第四十三章 菊子の親友、やくざに絡まれる
菊子達が、勉強にクラブ活動にと学校生活を楽しんでいたそんなある日、陽子の父親が勤務先に車で通勤途中、飛びだしてきた赤ん坊を抱いた女性をはねた。
すぐに病院に搬送したが、女性は意識不明の重体で、赤ん坊は女性が確りと抱いていた為に奇跡的に軽傷で済んだ。
女性と一緒にいたやくざ風の男から、「どうしてくれる!」と怒鳴られた。
その後毎日、勤務先の病院にまで押し掛けて来て、大声で陽子の父親や院長を脅迫していた。
陽子の父親も、女性をはねてしまった弱みから、追い返す事も警察に通報する事もできずに困っていた。
患者からの苦情もあり、患者も少なくなってきた為に、陽子の父親は止むを得ず、病院に辞表を提出して開業する事を考えていた。
しかし開業前から、やくざが自宅にまで押し掛けて来て近所の評判も悪く、開業しても患者が来ないと考えて、事故の後処理を最優先にしてやくざと話合う事にした。
陽子の父親は、やくざから逃げる意味もあり、毎晩バーなどで酒を飲み泣いていた。
やくざは、自宅に押し掛けてもいつも不在だった為に、どこへ行っているのか張り込みをして、バーでやけ酒を飲んでいる事に気付いた。
やくざは、そのバーにやくざの金融会社社員を行かせて、陽子の父親に接近させた。
バーで何度も会い親しくなった男性が、陽子の父親の様子を見て相談に乗ってくれた。
陽子の父親は、「毎日やくざに金銭を脅し取られて困っています。この状態が続けば、生活費にも困ってきます。」と相談した。
その男性は、「それは大変ですね。取り敢えず、私が金銭を用立てます。私も金の成る木を持っている訳では御座いませんので、警察に相談する事をお勧めします。」と金銭を用立ててくれた。
陽子の父親も、警察に行く事を勧めてくれた為に悪い人ではないと信用して借金する事を考えていた。
陽子の父親は、親戚から借りると噂が親戚中に広まる可能性がありプライドが許さず、飲み屋で何度も会ったその男性から無利子、無担保期限無しで借金した。
しかし、その男性は、やくざの金融会社の社員で、無利子、無担保、期限無しというのは嘘で、借金の証文は改竄されていた。
反論したが通用するような相手ではなく、「借りたものを返すのは当たり前の事だろうが!金を返せないのなら、担保の陽子さんを連れて行くよ。」と強要された。
そうです、それが目的でした。大富豪のスケベ爺が、美人の上、陸上部で鍛えた引き締まった健康的な体の陽子に目を付けて、やくざに大金を支払い仕組んだものでした。
陽子の両親は、「それだけは勘弁して下さい。」と頼んだ。
金融会社の社員は、「何も誘拐したり、風俗に売り飛ばしたりする訳ではなく、結婚するだけですよ。女の幸せは結婚だろうが!俺達は親切に、その手伝いをしてやろうというのだぜ。相手は大富豪だから玉の輿じゃないか。断る手はないと思うぜ。女は十六歳になれば法律的に結婚できるので、それまで同性するだけだから、結婚生活のリハーサルだと思えば何の問題もないだろうが。」と説得した。
陽子の両親は、「急にそんな無茶な。」と抵抗した。
金融業者は、「体一つで来て頂ければ、後は相手が全て準備する。あんた達は何の準備もしなくても良いのだから、急でも問題ないだろうが。返済期限は今日までだから、金を返せないのなら陽子さんを連れて来い。」と強要した。
陽子の両親が、「しかし娘は中学生・・」と反論しようとすると金融業者は、「しかしもかかしもあるか!ガタガタ抜かせば無理にでも連れて行くぞ!」と凄んだ。
やくざの金融業者が、陽子の父親に近付いて知合いになり、交通事故も、そのやくざ関係の風俗嬢で、出産後間もない彼女に銃を突き付けて、「死にたくなかったら、あの車に赤ん坊を抱いて飛びこめ!その方が赤ん坊も助かる可能性が高いぜ。」と脅迫して、故意に飛び出させたのでした。
その女性も、この男は本当に人殺しするような性格だと知っていた為に、せめて赤ん坊だけでも守ろうとして、確りと赤ん坊を抱き締めて、走ってくる車の前に飛び出して、自分の頭より赤ん坊を必死に守ったので、頭部を強打して意識不明の重体になった。
金融業者は、陽子の両親と話をしても平行線だった為に、「退け!」と突き飛ばして、土足で家の中へ入って来た。
陽子の両親が止めようとしたが、やくざの一人が二人の胸倉を掴み、「邪魔するな!」と壁に押し付けて動きを止めていた。
陽子の母親が、「やめて~」と泣きながら哀願したが、やくざは家探しを始めた。
やくざの声が大きく、陽子の部屋まで話が聞こえていて、足音からやくざが家の中に入って来た事が解った。
