第四十七章 アヤメ出所する
陽子は昔からバレーボールが好きでしたが、走りも早く、運動会の百m走などでは常にトップでした。
中学校では陸上部からスカウトされて、両親から説得された事もあり陸上部に入部したが、高校ではバレーボール部に入部しようと菊子を誘い、菊子と両親を説得した。
菊子は体重の関係上、ジャンプなどを伴うスポーツはしたくありませんでしたが、陽子に頼まれると断れず、陽子と一緒にバレーボール部に入部する為に、陽子の両親を説得していた。
陽子は、「叔母さんから聞いたわよ。お父さんとお母さんの出会いはマラソンだったのね。だから私にマラソンをさせようとして健康管理だとか何とか言いながら陸上部に入部させたのよね。すっかり騙されたわ。高校では菊子と一緒にバレーボール部に入部するわよ。良いわよね。」と両親を説得した。
菊子も、「私も陽子さんと一緒に、バレーボールがしたいので、陽子さんと一緒にバレーボール部に入部しても良いでしょうか?」と口添えした。
母親は、「仕方ないわね。月光仮面には恩もあり逆らえないわね。お父さんには私から伝えておきます。」と説得を諦めて、陽子がバレーボール部に入部する事を認めた。
「だから、月光仮面はやめてと言ったじゃないの!」と恥ずかしそうでした。
陽子は菊子と一緒にバレーボール部に入部した。バレーボール女子部の顧問の先生は松田先生でした。
毎日学校生活に部活にと楽しい高校生活でした。ただ、菊子は試合を全て断っていた。試合中に、空を飛べたり腕が伸びたりする自分が興奮のあまり出てしまう可能性があると思ったからでしたが、それを快く思わない先輩に目を付けられた。
先輩から、「試合に出場しないのだったら何故バレーボール部に入部したのよ。よく見ると、あんた!練習も手を抜いてない?バレーボールを馬鹿にしてない?」と指摘された。
図星でしたので、「良く見ているわね。さすが先輩!でも私はバレーボールを馬鹿にしていませんよ。私はバレーボールが好きなだけです。私は試合の為にバレーボールはしません。楽しむ為にバレーボールをしているだけです。試合の為に気を張り詰めるのではなく、もっと気楽に楽しみたいのよ。」と誤魔化した。
そして、菊子は、“そうは言ってもジャンプや回転レシーブは体重の関係上、難しいのよ。長く空中に浮いていると不信に思われるし、どのタイミングで着地するのかを考えながらジャンプや回転レシーブするのは至難の技なのだから。本当はバレーボールはしたくなかったのだけれども、陽子に頼まれると断れずに仕方なく入部したのよ。”と思っていた。
しかし、その先輩は納得せずに、菊子には試合に出場できない何か別の秘密があるのではないかと考えて、菊子と仲の良い陽子に、それとなく聞いたりして色々と調べていた。
陽子は先輩が菊子のクラスメートなどにも聞いている事を知り、「菊子、先輩が菊子の事を色々と調べているわよ。」と教えた。
菊子は、「教えてくれて有難う注意するわね。」と先日の説明では納得しなかったかと今後気をつけようとしていた。
一方、テレジア星で秘密調査官の助手をしているアヤメは、フジコとヴィーナスがテレジア星に帰った為に、菊子の事を心配して、モミジや刑務所とも相談の上、出所した事にした。
出所後、アヤメは、「あれほど短気を起こさないでって言ったのに、刑事と喧嘩するだなんて、何考えているのよ!」とアヤメが逮捕され計画が狂った何も知らないフジコから責められた。
アヤメは、「刑事が去年の今日は何をしていたのか?などと聞いたので、つい・・だいたい、一年前の事など、特別な事がない限り覚えている筈がないでしょう?」と反論した。
フジコは、「妊娠前や妊娠中や出産後の事も色々と確認する必要があり、聞かれるのは当然でしょう。でも営業マンなどは、会議で去年の事を聞かれても答えているわよ。何故女神ちゃんにはそれができないの?」と問い詰めた。
