは何?どこへ何をしに行ったの?」と質問した。
菊子は、「艦を発進させるから、ペット小屋に入りなさいという事よ。要は犬を犬小屋に入れるようなものよ。」と返答した。
その同僚は、「それじゃあ、先程ここへ移動する時に、“総員配置につけ!“とか指示したのはどういう事ですか?」と質問した。
菊子は、「その指示は、全てのプログラムを通常モードで起動させる指示です。例えば、”総員戦闘配置につけ!“と指示すれば、全てのプログラムが戦闘モードで起動します。その時は、”光線砲発射!“と指示するだけで、攻撃可能ですが、通常モードで起動していると、”砲撃手、光線砲発射!“と指示しないと、攻撃できません。戦闘モードで起動している時に、”全砲門開け!“と指示すると、攻撃の指示をしなくても自動で交戦します。ただ言うだけではコンピューターは反応しません。音声認識ではなくテレジア星人特有の能力が必要で、それに反応します。」と説明した。
同僚達は、「宇宙戦艦って相当大きいのでしょう?一人で操れるの?」と確認した。
菊子は、「確かに大変ね。私も宇宙戦艦の艦長ライセンス取得テストは何度も受けて、やっと合格できたのよ。左右上下に細い空間を自由自在に飛行する必要があり、あれだけ大きいからフラフラして、あっちこっちにぶつけて安定して飛行できなかったのよ。最初は墜落させてしまったわ。」と返答した。
同僚達は、「まるで自動車教習所みたいね。という事は、路上教習もあるの?」と聞いた。
菊子は、「安定して飛行できるようになれば、宇宙戦艦なので、当然実戦経験が必要になります。戦地に出撃して戦闘に参加します。これが路上教習みたいなものね。」と返答した。
菊子が皆に色々と説明しているとフジコから通信が入り、「菊子ちゃん!先程から私達は四隻とも戦闘状態に入っています。今、敵艦載機数機が地球に向かいました。私はあなたのお母さんと違って実戦経験が殆どないので防ぎきれなくて御免なさい。菊子ちゃんの戦闘艦で対応可能な量です。数分で今、菊子ちゃんのいるタイタンを通過する筈です。」と連絡があった。
菊子は、「皆、捕まって!光速の二倍で海王星軌道に向けて発進!スクリーン最大!非常警報!総員戦闘配置につけ!全砲門開け!艦載機全機発進!」と指示した。
サクラが、「女神ちゃん、博士の実力では今後とも敵は地球へ向かい、艦載機だけではなく戦艦も向かう可能性があります。経験の浅い菊子ちゃん一人では無理よ。しかし現状では誰も菊子ちゃんと博士の応援に行けないわ。女神ちゃんのスケバングループの艦隊を出撃させて!」と指示した。
アヤメは、「博士の事だからそうなると思っていたわ。私のスケバングループで、宇宙戦艦六隻の艦隊を編成して、既に出撃しています。現在、敵の後続部隊の有無を確認しながら、銀河系内部で待機中です。危険だと判断すれば、菊子と博士の応援に向かわせるわ。」と返答した。
サクラは「さすが女神ちゃん。実践については何も指示する事はないわ。」と感心していた。
太陽系内部でも艦載機同士の激しい戦いの中、敵艦載機が地球へ向けて侵攻を始めた。
コンピューターから「敵艦載機一機、地球に向かいました!上空にも敵艦載機数機出現」とコンピューターから音声が流れて来た。
菊子は追尾を諦めて、地球政府に、艦載機一機、地球に向かった事を伝え、上空に出現した、敵艦載機と交戦中に、コンピューターが、「敵戦艦、前方に出現!」と音声が流れた。
敵艦載機を広角パルス砲で攻撃して、敵戦艦に向けて主砲発射したが、敵も主砲を発射し、菊子は回避行動をとったが避けられませんでした。
「左舷に被弾!スクリーン三十%消失!」とコンピューターから音声が流れた。
サクラが、「女神ちゃん、もう菊子ちゃんは限界よ。スケバングループの艦隊を菊子ちゃんの応援へ向かわせて!」と指示した。
アヤメが、スケバングループの艦隊を宇宙戦艦二隻ずつの三手に分けて、敵後続部隊の有無確認と、菊子と博士の応援に向かわせた。
菊子は交戦中、さらに被弾して戦闘艦に衝撃が走り、同僚の数人が転倒して非常ベルが鳴りコンピューターから、「右舷倉庫に被弾!火災発生!只今消火作業中!」と音声が流れた。
