第四十六章 菊子、小学校の同級生を助ける
皆と菊子のUFOで雑談していると、陽子の同級生の一人が泣いていた。
陽子は男子生徒達に、「ほら、危険な山登りをするから怖がって泣いているじゃないの!謝りなさいよ。」と同級生の様子を見て怒っていた。
陽子は、「どうしたの?もう大丈夫よ。熊は菊子が追い払ってくれたし、ここは宇宙空間だからここまで熊は来ないわよ。他に何か心配事でもあるの?」となぜ泣いているのか、その理由を知ろうとした。
その同級生は、「いいえ、違うの。猪熊さん、私の事を覚えていますか?」と泣きながら聞いた。
菊子は、「えっ?あ!あなたは、確か小学校の時に同級生だった、名前はえ~っと、」と思い出していると、その同級生は、泣きながら菊子に抱き付いた。
菊子は、「確か真理子さんでしたね。どうしたの?何があったの?」と真理子の様子が、普通じゃないので心配していた。
真理子は、菊子が転校した後の事を説明して、「御免ね、猪熊さん。虐めっ子の作戦だとも知らずに猪熊さんに冷たくして。虐めに溜まりかねた良子が先生に助けを求めると、その後でチクッたとか何とか言いながら、やくざの親父に言い付けて良子の父親がそのやくざに袋叩きにされ、救急車で病院に搬送しましたが、障害が残りました。それで仕事ができなくなり、母親が仕事に出るようになりました。」とその後の事を説明した。
陽子が、「何故、その良子さんがチクッたと解ったの?先生が喋ったの?それでも教育者なの?酷い先生ね。先生に責任とって貰いなさいよ!」と怒っていた。
真理子は、「先生が喋ったのではなく、良子がチクッている様子を、虐めっ子が隠れて見ていたのよ。良子の様子がおかしいので尾行していたらしいのよ。先生も配慮が足らなかったと責任を感じて、良子の事を気にかけていたのだけれども、やくざが出てきたので怖くなり、教育委員会に助けを求めて遠い学校へ転任になりました。」と説明した。
陽子は、「事情を知っている先生がいなくなれば、その良子さんはどうなったの?」と心配そうに聞いた。
真理子は、「その後、良子への虐めが酷くなりました。私も見ていられずに、菊子に助けてもらおうと引っ越し先を学校に確認したり、祝日に以前菊子が住んでいたマンションに行き、確認したりしましたが、個人情報の保護がネックになり解りませんでした。菊子が住んでいた部屋の前に、座り込んで泣いている良子の姿は、今でもはっきりと覚えているわ。」と泣きながら当時の事を思い出していた。
菊子が、「その祝日だったら、私もマンションに郵便物を取りに行ったわよ。タッチの差で会えなかったわね。」と残念そうでした。
陽子は、「運が悪かったわね。ところで、今、その良子さんはどうしているの?」と学校卒業後どうなったのか心配そうに聞いた。
真理子は、「ロープで開脚状態で縛られて目隠しされ、衣服はお客様にハサミで切られて強制的に売春までさせられて、高校へも行けずに就職しました。卒業までの我慢だと思っていると、やくざは執念深く、未だに良子の所へ来て、落とし前だとか何とか言いながら、いつも金銭を脅し取られています。」と泣きながら説明した。
陽子は、「それって、酷いじゃないの!その良子って子が可哀想。菊子、何とかしてあげられないの?そのやくざさえ来なくなれば、少しは生活が楽になり、夜間高校にでも通えるのではないの?菊子は冷たくされて怨んでいるかも知れませんが、良子さんも虐めっ子に騙されたのだから。」と頼んだ。
菊子は、「親友の陽子に頼まれたら断れませんね。良子の住所を教えて下さい。近日中に行ってみますので。でも、あの虐めっ子には、私が一度噛みつきましたが、それでも懲りなかったのね。」と住所と電話番号と地図のメモを、真理子から受け取った。
真理子は、「噛みついたって?」と不思議そうに聞いた。
菊子は、「私には透視力もあり、登校途中に虐めっ子が棒を持って隠れている事に気付いたので、周囲に人がいない事を確認した上で鼻歌を歌いながら、こうやって噛みついたのよ。」と犬に変身した。
人に戻った菊子に真理子は、「えっ?あの時、虐めっ子に噛みついた犬って猪熊さんだったの?だからお尻を犬に噛まれた事を知っていたのね。」と驚いていた。
