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渡される罪

 もう既に三度目となる取調室。


 初回は言わずもながらだが、一応取り調べは毎日行われていた。


 最初は同じことを訊かれて同じことを返してるだけだったのだが、二回目は何故か魔王討伐の旅の話をさせられた。それを興味深そうに奏が聞いていたのが印象に残っている。


 そして、今回。



「さ、昨日の話の続きしよー?」

「はぁ……」


 奏が言い、優が溜め息を吐く。

 それもそうだろう。本当か定かではないフィクションの様な冒険の話以外に聞き出せる新しい情報がまるでないのだ。

 更に取り調べの相方がノリノリと来たもんだから頭を抱える他ない。


 大体そんな心情だろうな――っとレッドは同情しながらも自分に出来ることはこれしかない上に自由が掛かっているなら断る理由はないと話始める。


「どこまで話したか――あぁ、ルクセンの街についた辺りだったな。あの時は――」


 全く……皮肉なことだ、異世界に逃げてまで彼方の話をすることになるなんてな。


 レッドは気づかれないように自嘲するような笑みを小さく浮かべる。それに奏は気づくことはなかったが、優はそっと目を伏せた。




「――――随分と、興味深い話をしているな」


 それは突然やってきた。

 俺が話はじめて一時間位経った頃だろうか、その男がノックもせずに平然と入ってきたのだ。


 人の目を引く様な綺麗な黒髪を後ろで一つに括り、この世界で何度か見た似たデザインの真っ黒な上着(スーツ)に身を包んだ美丈夫。

 コツコツと音を鳴らしながら部屋に入ってくるなり椅子を一つ引いて奏の隣へと座った。



「「支部長」」


 驚いた様子で優と奏が呟いたことで俺は男が誰なのか察する。

 どうやら彼が件の支部長らしい。


 ……確かこっちに着くのは早くて明日では無かったのか。


「こっちに着くのは早くて明日じゃなかったでしたっけー?」


 丁度奏が俺が思っていた疑問を口にすると、支部長は子供のような笑みを浮かべながら返した。


「異世界人等と聞いて年甲斐もなくはしゃいでしまってね。つい急いで帰ってきてしまった次第だ」

「あれ、支部長っていくつでしたっけ?」

「三百から先は数えてないな」


 嘘つけ。しれっと言ったがどう見ても男の齢は二十前半にしか見えない童顔だ。


 はははと笑う男に奏がまたまたぁと笑う


「桁が一つ多くないですか?」

「さぁ、どうだろうね」



「――奏、コントしてないで本題に入るぞ。支部長もいつまでも付き合わないでください」


 優が奏の脇腹を小突くと、「おうっ」と小さく呻いて突っ伏する。そのあと鋭い視線で男を射貫いた。


「おっと、そろそろ本題に入らないと斬られてしまいそうだ」


 人を食ったような笑みを浮かべると漸く男の視線が俺の方に向く。

 途端に感じる強い圧力。なんだ? ……まるで魔王と相対している時のような、殺気は感じられないが目が合っただけで恐ろしい存在感を感じさせられる。


 魔力だ、魔力の質がおかしい。


 男の身体から僅かに感じる魔力がとてつもない密度を持っている。魔力を体内に秘めて解放させずにいること自体は簡単だ。それが完全にせよ弱く見せるために少しだけ出しているにせよこの密度はどう考えてもおかしい。


 魔力量だけなら魔王にも劣らない俺だが、この男は底がまるで見えない。



「……なんだコイツ」


 俺は冷や汗が頬を伝うのを感じながら絞り出すように呟く。


「コイツ呼ばわりとは失敬だな……っとそう言えば名乗っていなかったか。私の名前は益田(ますだ) 四郎(しろう)、世界魔術協会日本支部の支部長。つまりはここのリーダーをやらせてもらっている。よろしく頼むよ、レッド・アルキス君」


「どうして俺の名前を?」

「私の留守を任せている者に予め聞いていただけだ。報告書にもあったしね」


 俺が来てから三日足らずでこの情報伝達速度……さすが異世界と言うべきか。



「さて、重要な君の処分についてだが――――」


 ゴクリと咽を鳴らす。

 さて、これで死罪とでも言われたら全力で逃げなければならなくなるわけだが……。


「率直に言おう。君には学校へ通ってもらう」



「…………………………は?」



誤字脱字、感想等があればよろしくおねがいします。

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