菊子の同僚達は、「猪熊さん!大丈夫?」と心配そうに聞いた。
菊子は、「大丈夫じゃない!非常にヤバイ状態です。何が戦闘艦で充分対応可能よ!」と返答した。
同僚達が真っ青になった瞬間にアヤメより通信が入り、「今、私の艦隊を応援に向かわせたわ。もう少し頑張って!」と励ました。
菊子は、「応援が遅い!もう少し早く来てよ!」と怒っていると突然敵戦艦が大破した。
菊子が、「ホッ」とした瞬間に、「リーダーの指示で応援に来ました。ここは私達に任せて。」と通信が入り、二隻の宇宙戦艦が出現した。
菊子は、「地球にも敵が向いました。」と伝えると、「了解!それも私達で対応します。」と返答があり、宇宙戦艦一隻が地球に向かい、残りの一隻が敵と交戦状態になった。
菊子が戦線から離脱すると、交戦を一段落させたモミジから通信が入った。
「こちらハリアット号!菊子ちゃんは大丈夫?でもないみたいね。私の艦に着艦してね。」と菊子の様子を心配していた。
菊子は、「了解!着艦します。モミジ艦長、お願いがあります。地球で敵の先遣隊に襲われていた地球人数名を搭乗させています。ハリアット号内部の環境を、地球の環境にしておいて下さい。」と依頼した。
同僚達は、ペットの話を思い出して、「猪熊さん、ハリアット号のモミジ艦長は、恐い艦長ではないのですか?大丈夫ですか?」と心配そうに聞いた。
菊子は着艦しながら、「何故そう思うの?誰かに何か聞いたの?」と確認した。
同僚達は、先程のペットの話を菊子にした。
菊子は、「あ~あ、あれね。悪戯好きのペットに、モミジ艦長がお仕置していただけで、殺そうとしていませんよ。あまりにも可哀想でしたので私が止めたのよ。それがたまたま、ペットにはそう思えただけです。モミジ艦長は優しい艦長ですので大丈夫ですよ。実戦経験も豊富で宇宙戦艦なので、戦闘艦よりも安全ですよ。しかし、ハリアット号では礼儀正しくしていなければ、お仕置されますよ。そこは厳しいですから。例えば、あの時のお仕置は、空を飛べないペットにバンジージャンプさせるのですが、ペットの見ている前で、足に繋いでいるロープに刃物で切れ目を入れて飛ばせるというお仕置です。もし、ロープが切れればモミジ艦長が受け止めてくれます。受け止める事はペットに伝えず、“死ぬか生きるかは、あなたの運しだいです。“という表現をしたので、ペットは真っ青になりました。」と説明しながら着艦した。
同僚達は緊張して、「そんなに凄いお仕置するのですか?私は、このままの状態の方が良い。」と怖がっていた。
菊子は、「今の交戦見たでしょう?私の戦闘艦は破損しています。今敵に攻撃されれば命の保証はしませんよ。モミジ艦長は一度は許してくれます。二度目はありません。ですから、言いつけを守っていれば、お仕置されませんので大丈夫ですよ。」と説明しながら着艦した。
モミジは、菊子が同僚に説明していた内容を通信機で聞いていた為に菊子の同僚に、「私は菊子ちゃんが言ったように実戦経験豊富なので、それだけ強力な敵と交戦します。決して安全な事はありませんよ。」と敵本体に向けて発進した。
しばらくすると、敵本体も進撃を始めたが、実戦経験豊富で、軍隊の訓練を受けているモミジが激戦の末、撃破した。
アヤメも敵艦隊を撃破して、サクラの指示で、フジコが防ぎきれなかった敵艦隊が地球へ進撃したので、スケバングループの艦隊の応援に向かった。
モミジもサクラの指示で、フジコの応援に向かったスケバングループの艦隊のバックアップに向かい、残りの敵艦隊を撃破して地球へ向かった。
地球でも激しい交戦があったが、ようやく敵を全滅させる事ができて戦闘は終了した。
アヤメが菊太郎のもとへ戻ると菊太郎は、「無事でよかった。お姉ちゃん、もう二度と危険な事しないで!いつ迄も僕の傍にいて!」と泣きながら抱き着いた。
アヤメは、「私は菊太郎ちゃんを守る為に戦いました。私も菊太郎ちゃんといつ迄も一緒にいたいからよ。」と返答した。
次回投稿予定日は11月9日です。




