魔術協会
ようやく休みに入りました。
今年もあと僅かですね。
加筆修正しました。
時を遡ること二時間前。
日本の首都、東京の地下にある巨大な施設。
名を、【世界魔術協会 日本支部】
イギリスに本部を置くその組織は、世界中で確認される魔術的な災害を未然に防いだり抑えたりする為に活動している。
ここ日本支部でも日本中から魔力を扱う術を持った人間が集い、その目的のもと日夜活動していた。
つい先ほど、何の前触れもなく東京の街から少し離れた場所にある山の中腹辺りで強い魔力が観測された。その原因を探るため、データの収集や衛星写真での確認など情報収集が行われていた。
解析班の人間がデータや画面と格闘している中、ある少女が一人休憩室のソファーでぼーっとしていた。
少女の名は佐倉 奏。
肩まである髪を一つに括ったポニーテールに整った顔の少女。
歳は15~17位だろうか、灰色のパーカーに紺のデニム姿で特に何かあるわけでも無く虚空を見つめていた。
「……暇だなぁ」
奏はただ退屈していた。
最近魔術絡みの大きな事件や事故は起きていないだけならまだしも、巨大な怪異の出現すらなかった。小さな妖魔が数体発生しては駆逐されている程度でこの辺りはいたって平和だ。
それ自体は別段おかしなことではない。魔術が普及していない世の中で妖魔が発生しうる力場など限られているからだ。
その理由から今回の件は突発的な自然現象とは考えづらく、支部の人間も人為的な要因を疑って必死に調査をしている訳だが、現状奏に割り振られた仕事は無く、ただ暇を持て余していた。
「ん?」
不意にポケットの中から感じる振動。携帯のバイブレーションが鳴っているようだ。ポケットからスマホを取り出すと電話を取る。
「はい」
「もしもし、協会の者です。至急協会の方に戻って来てもらいたいのですが」
「あぁ、今休憩スペースに居ますよー」
「なら至急神代さんと合流してください。現在協会で観測された魔力源の調査をお願いします。これ以上の詳しい内容は神代さんからお願いします。場所は――」
どうやら現地調査に駆り出されるらしい。
退屈していたところだし彼女の固有魔術は移動に向いている魔術だ。
『脚』として使われることはよくあることだ。
奏はゆっくりと立ち上がると内心今回の件で暇つぶしが出来そうだと期待していた分張り切って調査に向かう相方の待つ部屋へと移動した。
◇
奏が部屋に着くとそこに居たのは紺の和服を着た金髪の長身痩躯の男。
腰には一振りの刀。現代に迷い込んだ侍にその辺のチンピラを足したような男だが、奏は彼の事をよく知っている。
名を神代 優
日本支部所属の特級魔術師にして協会屈指の剣術を操る男だ。
「おまたせー」
遊びの待ち合わせ場所に来たようなテンションの奏にため息を吐く。
「……相変わらず緊張感のない奴だな、お前は」
「まぁ優が着いてるからねー」
あはは、と笑う奏に優はまたため息を一つ吐いた。
「……たかが現地調査に特級を二人出すんだ。今回の任務は覚悟して行くべきだと俺は思うがな」
先ほどまであっけらかんとした様子の奏だったが、言われて確かにと考える。
自分は『脚』として使われることが多いから良いとして、優を出す理由が無いのだ。
それだけ今回観測された魔力が多いのだろうか。
「あー、そうだ。私は特に詳しく説明されてないんだけど、任務について優は何か聞いてる?」
「いや、場所と内容だけだな。ただ、今回の件の原因が妖魔であるなら容赦なく切り捨てて人ならケースバイケースだそうだ」
優が今回のような内容の任務で駆り出されることが無い訳ではない。だがそれにしてもキナ臭い。普通は人を送らなくても出来る範囲で周辺を隈なく調査し、最低限の目星を着けてから魔術師を送り込む。そうでなければ、現地で何が起きるかも分からない上に、貴重な人材を失いかねないからだ。
それにこの少人数では調査の時間も余分にかかってしまうだろうに。
「随分適当な任務だね……。まぁそんな内容の書類で任務が回ってくるってことは上層部が絡んでるんだろうし、下手に詮索しないで仕事しますかー」
「まぁそれがいいだろう。時間があまりない、さっさと行くぞ」
「あいあいさー」
そう言って奏が優の肩に触れると、その場に閃光を残して二人は姿を消した。
誤字脱字、感想等があればよろしくおねがいします。
よいお年を!




