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取り調べ

加筆修正しました。

 レッドは右手に魔力を集中させると腰を落とし一気に間合いを詰めた。

 身体強化によって上がった脚力により容赦なく蹴られたコンクリートの地面は抉れ、その勢いに任せてレッドは一気に懐に飛び込む。


「――ッ!?」


 そのまま拳を打ち込もうとした瞬間、悪寒がしてレッドは咄嗟に上体を反らした。

 ただのカンだったが、それが功を奏した。

 レッドが上体を反らしたのと全くの同タイミングで夜叉の左手から手刀が恐ろしい速度で切り払われたのだ。


 それを見送ると直ぐに追撃と言わんばかりに夜叉は残った右手で大太刀を切り払う。


 レッドはそれを見て拳を解くと手刀に切り替え、迫る刃を手刀とそれを覆う魔力の流れのみで上に受け流す。


「【流水(りゅうすい)】」


 七星騎士の一人にして武術を得意としていたシエンという男の技だ。


 流れる水が如く掴ませない動きで流す受け身の技。刀身に手刀を滑らせながら、その勢いを借りて上体を捻る。そのまま地面に手を着きその手を支点に全力で足払いを掛けた。


「グゴッ……!?」


 強烈な破裂音にも似た音と衝撃を受けた夜叉は、一瞬の拮抗も許さず宙へと浮く。その一瞬のうちに起き上がり両腕を引き絞るとそのまま強烈な掌底を腹に叩き込んだ。


「【崩龍砲(ほうりゅうほう)】」


 掌底を打つ為に踏み込みを一つ。その地鳴らし一つで部屋が揺れる。

 後に続くように打ち放たれた両手の掌底は、大気を揺らし衝撃波だけで辺りの壁に亀裂が走った。

 単純な威力だけでも相当な物だが、|この程度では龍は倒れない(・・・・・・・・・・・・)。

 掌底と同時に高圧縮した魔力を体内に叩き込むことで、頑強な鱗で体表を覆っている龍が相手でも容赦なく内部を破壊する。

 そんな一撃は、夜叉であっても例外なくその身体を問答無用で蹂躙する。


「ガァッ……!!」


 夜叉は小さく呻き声を出しながら吹っ飛び、数十メートル先の壁に深くめり込んだ。

 三メートルばかりの巨体を吹き飛ばした後だというのに息ひとつ乱していないレッドを見て少年は感心したと言った様子で右手を前に出す。

 そこに込められるは先ほどの倍近い魔力。


「させるか」


 レッドが召喚される前に詰めようとした瞬間、目の前に二体の夜叉が現れる。先程とは打って変わってノータイムで召喚されたそれは、先程と同じく大太刀を持った夜叉。それと金属がはめ込まれた特殊なグローブを付けた夜叉だった。


 グローブを着けた夜叉が完全に不意を突かれたレッドの腹に強烈な拳を叩き込む。


「ぐっ……!」


 あまりの衝撃に身体が数センチほど浮かび上がり、身体がくの字に折れ曲がる。その瞬間に、お返しと言わんばかりに夜叉が大きく腕を振りかぶる。


「なろっ……【エアウォーク】!!」


 鍵言葉だけで発動されたそれは風を操る魔法。本来の用途は、足下に魔力によって収束させた空気を滞留させ足場とする魔法だ。

 だが、本質はそうではない。所詮これは風を集めて固める魔法だ。だから、こんな応用だってできる。


 エアウォークによって仮想の地面を直ぐ手元(・・)に作ると、それを土台に倒立。そのまま腕の力のみを使って夜叉を跳び越して距離を取った。

 そのまま攻撃しても良かったのだが、大太刀を持った夜叉が抜刀して構えていて打ち込みに行く隙が無かったのだ。


 徒手空拳では限界がある。苦手ではないがやはり得物があった方が良いだろう。ならば今できるのは魔法か。


 レッドが魔法をメインに切り替えようと考え出したところでその部屋に別の人物が訪れた。


 ――――バチッ


「あれ? (てん)さんなにやってんのー?」


 それは先程会った二人組だった。



「ちょっとした暇つぶしだ、気にするでない。よかったな、お主。時間切れだ」


 奏と優が部屋に来たのと同時に夜叉は姿を消していた。

 天と呼ばれた少年は改めてレッドに向き直る。


「己の名は毘沙門(びしゃもん)、中々楽しめたぞ異界の人間。また会うのを楽しみにしておる」

「俺の名はレッドだ。レッド・アルキス。……って異界の人間ってお前気づいて」


 レッドが言い終わる前に毘沙門は姿を消していた。

 なんだったんだと思うと同時に身体に何かが高速で巻き付く。


「【縛式 鎖縛拘(ばくしき さばくこう)】」


 奏によって発動された魔術は前回よりも鎖が多いだけでなくより濃密な魔力が練られていてそう簡単には切れなくなっていた。


「しまっ!? ……またか、くそ」

「さーて色々聞きたいことがあるからねぇ、今から楽しい取り調べだよー?」


 優が奏の肩に手を置いたのを見ると閃光と共に姿を消した。



 取調室。


 そう札が着けられた部屋にレッドを取り残して数分後、報告を済ませた奏と優はそのまま取り調べを行うこととなった。

 任務の詳細が明かされていないことや今回の任務の不審な点が多かったところから気になると、上役を無理やり押し切って取り調べを行うことにしたのだ。


「それで? レッド、お前は何者だ。どこで魔術を習った? 戸籍は? 住居は? 目的は? 洗いざらい吐け」


 優が威圧しながら言うのを横でカツ丼をむしゃむしゃしながら奏は聞いていた。本来レッドに出された物だったが机に置かれるや否や奏が手に取り無言で食べ始めたのだ。

 優は今日何度目かの溜め息を吐きながら緊張感のない奏の頭を一発叩くと優は気を取り直してレッドを見つめる。


「だから、さっきから言ってるだろ。俺は此処とは違う異世界から来た元勇者だ。マジュツは使えないが魔法なら使える。目的はこの世界での定住だ。ってかそんなことより師匠はどこだ!」


 話にならんと優がイライラしていると奏が不意に口を開いた。


「ひひのひひょうっふぇ」

「飲み込んでから喋れ馬鹿」


「んぐ……。君の師匠って優と戦ってた女の人?」

「あぁ、師匠は俺に着いて来ただけなんだ。あの人はアッチの世界に必要な人間だ。向こうにも大切な人たちがいるはずなんだ……。だからアッチになるべく早く帰してやらなくちゃならない。頼む、師匠の居場所を教えてくれ」


「んー……悪いけど君の師匠は戦いの最中に突然消えたんだよねぇ…。だから私達も居場所は分からないなぁ」


「……は?」

誤字脱字、感想等があればよろしくおねがいします。

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