陽子は時間稼ぎの為に部屋を施錠して、窓から裸足で逃げ出し、走りながら菊子の携帯に泣きながら電話して助けを求めた。
陽子の家の中を、数人のやくざが手分けして捜していると、二階で施錠されている部屋を見付けた。
ドアに体当たりして壊して中に入ると、中学生の制服がハンガーに掛けていた為に陽子の部屋だと解った。
部屋はもぬけの殻で、窓が空いていた為に、二階のその窓から覗くと、パジャマ姿で走って行く少女を発見した。
そのやくざは家の中にいる仲間に、「おい!窓から逃げて港の方へ走って行ったぞ!」と数人のやくざが追い駆けた。
陽子から話を聞いた菊子が直ぐに駆け付けて、陽子を港に浮かべておいたUFOに乗せた。
菊子は、「この乗り物は、外部から私がリモートコントロールします。陽子は何もしなくても良いよ。取り敢えず潜らせますが、沈没ではないので心配しないでね。後は私が話を着けます。」と説明して、UFOを港に沈めた。
陽子は、この乗り物がUFOだとは全く気付かず潜水艇のようなものだと思っていた。
菊子は、陽子が窓から逃げ出した事に気付いて追い駆けて来たやくざの金融業者に、陽子はどこに行ったのか尋ねられた。
「君ぐらいの歳の女の子が、今こっちに走って来たが、どこへ行ったか見なかったか?」と聞いた。
菊子は、「彼女は私の同級生で、やくざに騙されて追い駆けられているというので私が安全な場所に匿いました。あなたが騙したやくざですか?話があるのでしたら、代わりに私が聞きます。」と返答した。
金融業者は、“陽子は携帯で電話しながら逃げて行ったな。この女に電話していたのか。この女が自転車でここまで来て、陽子を自転車で逃がしたな。陽子の居場所はこの女に聞くしかないか。”と思いながら、「あんたが身代わりになるのか?まあ良いだろう。取り敢えず事務所まで来い!騙してない証拠を見せてやるから、解れば彼女の居場所を教えろよ。お前にも手間を取らせた責任を取って貰うからな!」と菊子も拉致しようとした。
やくざは、“この女は風俗にでも売り飛ばすか。まだ若くて美人でスタイルも良いから高く売れそうだな。予定外の収入だな。”と菊子を連れて事務所に行った。
金融業者は、陽子の居場所を聞けば直ぐに行くつもりで、事務所の奥には入らずに入口付近で立ち話をした。
菊子は事務所で、金融業者から借金の証文を見せられた。
菊子の透視力は、テレジア星人ほど強くありませんが、陽子から話を聞いていた為に、改竄したかどうかは直ぐに見抜き,その事をやくざに告げた。
入口付近で話をしていた金融業者は、証文を事務所の奥にいる金融業者に渡して、上半身裸になり、体中の刺青を見せながら、「おい!こら!なめとんのか!ぶっ殺されたくなかったら、あの女の居場所を教えろ!」と菊子に詰め寄った。
菊子は、「ぶっ殺すだなんて、そんな無茶すると噛み付くわよ!」と警告した。
その刺青の金融業者は、持っていた服を床に叩きつけて、「噛み付くだと!上等じゃねえか、噛み付けるものなら噛み付いてみろ!」と詰め寄った。
菊子は、「それじゃ、遠慮なく。」と言った途端に、菊子の体が変形して、事務所が壊れないように、人間より少し大きいティラノサウルスに変身した。
金融業者は自分の目を疑い、身動きできずにいると、菊子が金融業者の右腕に噛み付いた。
金融業者の右腕から血が噴き出し、「ヒエー、た、助けてくれー」と悲鳴をあげるなか、菊子は首を左右に振り、金融業者を振り回して、腕を噛み切った。
金融業者の腕は、肘と肩の間で切断されて、周りには夥しい出血があり、出血多量でショック状態になった。
菊子は恐怖心をあおる目的で、切断された腕を咥えて故意に、“ドスンドスン”と大きな足音を立てて、事務所の奥に迫った。
他の金融業者は驚きながら、銃や日本刀で対抗する者や、腰を抜かして失禁した者など、反応は様々でした。
ティラノサウルスに変身した菊子は、腰を抜かしている金融業者の胸に、切断された腕を落とした。
その金融業者も悲鳴を挙げて失禁した。
菊子は銃を発砲している金融業者に、「そんな物は、私には通用しないわよ。」と証文を持っている金融業者の所へ、「あんたも腕を噛み切られたくなかったら、その証文を渡しなさい。」とソファーやテーブルを踏みつぶして向かった。
その金融業者は発砲しながら、「来るな、化け物!」と叫んだ。
菊子は、「化け物とは失礼ね。せめて宇宙人だと言ってよね!さあ、早く証文を渡しなさい!噛み付くわよ。」と迫った。
金融業者は、しばらく考えていると菊子が、「ガオー」と吠えながら口を開けて噛みつこうとした。
