鏡合わせ
結構色んな方が読んでいただいてるみたいで恐縮です。
その口調も、
その整った容姿も、
その声すらも、同じだ。
――彼女が髪を切ったらこんな感じだろうか。
「ん? そっちの彼は見ない顔だね」
何もかもがそっくりな、見覚えのある少女はそっと微笑んだ。
◇
「アッキーに会うの久しぶりだから楽しみだなー」
鼻歌交じりにレッドの横を奏が歩いていく。その足取りは軽く、レッドを追い越しては立ち止りを繰り返していた。
「……こっちは久しぶりに牢とあの部屋以外の所に出たんだからちょっとはゆっくり歩かせてくれ」
「君が遅いだけだよ、アッキーは滅多にここに帰ってこないんだから早くいかないとまたいなくなるかもしれないよ?」
「それは困るな。……それにしてもこの施設かなり広いな」
もうかれこれ十分は歩いたかもしれない。それでもたどり着かないところをするとこの施設がいかに広いかが窺い知れるところだ。
そう、今俺は漸く仮出所のような形で檻から出ることが出来ていた。あの後アッキーなる人物に作ってもらう予定の拘束具の概要をカナデに教えると、入学の手続きやら偽造戸籍の作成やらよくわからない話を延々とされ、結局話が終わったのは一時間後のことだった。
アッキーという名を聞いてからカナデが妙にそわそわしていたんだが話をキチンと聞いていたのかが心配だ。覚えてないわけじゃないが俺では理解できない単語が多く出てきたから説明できる人間が伝えてくれた方が良いだろう。
「一応は日本にある魔術協会の本部だからねー。演習場、資料室、研究室、制御室、休憩室、大浴場、私室……etc.って具合に沢山部屋があってね、これから行くのは研究室で生存が確認されてる唯一の日本人神位魔術師が居るんだー」
「そいつがアッキー?」
「そ。寺島 秋、四人いる神位魔術師の中の一人だよ」
「そういえば気になってたんだが……特級とか神位魔術師とかって何だ?」
「あれ? 魔術階級の話はしてなかったっけ?」
俺が黙って頷くとカナデが「そうだねぇ」と少し考えてから説明を始める。
「魔術師には魔術階級――まぁ一般的には階級って略されるんだけど、階級があってね。魔術師は一定の成績を修めたり協会に実力を認められたら昇格できるんだ。で、この階級で魔術師の大まかな実力が分かるんだけど、上から順に『神位魔術師』『特級魔術師』『上一級魔術師』『上二級魔術師』『上級魔術師』『中級魔術師』『初級魔術師』だね。これらに当てはまらない、つまりレッド君みたいに魔術免許を取得していない、協会の許可無しに魔術の行使を行うことが許されてない人たちを『見習い魔術師』と呼ぶんだ。で、そもそもの魔術免許の取得をするには、いくつか方法があるんだけど……一番手っ取り早いのは今回支部長が取った選択の学校へ行くことだね。あそこを卒業すればそこでの成績がそのまま階級になるから初期から中級魔術師って人も少なくは無いんだよ?」
「……在学中に特級や神位にはなれないのか?」
「なれないわけじゃないけど神位は絶対に無理だね。神位になるには魔術の神髄にまでたどり着かなきゃいけないから。特級もかなり厳しいね……。あそこに入学したら私も一時的に階級を見習いまで落とされるらしいからレッド君が自力で特級まで上がらないと禁書までは閲覧させてくれないだろうし。まぁよっぽどとんでもない成績を出せば行けないこともないんじゃない? 私は現に特級だしねー」
「カナデは初期から特級だったのか?」
「まさか。私は学校には通わなかったけど体質上止む無しで魔術を学んでいったらここまで上がってただけだよ」
淡々と言うがその言葉にはどこか裏があるように感じた。まぁどんな理由にせよおれが詮索して良いことではない。
そんな話をしながら長い廊下を歩いて下に降りる謎の箱に乗ったりしながら移動していくと、漸くその場所に着いた。
真っ白い扉に銀色のドアノブ。なんてことは無い普通の入り口だ。
「この世界でも部屋に入るときはノック二回なのか?」
「それじゃトイレだよ? こっちの世界では三回が一般的だね」
そう言いながら奏がノックすると、中から「どうぞ」と短く中性的な声が返ってくる。
「?」
聞き覚えのある声に俺が首を傾げていると、カナデはそんな俺には全く気にすることなく扉を開けた。
「やぁ、こんな所までお客さんが来るとは珍しい……って、奏じゃないか! 久しぶりだね、元気だったかい?」
まだ湯気が立ち上っているカップを手に持った白衣の少女。着丈が合っていないのかその裾は僅かに足元を擦りそうであったが少女は気にしている様子はまるでなかった。
そして俺自身も、そんな事よりも目の前の少女に対して驚いていた。
「三年振りだねー、アッキー! お帰り!!」
嬉しそうに再会を喜び合う二人だが、不意に白衣の少女がレッドに気が付いたように視線を向ける。
「ん? そっちの彼は見ない顔だね。初めましてでよかったかな? 僕の名前は寺島 秋。秋って呼んでくれて構わないよ」
「……メア?」
俺は呆然とし、口から不意にその名が零れ落ちていることに気が付かなかった。
誤字脱字、感想等があればよろしくおねがいします。