アヤメは、「営業マンは営業日誌を書いているから解るのでしょう?」と不機嫌そうでした。
サクラが間に入り、「女神ちゃん、博士の言っている意味が解らないの?博士も博士よ、女神ちゃんにそんな言い方しても無理よ、もっと噛み砕いて話さないと。」と助言した。
アヤメが、「それじゃ、私が丸でバカみたいヤンケー。」と怒り出した。
サクラが、「それじゃ、博士の言っている意味が解るの?今後、アヤメの事は女神ちゃんではなくパー介ちゃんと呼ぼうかしら?」と笑った。
アヤメは、「そもそも、営業日誌を書いている人と書いてない人を比べるのが可笑しいのよ!」と反論した。
サクラは、「本当にもう!そこまで解っているのでしたら、何故博士の言う意味が解らないの?博士はね、女神ちゃんが何度も警察の厄介になっているので、今後の事を考慮して日記を書きなさいって言っているのよ!女神ちゃんの事だから続くかどうか解らないけどね。」と説明した。
アヤメは、「あっ、そうか、そういう事か。博士、そういう事なら、そうだと言ってくれないと解らないでしょう。」と納得していた。
サクラが、「女神ちゃんの頭ではね。」と付け加えた。
アヤメが、「あのな~、」と何か言おうとしたのでサクラが、「菊子ちゃんの近況の話をしましょうか?女神ちゃんも気になるでしょう?」と険悪な雰囲気にならないように話題を変えた。
アヤメも菊子の事は気になっていたので菊子の事を色々と聞いた。
地球で親友ができて、仲良く暮らしていて、その親友に菊子が半分宇宙人だとばれた事。夏休みなどの長期休みにはテレジア星に戦闘艦の訓練に来ていて、先日戦闘艦の艦長ライセンス取得テストを受けて合格した事。高校では、その親友と部活していて、合宿などもある為にテレジア星に来る事が少なくなりライセンスを届に行く必要があり、誰が行くのかという話をしていた事などを聞いた。
アヤメが、「私の娘の事だから、私が行きます。」と立候補した。
誰も反対する者はいなかった為に、アヤメが行く事に決定した。
アヤメが、「解らない事があります。呪縛の血縁関係者に会っても、今回誰にも迷惑を掛けてないし、菊子を出産しても何も問題なかったのに、何故これが犯罪になるのだ?」と聞いた。
フジコは、「それは結果論でしょう?」と確認した。
アヤメは、「えっ?蹴ったろう?何だ蹴っ飛ばせば良いのか簡単じゃん。」と安易に考えていた。
フジコは、「違うわよ。何故ここで蹴る話がでてくるのよ。蹴ったろうではなく、結果論よ。要するに、それは後で言える事でしょう?会う迄は、どんな結果になるか解らないでしょう?犯罪者の血縁関係者が犯罪者とは限らないし、人格者の血縁関係者が人格者とは限らないでしょう。女神ちゃんの場合は、警察官の血縁関係者が警察官とは限らず犯罪者の可能性もあります。会うまで解らないのよ。菊太郎さんが、たまたま犯罪者でなかったから良かったようなものの、もし連続殺人犯だったら、女神ちゃんは今頃、地球で次々と殺人を繰り返していたかもしれないのよ。これは二次呪縛と言うのだけれども、自分の意思で立ち切る事は可能です。しかし危険で、更に子供をつくれば何代にもわたって同じような子供が生まれる可能性があり、悪い影響を及ぼす可能性がある為に犯罪行為になります。これはどこでも同じでしょう?例えば地球でも、車でスピード違反や信号無視して、誰にも迷惑をかけずに事故を起こさなくても警察に捕まるでしょう?それは危険だからよ。最悪、他人を捲込み死亡させる可能性もあるからよ。刑務所で本当に反省したの?そんな質問が出るという事は怪しいわね。」と疑問に感じていた。
アヤメは、“刑務所で服役していた訳ではないので、そんなの知るか!”と思いながら、「そういえば、刑務官がそんな事を言っていたな。」と服役していなかった事がばれないようにした。