その虐めっ子は、親父と同じ丸西組の組員になっている事を聞いた陽子は菊子に、「丸東組と丸西組は、やくざの中でも特に恐ろしいやくざだと聞いた事があります。だから良子さんも、警察に通報したら、今度は殺されると思い、泣き寝入りしたのですね。気を付けてね。菊子。」と菊子の事を心配していた。
菊子は、「心配してくれて有難う、でも大丈夫よ。地球人には負けないから。私が良子に会い、事情を聞いた上でどうするか決めます。」と良子を助ける事にした。
「地球人には負けないと言っても、拳銃相手ではどうにもならないのではないの?」と飛び道具には菊子も敵わないのではないかと確認した。
「大丈夫よ。私は拳銃で撃たれても平気だから。地球で使っている拳銃の威力は、テレジア星では子供が街中でけん銃ごっこしている拳銃と変わらないわよ。」と安心させた。
それを聞いて全員驚いていた。
そして、地球の様子を立体映像に出力して、帰り道が解り、人目に付かない場所へ着陸しようと皆で相談して無事に戻った。
その後、菊子は、刑務所は意思波が遮断されている為に、UFOの通信機で、刑務所の連絡受付を通じて、争い事が得意な母のアヤメに、良子の事を相談した。
アヤメは秘密調査官として、テレジア軍の宇宙戦艦で任務中だった為に、刑務所はアヤメの宇宙戦艦に通信を接続して、恰もアヤメが刑務所から通信しているかのように見せかけた。
アヤメは、「やくざが来る日に、菊子が良子を訪ねてやくざを撃退すれば、その後の事は、私が菊子も小学校の旅行で知っているマーガレットに頼んで、良子さんにも解らないように守るから。」とアドバイスした。
週末にやくざが来ると聞いた菊子は、陽子と真理子と一緒に、菊子の小学校時代の同級生である、丸西組に絡まれている良子の自宅を訪ねた。
真理子は、「良子、今日は力強い友達を連れて来たわよ。」と菊子と一緒に家に入った。
良子は、菊子を見るなり、「猪熊さん、助けて~」と泣き出して、抱き着いた。
菊子は、「真理子さんから事情は聞きました。大変だったわね。私の連絡先を教えとけば良かったわね。私が力を貸すので確りするのよ。」と良子の肩を抱き励ました。
良子は、「いいえ、猪熊さんが伝えようとしていたのに、私達が誰も聞こうとしなかったのよ。」と後悔して、菊子の胸に顔を埋めて泣いていた。
菊子は、「今日そのやくざが来ると言っていたの?」と良子を助けようとした。
良子は、「週末に売春の時間と場所を伝えに来るのよ。その時に金銭も要求されるのよ。もうそろそろ来る頃なの。恐い。」とお金の準備をしていた。
しばらくすると玄関のベルが鳴り、良子はピクッと反応して、お金を持って玄関に行こうとしていた。
菊子が良子の肩を押さえて、「駄目よ!お金を渡さないで!私が対応するので部屋から出て来ないで!」と菊子は玄関に行った。
やくざは、「今日は、お金を貰う日なので、・・・・」とまで言った所で菊子が、「お金は、私が渡すな!と良子に伝えました。勿論売春も断ります。何か文句ありますか?」とやくざの要求を断った。
やくざは、「痛い目に遭いたくなかったら、すっ込んでいろ!」と怒鳴りながら家の中へ入って行こうとした。
菊子がそのやくざの胸倉を掴んで、「あんたこそ、すっ込んでいなさい!」と投げた。
やくざは、「痛~、このガキ!何しやがる!」と怒鳴りながら、数名のやくざが同時に菊子に襲い掛ったが、全然歯が立ちませんでした。
やくざは、「このガキ!覚えていろよ!」と逃げようとしていた。
菊子は、「忘れなかったら覚えとくわね。」とからかった。
やくざは、「なめやがって、どうするか見ていろよ!天下の丸西組に逆らった事を後悔させてやる!」と捨て台詞を残して逃げた。
その日は、良子に菊子の携帯番号を教えて、透視力で近くにやくざが隠れていない事を確認した上で帰ろうとしていた。
その時、マーガレットが猫に変身して隠れている事に気付いた。
良子は、「やくざを撃退したから、その仕返しが怖い。」と菊子の腕に縋り付き離そうとしませんでした。
