改良依頼
ちょっとだけ更新
「で、それでまた僕のところに来たわけか」
ズズッとコーヒーを啜る深緑色の短髪の少女。どこからどうみても知り合いにそっくりな姿は何度会っても慣れそうにない。
彼女――秋はコーヒーを机に置くとその綺麗な深緑の髪を掻きながら唸った。その目には僅かに隈が出来ており、最近寝不足か不眠なのが見てとれる。
「あぁ、機能は問題なかったんだけどな。如何せんこれじゃ満足に戦えない」
俺は自分の首にかかっているペンダントをトントンと叩く。自分では外せないパッと見ただのアクセサリーだがその実俺の魔力を制限付きで拘束する拘束具だ。
前回の戦いの時に生じた問題を解決できないかと思って来たのだ。……いやまぁそういう注文を付けられる身分ではないのだけど。
「うーん、確かに仕様上そうなっちゃうのは仕方ないんだけど……ふわぁ」
唸りながら大きな欠伸を一つ。頑張って噛み殺そうとしたみたいだが洩れてしまったようだ。
「大丈夫か? 目の下に隈が出来てるぞ」
「んー、大丈夫大丈夫。これの改良に比べたら寝不足なんて問題ないよ。……あぁ、心配しなくても自分で作ったものには責任持つさ。どうにかしてみよう」
そう言いながら何処からか紙を一枚取り出して何かをサラサラと素早く描いては細かく文字を入れてバツを付けていく。
「何してるんだ?」
「パッと考えてみて出来そうなところを紙に起こして確認してる。僕の【空間創造】は原理も含めて全て理解してないと創れないからね。ただの思ってるものを生み出す便利魔術じゃないんだよ」
「なるほど。で、出来そうか?」
「うーん、難しいね。魔法と魔力放出をキチンと差別化して認識できるような仕組みを新しく考えないといけないからなぁ」
「誰かが横で判断できたらいいんだけどな」
特になにも考えずに俺が呟く。
「なるほど、ソイツは名案だよ」
ハハッと軽く笑い飛ばしながら皮肉を返された。どうやら事はそんなに簡単では――
「……いや、確かに名案だ。出来ないことも……無いね」
ふと思いついた様に顔を上げると跳ねるように立ち上がり、後ろにあった机の引き出しを開けて漁り始めた。
少ししてソコじゃなかったのか今度は沢山のファイルを収めている棚を漁り始める。
どうやら当てがあるようだが見つからないらしい。
……まぁ気長に待つとしよう、どうせ暇だしな。
未だに湯気をたてているコーヒーに手を伸ばしズズッと一口啜る。うん……やっぱり苦いなコレ。よくこんなもの常飲できると尊敬する。
「あったあった。うん、少し調整したらどうとでもなるね。二日後には渡せそうだが……レッド、いつ協会を立つんだい?」
俺がコーヒー相手に顔をしかめているうちに探し物は見つかったようだ。
「えっと……転入があと六日後だから五日後か?」
「奏が居るから前日から移動しなくても問題ないね。まぁどっちにしても余裕だ。じゃあ二日後にもう一度来てくれ、その時に渡す」
「あぁ、頼むよ。ありがとう」
「いいさ、僕も良い経験になるからね」
それから少し話をしたあと俺は部屋を後にした。
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