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シーラの逆襲(仮)  作者: コー
2/2

謎の少女



夕日が沈みそうなころ、家に着いた。学校が終わり、すぐに帰ればこんな時間にはならないのだが、今日は学校で用があり、遅くなった。

「ただいま戻りました」

「おお、シーラ。遅かったな」

フィルダント家の主人、つまりは親だ。サルート・フィルダントがスーツ姿で玄関に立っていた。

「お出かけですか?」

「ああ、野暮用でね。もう夕飯だからリテネのところに行くといい」

リテネはフィルダント家の使用人である。主に食事を担当している。

「お気を付けて」

「行ってくるよ。帰りは遅くなるから、テナにも言っておいてくれるかな」

「分かりました」

ガチャ、という扉の閉まる音を聞いた後、靴を脱いでキッチンの方へ向かった。フィルダント家の屋敷はとても広く、移動が大変である。

「リテネさん、なにかお手伝いしましょうか」

「ああ、シーラ様。おかえりなさいませ。もう夕食は出来ましたのでお嬢様をお呼びしていただけますか?」

「はい」

リテネさんは21歳のまだ若い女性だ。使用人のドレスがよく似合っている。

キッチンから少し歩き、あるドアをノックする。

「テナハ、夕飯だぞ」

「‥‥‥分かった」

少しの間をおいて返事が返ってきた。ぶっきらぼう、というより素っ気ない。

テナハ・フィルダント。妹にあたる。フィルダント家の本当の子供である。

「先、行ってる」

正直テナハには好かれてはいない。フィルダント家の本当の子ではないからだろう。



「ご馳走様でした」

「シーラ様、お口に合いましたでしょうか」

「はい、美味しかったですよ。いつもありがとうございます」

豪華な食事を平らげた後はいつも感心する。一人でこの食事を作るリテネさんは相当なものだと思う。

「‥‥‥ご馳走様」

「お嬢様、お口に合いませんでしたか?」

「‥‥‥別に」

また、素っ気なくテナハは答える。リテネさんにも心を許していないのだ。

「テナハ、今日は学校どうだった?」

「‥‥‥関係ないでしょ」

「そんな事はないだろう。妹なんだから」

バンッと机を叩く音がした。

「認めてないから」

そう言ってテナハは早足に部屋に戻っていった。

「お、お嬢様」

「リテネさん、大丈夫ですよ。俺の問題ですから」

「し、しかしシーラ様‥‥‥」

「リテネさんも少しは休んで下さい。では部屋に戻っています」

テナハも問題だな‥‥‥。

簡易なベッドに机、本棚がある殺風景な自室に戻るとベッドに倒れこんだ。

無力だ。無力、無力。

心ではこの世界をどうにかしてやりたいと思っているが、何も出来ない。また一日、一日と終わり、こうやって自分という人生を終えるのだろうか。

「‥‥‥そうだ」

ふと思い出してパソコンを起動させる。最も、パソコンといっても実物があるのはキーボードだけだ。電源を入れるとキーボードから画面がホログラムで出現する。

キーボードを操作し、ある画面をだす。

「今日は50万ソーツか‥‥‥」

企業と企業の関係から取引でソーツ、つまり金がどれだけ動くかを予測し、その情報を他の企業に売る。通称MYと呼ばれる行為である。

何かを、何かをしたい時に出来ないというのは避けたい。だからせっかく頭が良いんだ。使わなければ勿体無い。

今の裏口座には約七千万ソーツの金が入っている。が、使う当てはない。

「中々の才能だな」

「ッツ?!」

女の声?!

「お前、面白いな」

そいつのプラチナブロンドのロングの髪が揺れる。その目は真紅で不釣り合いだ。

机の引き出しに入れていた小型拳銃を素早く手にする。

「貴様、誰だ。どこから入った。言え」

「そう焦るな。そんな物騒なものはしまいたまえ」

「いいから言え。さもなければ撃つ」

拳銃のグリップをさらに強く握る。この拳銃を持ったのも久しぶりだ。

「‥‥‥撃てるのか?お前に」

「馬鹿にするなよ」

「挑発じゃない。質問だ。撃てるのか。お前に。私が」

「撃てるさ。言え、貴様は何者だ」

「‥‥‥ふふ」

その整った顔が微笑む。しかし、それを可愛いとも綺麗だとも思わなかった。その笑顔のまま言葉を続けた。

「お前、面白いな。いや、馬鹿だな」

以前と顔に笑みを浮かべたままそいつは喋る。

「話をそらすな。言え」

「‥‥‥フフ、そうだな‥‥‥宇宙人だ」

「‥‥‥ク、クハハハ!どこまで馬鹿にするつもりだ!」

今までにあったことのない人種だ。本当に引き金を引こうと思った。が

「取り敢えず話を聞け」

その言葉を聞いた瞬間、自分の目が、いや、脳が、ここにあるはずのない情景を映した。


『ねえ!母さんは?!父さんは?!どこなの?!』

『ははは、シーラ。私達が両親じゃないか』

『違う!どこだよ!返してよ!』

『あいつらは犯罪人なんだ。悪い人なんだよ』

『違うだろ!お前らが、お前らがやったんだろ!』

『チッ、いいから言うこと聞け!』

『痛っ‥‥‥くそ、殺してやる!殺す!』

『言うことだけ聞いてればいいんだよ!あいつらを吊るし上げるのにいくら払ったと思ってるんだ!』


「やめろ!」

「ほう。自力で抜け出せたか」

頭が、目の奥が、痛い。

「お前‥‥‥俺に何をした」

「さあな。私は宇宙人、だからな」

そう言い、こいつはまた笑みを作る。

「ク、ハハハハハ。ハハハハハ!面白い!面白いじゃないか‥‥‥」

「んん、壊れたか?」

「‥‥‥まさか‥‥‥お前、名前は?」

こいつの真紅の目を見る。その顔はまた、不思議な笑みを浮かべる。

「テンだ。テンと呼べ」

テン、か。

つまらない、何もなかった日常に、非日常がやって来た。

目の前にいる少女は、また、笑った。その真紅の目は、何を見つめているのかは分からなかった。






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