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異世界転移

加筆修正しました。

 光が収まったのを感じ、目を開けるとそこはさっきと変わらず森の中だった。

 いや、厳密には同じではない。精霊たちの遊び場と比べると極端に魔力密度が――


「なんだ……ここ」


 ――薄いなどというレベルではない。無に等しいのだ。


 通常そんなことはあり得ない。どんな場所にも人や魔獣の類いは存在し、それらは魔法や呼吸等によって魔力を霧散させる。それによって放出された魔力は魔素となって空気中に溶け込むように散々になるのだ。

 決して自然に消えることはなく、何かの要因によって消滅する以外で空気中の魔力密度が薄くなる事などない。

 この場所の存在自体が、ここが異世界であると物語っているかの様だった。


「ここが異世界か……。ふむ、やたらと魔素が薄いな」

 どうなら師匠も俺と同じ思考になっていたようだ。って、今はそんなことよりも言うべきことがある。


「師匠!! なんでついて来たんですか!!」


 俺は師匠に詰め寄った。

 ここに来るのは自分だけで良かったのに、どうして師匠まで来たのか。文字通り何が起こるか分からないこの場所に。


「師たる者、弟子の面倒を見るのは当然だ。それにお前は少々頭が弱いところがあるだろう? 私がいないと大変そうだと思ってな、後は私の退屈しのぎだ」

「なんですかそれ! いいから師匠にはさっさと向こうの世界に帰ってもらいますよ!」

「帰るにしても、ここではあのマジュツは行使できん。あまりに薄すぎる」


 魔素が、と言外に告げてくる。確かに此処はあのマジュツの場にはできない。……いや、俺の全魔力を注ぎ込めばあるいはと思わないでもないが、今の魔力残量は先程のマジュツで三割程度しか残っていない。どちらにせよ、今すぐに帰すのは無理な話だ。


「師匠はあの世界に必要です! どうして俺なんかの為に――」


 そこまで言いかけた時だ、師匠から静かに冷たい殺気が放たれる。


「私は私の意志でここに居る。お前の為以上に私の為に私はここに来たのだ。それだけは否定することを許さん。それにあの世界は大丈夫だ、七聖騎士が一人欠けたところで大差などない」


 殺気は直ぐに収まると師匠はフッと微笑んだ。……師匠も師匠なりの覚悟でここに来たのだろう、ならば俺からはもう何も言えることはない。だが、


「分かりました……。この件についてはもう何も言いません。ただ、帰れるタイミングがあれば帰っていただきますからね」

「考えておこう」


 俺は露骨にため息を吐くと、木々の隙間から見える光に意識を向けた。そういえば向こうでは早朝だったのにこっちでは夜だ。時間の流れ方が異なっているのかもしれない。


「とりあえずあっちの方へ行ってみませんか? 恐らく街があるでしょうし」


 現在手持ちは路銀になるだろうと持ってきた宝石三つしか持ち合わせていない。今後のことを考えると直ぐに街に向かいたかった。

 それを分かっているのだろう。師匠も二つ返事で返し、俺達は森を出て街へと向かった。




「凄いところだなこれは……」


 師匠は驚きを隠せないといった顔で街を眺める。俺だって驚いている。

 何故なら辺りには王城よりも面積は小さいが高さなら負けないくらいの大きさの細長い建物がそこら中に建っているのだ。

 それだけではなく、火も無いのに光っている丸い何かが道を照らしていたり、箱に車輪が付いた物が馬などの類の獣を無しに道を走り回っていた。

 地面もそう、土よりも頑丈で崩れにくいもので完璧に舗装されて均されている。なんというか理解できない物が大半だが、この世界の人間がとてつもなく優れた技術を持っていることがよく分かった。

 そして街に出て分かったことが他にも二つある。


 一つ目は文字が読めないが聞く分に関しては言語が通じるということ。

 恐らくあのマジュツに何か仕掛けがあったのだろうと師匠は言っていたが不思議なものだ。

 そして二つ目。

 俺達の服装はこの街ではとてつもなく浮いているということ。

 俺は背中に両手剣を差し、魔法具を内側に仕込み、かつ魔力を持って織られた戦闘用の黒のロングコートにズボンといった出で立ちだ。

 師匠も腰に直剣、俺のとデザインが少し異なるが似たような作りの青を基調としたコートにスカートだった。


 二人とも鎧は好まず、機動性重視の布地装備を基本としていたからまだ良かったが、それでも周りからかなり浮いていた。

 ……少なくとも後ろ指を指されたりコソコソと何かを言われる程度には。


「師匠……一旦街を出ませんか?」


 視線に耐えられなくなってきた俺が告げると師匠も少し顔を赤くしながら頷いた。


「……賛成だ、私も少し恥ずかしくなってきた」


 街に着いてから二時間程度しか経っていなかったが、俺達はまたあの森へと引き返す事となった。



 レッドとアイギスの二人が街に向かった頃、二人がいた森に一人の少女が立っていた。


「あんれー? ……おっかしいなぁー。……何にもないじゃん」


 彼女は首を傾げると耳に着けた通信機に触れた。


「ねぇほんとにこの辺りで合ってるー?」

『あぁ、間違いなくそこで強い魔力を観測した。周囲にいらん影響を与える前に発生源を確認し、必要であれば捕縛、殺傷しろ』

「あいあーい……、わっかりましたー」


 少女は気怠そうにため息を吐くと、バチッと音を立てて消えた。


誤字脱字、感想等があればおねがいします。

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