生徒会での一幕
レッドが協会で秋からペンダントを受け取った日から二日後。
国立魔術学園、生徒会室には二人の男女の姿があった。
転入生が来るらしい。
生徒会にその話が届けられたのはつい昨日の事だ。時期外れの転入。ここが魔術を指導する学校であるが故にそれ自体は別段おかしな話ではない。が、
「協会からと言うのは別段珍しくもないが、まさか支部長からの直筆で受け入れの依頼が来るとはな」
座椅子に深く腰掛けながら手元の書類を眺める黒髪の少年。長い間睨めっこしていた書類から目を離すと、疲れを癒すように目頭を揉みながら書類を机へと置いた。
「此方に必要書類の準備が直ぐに回って来る訳だな。これはどうあっても断れないだろう」
合点が行った。といった様子で脇に控えていた茶髪で短髪の少女が答えると同時に彼の机にコーヒーの入ったカップを置く。
「お、さんきゅ」
軽く礼を言いながらカップを手に取り一口啜る。
普段は毒舌が目立つ彼女だがこう言った気遣いが出来るあたり将来有望だなと彼は思う。
勿論口に出せば殺されかねないので言わないが。
「どうした、天継? いつもにまして変な顔だぞ?」
「いつも変みたいに言うな。そういや言葉はどうした? 冬弥は出てるがそれ以外は全員招集したはずだが」
少年――天継は苦い顔をしながらカップを置き疑問を投げかける。
内容が内容なだけに全員に周知して手伝ってもらう予定だったのだ。
「言葉はクラスの用事で遅れてくるそうだ。もう直に――っと噂をすればだな」
彼女が言い終わる前に部屋の外からバタバタと廊下を走る音が聞こえる。その次の瞬間には勢いよく扉が開け放たれ、黒髪サイドテールの少女が元気ハツラツと言った笑顔で現れた。
「ゴメン、遅れた!」
全く悪びれた様子もなく笑う彼女に天継は溜息を一つ吐くと取りあえず二人に座るように促した。
「はぁ……。もうちょっと報連相とかちゃんとしてくれ」
「私ほうれん草はお浸しが好きー」
「そうじゃねぇ……」
「ヒナちゃんは?」
「ほうれん草は苦手だな」
「コイツら聞いちゃいねぇ……」
的外れな事を言う少女――言葉に呆れるが、彼女は昔からこんな感じだった。馬鹿ではないがド天然なのだ。もはやこれは直しようが無い。だから天継は早々に諦めたし今回もさっさと話を進めることにした。ヒナと呼ばれた少女――陽南子が悪ノリしてるのはスルーだ。
「全員――っても冬弥はいないが、取りあえず揃ったな。
実は先日協会から転入生を受け入れて欲しいとの書状が届いた。これ自体は別に珍しいことでもないが、これが日本支部支部長である益田四郎の直筆よって書かれた書類だということが問題だ。これは実質断ることができないという意味を持っているのは察しが付くと思う。具体的な転入の日付は一週間後。書類の準備や受理を考えれば急ピッチで進めてギリギリだ。
時期が悪いのは分かっているが今の仕事を後回しにして此方を進めて欲しい。なにか質問は?」
スッと陽南子が手を上げる。
「生徒手帳も作成せねばならんだろう? 写真は入ってたのか? あとはクラス分けの事もある。本人の能力がどの程度か書類は来ているのか?」
「――そういえばそうだな。同封されてなかったってことは急いで連絡して送ってもらう必要があるな。よし、そっちは俺が進めておく」
「ねぇねぇ、じゃあ直接会いに行かない?」
「は?」
不意に言葉が言った。
確かに会いに行けばその場で写真も手に入るしついでに能力も見ることができるが――。
「その間は誰がこれやるんだよ」
天継が書類の山を指差す。すると得意気にふふんと笑うと堂々と
「冬弥」
「おい」
素早くツッコミを入れるとブーブーとブーイングを言いながら机に伏せる。
「だって気になるじゃーん。協会からこんな書類来たこと無いよ? どんな人なんだろうね、すっごく強かったりするのかな」
「気になるという点では私も同意だ。天継も気になっているだろう?」
「まぁ……そうだが。――よし、帰ってきたら冬弥が過労死しかねないが行くか。なんか俺も気になってきたし」
ただし、なるべく終わらせるのと行くのは明後日で日帰りだからな。と告げ、その後は大した話もなく会議は終わった。
「相変わらず言葉に甘いな」
「うるせ。まぁ神位の件もあったし丁度良かった」
事も無げに話す天継に一瞬納得してしまいそうになったが、その言葉を理解して陽南子はらしくもなく驚愕に顔を染めた。
「――――あれ通ったのか!?」
「誰が直談判したと思ってるんだ、当然だろ」
「流石と言うか何と言うか……。たまにもの凄いことをするな、お前は。
いつもそうならカッコがつくものを」
「さりげなく心抉るの止めてっ!!」
役職紹介
生徒会長:紀里谷天継
副会長:西條冬弥
書記:松葉陽南子
会計:信条言葉