菊子は、「心配しなくても大丈夫よ。良子の事を守ってくれる人を捜しておいたから安心して。良子が気にならないように、気付かれないように守ってくれるそうです。」と説明して帰った。
真理子は帰り道、菊子に、「良子の事を守ってくれる人はいつから来るの?それまでに襲われないかしら?せめてその人が来るまで、良子の傍にいてあげて。」と頼んだ。
菊子は、「先日、テレジア星人は体の形状や大きさを自由に変えられると説明したでしょう?帰る時に、やくざが隠れてないか透視力で確認しました。その時に、良子を守ってくれるテレジア星人のマーガレットさんが、猫に変身して近くにいました。真理子さん、帰る時に可愛い猫がいると言っていましたが、あの猫は、私より年上のテレジア星人です。マーガレットさんがいれば大丈夫よ。」とすでに来ていて良子を守っていると安心させた。
それを聞いて真理子も安心して帰った。
次の日、良子が外を歩いていると、突然やくざに拉致されて、組事務所に連れ込まれた。
「昨日はよくも用心棒を雇いやがったな!もう二度とそんな事ができないように麻薬中毒にしてやる。」と強制的に注射されて開放された。
良子は帰ってから慌てて菊子に電話した。
「私の事を守ってくれるんじゃなかったの?やくざに拉致されて、麻薬を注射されたじゃないの!私、もう駄目・・・。」と興奮していた。
あらかじめ意思波でマーガレットから連絡を受けていた菊子は、「落ち着いて。その話は聞いています。注射器の中身はビタミン剤にすり替えていたので、良子が注射されたのは麻薬ではなくビタミン剤よ。安心してね。」と説明した。
良子は菊子の言葉で我に戻り、「いつの間に摩り替えたの?」とどうやってすり替えたのか信じられませんでした。
菊子は、「だから、良子に気付かれないように守っていると言ったでしょう?大丈夫よ。」と安心させた。
その後も、良子はやくざに拉致されて注射されたが、禁断症状が現れない為に頭に来たやくざは、「もう良い。ぶっ殺してやる!」と拳銃を構えると、良子は腰を抜かした。
良子は両手で頭を抱えて、「助けて~殺さないで~」と泣きながら哀願する中、丸西組の組員は拳銃の引き金を引いたが、弾丸が装填されていませんでした。
やくざは、「そんな馬鹿な!先程確認した時には弾丸が装填されていたのに何故だ!」と不思議がっていた。
その時、良子の耳元で、「何しているの?今の間に逃げなさい。」と聞こえた。
良子がドアを開けて逃げるとドアが閉まり、やくざが、「こら!待たんかい!」とドアを開けようとしても、強力な磁気で開きませんでした。
やくざは、「こら!良子!ドアを開けんかい!」と怒鳴っている間に良子は逃げた。
良子は自宅に戻り、誰もいない部屋の中で、「私を守るという事は、今も近くにいるの?あんな事は普通の人にはできないわ。あなたは何者なの?」と誰もいない部屋の中で呼び掛けた。
すると天井から流動体の物質が垂れてきて女性の姿になり、「私は、菊子さんのお母さんの親友のモミジといいます。私はいつもあなたの傍にいますから安心して下さいね。」と安心させた。
良子は、「私の父は、あいつらにやられて介護施設に入っていますが、母は働いています。母もあいつらに襲われないか心配です。」と母の事を心配していた。
モミジは、「その話も聞いています。お母さんの近くには、娘のマーガレットが、良子さんの事を私に任せて行っていますから安心して下さい。」と説明した。
良子は、その他にも何か聞こうとするとモミジが、「良子さんが気にならないようでしたら、私はあなたの服に変身しても良いわよ。そうすれば、いつでも話ができるでしょう?そのほうが、私も良子さんにアドバイスしやすいので、お互いの為に上着に変身しましょうか。」と提案した。
良子もそのほうが安心できるので、外出時はモミジが良子の上着に変身して護衛していた。
その後モミジは良子と外出時には、「丸西組の組員に車で尾行されています。階段のある道を通って帰りましょうか。」とか、「この先で丸西組の組員が待ち伏せしています。そこの角を左に曲がって、遠回りして帰りましょうか。」などとアドバイスしていた。
次回投稿予定日は9月23日です。




