師匠の消息
なんだ、今何て言ったんだ?
「……もっと驚くと思ったんだが。聞こえてなかったのか? もう一度言うぞ」
「いや聞こえてた。ただ意味が分からない」
それのどこが罰だというのか。ってかそもそも学校って何の学校だ。
「まさかとは思うが……彼方には学校が無かったのか?」
「馬鹿にすんな、学校くらいあるわ!」
しかし謎だ、どうしてこんなことを急に言い出したのか。周りを見れば困惑しているのは俺だけではないようだ。
同じく頭に?を浮かべている奏を放置して優が支部長へと問う。
「……コイツに魔術免許を取得させるつもりですか?」
「あぁ、その通りだ。魔術と魔法の境が曖昧な以上、免許を取得してそもそもの罪状を問えなくした方が丸く収まるだろう? ――言うまでもないが勿論特例だ。彼のように異世界人と証明できない者に関してはこれまで通りの対応となるだろう。」
「異世界人の証明?」
なんだそれは。した覚えが無いぞ、そんなこと。
「うちの守り神のお墨付きだからね。私としても信じない訳にはいかないのさ」
それを聞いて少し納得してなさそうな顔をしながらも優がそれ以上口を開くことはなかった。一応は納得したということだろう。
「さて、レッド君。君の入学についてだが、君はいくつかな?」
「えっと……十八だが」
「ふむ、なら彼女も同行させるとしよう」
ぽん、と奏の頭に手を乗せると「え?」と奏がすっとんきょうな声を出す。
そのまま頭を掴んでぐわんぐわんと回しながら
「多少頭はパーだが腕はある。『脚』としても非常に優秀だ。他の者からクレームが来るかもしれないが、彼女も最近退屈しているようだし構わないだろう」
「…………うぇ」
頭を回されて酔ったのか、えづいている彼女に意見を言わせる気は微塵も無いようだ。
「いやいや、待ってくれ! 俺は師匠を探さなくちゃならないんだ、そもそも罪に問う気がないなら解放してくれ!」
そんなことをやってる暇は無い。こんな異世界で行方不明だなんて、師匠の事だから平気だろうが、さっさと探し出すのに超したことはない。彼方には師匠を必要としている人がいるのだ、早く帰さねば俺がここにいる意味がない。
「それが、彼女を見つける近道と聞いてもか?」
「なん……だと?」
俺は絶句した。
こいつらはもう師匠の居場所を知っているのか?
ならばさっさと吐け。……と言いかけたところで支部長が次の言葉を紡ぐ。
「君の師匠が行方不明になった要因には大体当たりがついている。……『神隠し』という言葉を知っているか?」
聞いたことがない言葉だ。
俺は首を横に振る。だが他の二人は違ったようだ。
「最近頻発している魔術災害でね。昔からあったにはあったんだが、最近は特に酷い。空間の密度が薄い所や僅かな綻びがあるところに急に穴が生じて――まぁ簡単に言えば空間と空間の間にある本来存在しない虚数空間へと“落ちる”んだ。そこには時間と言う概念さえないといわれているからね、死んでいるということもないだろうが……。まぁどんなところかは想像もできないな」
「それと俺が学校へ行くことがどう繋がるんだ」
「あそこには巨大な図書館があってね、階級で読める書物の量が変わるが特級ともなれば保管しているだけで閲覧を許可していない類いのものも閲覧できるだろう。そこに虚数空間から連れ出す方法があるかもしれないな」
「……ってちょっと待て。あんたらは探してくれないのか?」
協会とやらが協力してくれるなら俺が調べに行く必要はないのだ。だが、この言い方だと――。
「何を勘違いしてるのか知らないが、協会としては探す義理がない。それを君の処分ついでに宛をあげてるのだからいい待遇だと思うが?」
「くっ……」
どうやら俺には拒否権は無いらしい。だが、俺には決定的な問題がある。
「俺はこの世界の言語を理解はできるし不思議と通じてはいるが書くことはできないぞ、それは大丈夫なのか?」
「ノート等は君が見れればそれでいい。あそこに筆記試験はない、全て実技。実力がものを言う世界だここは」
「全部予想通りって顔が腹立つな」
「くくっ……まぁ否定はしないがね。さて、ここで君に制約を一つかける。今後、君の魔法の使用の一切を禁じさせてもらおう。これは言わずもながら混乱を避けるためともし第三者に知られて悪用されることを避けるためだ、理解してくれたまえ。そのために別の拘束具を用意する」
支部長が俺の右手の腕輪を指差す。
「それは汎用的な魔力を拘束するものでね。学生ならいざ知らず教員なら直ぐ気づいてしまうだろう。それは流石にマズイからね。君と奏には秋のところへ行ってもらう」
それを聞いた途端に突っ伏していた奏がガバッと起き上がる。
「アッキーが帰ってきてるんですか!?」
……どうやらまだ胡散臭そうな奴に会わなければならないらしい。
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