フジコが、「女神ちゃんの呪縛の血縁関係に付いては、先日、菊子ちゃんがテレジア星に来た時の検査では、菊子ちゃんの体の中に流れている女神ちゃんの血液と菊太郎さんの呪縛の血液が中和して、菊子ちゃんから輸血を受ければ呪縛は殆どないだろうとの事でした。その為に、菊子ちゃんが母の病院で採血したので、それを輸血すれば女神ちゃんも呪縛から完全に開放される事になります。」と説明した。
アヤメは、“これがモミジの言っていた輸血か。呪縛ではなかったが、自分の血液だから良いか。”と思いながら輸血して、宇宙戦艦ヴィツール号で地球へ向かった。
アヤメが出掛けた後にサクラが、「博士、呪縛は女神ちゃんの体から分泌された化学物質が原因なのよね?菊太郎さんの呪縛の血液とか、菊子ちゃんの体の中に流れている女神ちゃんの血液が中和するってどういう事?」とフジコの説明が理解できませんでした。
フジコは、「そんな事がある訳ないじゃないの。二次呪縛は自分の意思で立ち切る事は可能ですが、意思の弱い女神ちゃんには無理だと思ったので誤魔化しただけよ。女神ちゃんは本当に呪縛の事は何も解ってないから簡単に誤魔化せたけれども、さすがアネゴは誤魔化せなかったわね。でもアネゴも女神ちゃんに日記が続かないだなんて言って、負けん気の強い女神ちゃんを刺激しちゃって。」と笑っていた。
サクラは、「日記が三日坊主にならないように刺激しましたが、博士には見抜かれましたね。しかし、私が呪縛で地球に滞在している時に、女神ちゃんには、“もう一度小学生の教科書から勉強し直しなさい!”と言っておいたのに、すっかり忘れているようね。それに呪縛関係の犯罪で逮捕されたのだから、刑務所で教育されなかったのかしら?」とアヤメが呪縛の事を何故知らないのか疑問でした。
フジコは、「いいえ、教育はあったらしいですが、女神ちゃんが教育をボイコットしたりして色々と問題を起こしたりしていたので、ヴィーナス小母様と相談して菊子ちゃんも一人で大丈夫だと判断して、私達は菊子ちゃんを地球に残してテレジア星に帰って来たのよ。」と説明した。
サクラが、「女神ちゃんが、“菊子が地球で一人っきりになっている!“と焦っていたのはそういう事だったのね。所で女神ちゃんに輸血した血液は誰の血液なの?」と聞いた。
フジコは、「刑務所で採血した、女神ちゃん自信の血液よ。でも地球でボロが出ないように、菊子ちゃんに口裏を会わすように頼んでおいたわ。」と説明した。
一方地球では、アヤメが出所して地球に来ると通信機で聞いた菊太郎は、有給休暇を取得して待っていた。
アヤメが菊太郎の元へ帰ると、菊太郎は子供の頃にアヤメと遊んだ玩具を出して来た。
アヤメも当時の事を思い出し、思わず一緒に遊んだ。
その後、菊太郎は泣きながら、「お姉ちゃん!もうどこにも行かないで!いつまでも僕の傍にいて!」とアヤメに抱き付いた。
アヤメも、「肉食の私で良ければ、二度と菊太郎ちゃんの傍を離れないわよ。こんな顔になっちゃって、今迄酷い目に遭ったようね。職場で虐めなどはない?今後私が菊太郎ちゃんの事を守るから安心してね。」と菊太郎を安心させて、学校に行っている菊子の事を心配していた。
菊太郎はアヤメと再会して興奮していたが落着くと、「そういえば、アヤメが不在の間に引っ越したが、よく場所が解ったね。」と確認した。
アヤメは、「私が地球を離れる時に、菊太郎ちゃんに特殊な携帯電話だと説明して通信機を渡したでしょう?その通信機から場所の特定ができました。」と返答した。
菊太郎は、「もし、僕が通信機を持ってこなかったらどうしたの?」と聞いた。
アヤメは、「菊太郎ちゃんに連絡できないから、タイムマシンで調べて直接きたわよ。」と返答した。
菊太郎は、「地球人はタイムマシンを持ってないから、そこまでは気付かなかったよ。でも突然来られたら、僕も驚いたと思うよ。」ともし突然アヤメが来たらどうしたかなと考えていた。
次回投稿予定日は9月27日です。