腰を抜かして、銃も日本刀も通用しない為に、菊子には敵わないと判断して諦めた。
「解った、渡すから助けてくれ。」と証文を差し出して命乞いした。
証文を受け取った菊子は人間の姿に戻り、「この人は出血多量で助からないと思います。死体はあなた方で処理して下さい。警察に通報しても、宇宙人やティラノサウルスに襲われたなんて誰も信用しないわよ。やくざ数人が一人の女子中学生に襲われたと言っても同じ事で精々、“嘘を吐くなら、もっと上手い嘘を吐け!”と殺人罪で刑務所か精神病院かのどちらかね。まあ相手が悪かったと諦める事ね。今後、陽子に手を出したらどうなるか解っているわよね!また死人が出るわよ。死にたくなかったら陽子から手を引きなさい。」と証文を持って、やくざの事務所を出た。
その後菊子は陽子の所へ戻り、陽子と一緒に家に帰り、家族にこの証文で間違いない事を確認した上で目の前で破った。
最後に菊子は、「あの金融業者には釘を刺しておきましたので、もう二度と来ません。もし来たら、私の名前を出して、バックに私がいる事を伝えて下さい。」と安心させた。
陽子の父親は、「中学生の菊子さんに聞くのは可笑しいですが、私がお金を借りたのは事実です。このままで良いのでしょうか?」と聞いた。
菊子は、「私も法律の事は良く解りませんが、証文は業者が勝手に改竄したのでしょう?改竄した証文は無効ではないのですか?心配でしたら、一度弁護士に相談されればどうですか?証文は改竄されていた為に破ったと説明すれば良いですから。」と返答した。
陽子の父親は、「そうですよね。無効ですよね。しかし菊子さんは冷静に判断できるのですね。」と感心していた。
菊子は、「そんな事はないですよ。お父様は当事者だからだと思います。例えば将棋でも、対戦している人より傍で見ている人の方が良く解るでしょう?そんな経験はありませんか?ですから困った時には、信頼できる人物に相談すれば、案外簡単に解決する事もあります。」と助言した。
陽子の父親は、「そう言われて見ればそうですね。今後とも、陽子の信頼できる人物として陽子の事をお願いします。」と依頼した。
菊子は、「解りました。今後とも信頼できる親友として、お付き合いさせて頂きます。」と返答して帰った。
陽子は、菊子が喧嘩に強くても、何人ものやくざ相手では敵わないだろうと思い、てっきり、菊子は潜水艇を持っているような、大富豪の令嬢で、お金で解決したものだと思っていた。
菊子が帰った後に、その事を両親に告げて、「菊子が証文を持っていたという事は、お父さんが借りたお金も菊子が返したのではないの?証文もなくなった事だし、相手が何も言ってこなければ、お金の事は気にしなくても良いんじゃないかしら?」と両親と雑談していた。
まさかティラノサウルスに変身して、金融業者の腕を噛み切ったとは夢にも思っていませんでした。
菊子の変身能力は、テレジア星人ほど自由自在には変身できず、両手両足に頭というように、基本的に人間と同じ形状でないと変身できませんでした。したがって、ティラノサウルスには変身できても、タコやイカには変身できないのです。
金融業者の事件以来、陽子と菊子は益々仲良くなった。
陽子は、“いざという時に菊子は頼りになる。”と思い、菊子は、“自分の体の中には半分テレジア星人の血が流れている為に他の人と違う。もう二度と一人で孤立したくない。陽子と幸枝はやっと見付けた親友で手放したくない。”と思い、夫々の思いで益々仲良くなっていった。
陽子も幸枝も学校では明るく活発的で、色んな事に口を出すお節介な性格で、その性格から不良に、「出しゃばるな!ピーチクパーチクと五月蝿い三人娘だな!」とよく因縁を付けられた。
しかし二人といつも一緒にいた菊子が、「あんたが悪いんじゃないの。あんたこそ黙りなさい!」と不良の前に出た。
その不良は、「何だと、女だと何もされないと思っているのか?」と菊子の胸倉を掴んだその手を、逆に菊子が捩じ上げた。
その不良は、「痛~お前、なんて馬鹿力なんだ。離せ!馬鹿やろう!」と怒っていた。
菊子は、「あれ?今迄の強気はどうしたの?今後、もう二度と悪い事はしませんと約束して謝るのなら許してあげるわよ。」と笑っていた。
その不良は、「解ったから離せ!」となんとか菊子から逃れようとした。
菊子は、その不良の態度からして、まだ解ってないと思いましたが、これ以上続けると陽子や幸枝がリベンジされるかもしれないと判断してその不良を解放した。
その不良は菊子を睨みながら逃げた。
このように、何かあればその都度菊子が不良対策して陽子と幸枝を守っていた。
次回投稿予定日は9月11日です。




