二度目の初恋
水たまりに映る虹に誘われたように、まだ少し寒い風が吹く、三月の頃。
雪どけ道の先にある学校の教室で、窓際の席に座りながら、海色の空を見上げてハミングする君に、見惚れる私は恋に落ちている。
風船のように膨らんだこの気持ちを、飛ばせないまま、もう、三年の冬が終わってく。
あと何回、君に会えるんだろう。
十年後、丸を付けた往復はがきを返して、あの時ほんとは……なんて話しても、遅いって分かってるのに。
やがて別れの時は来て、まだ蕾の桜を見ながら、唄を唄い、卒業を宣言し、涙を流す。
その想いを胸に秘めたままなことを後悔しながら。
もう忘れようと考えながら、初めて結んだ不細工なリボンが、私のことを嗤ってる。
鮮やかな桃色に染まる木々の道。籠に鞄を入れた自転車で、颯爽と駆け抜ける。
あの時は蕾だった桜が、今は満開になっている。春の香りがする。
生徒として初めて、新しい校門をくぐり、新しい先生に挨拶をする。
「おはよう」
「あっ、おはようございま……」
「お前も、この学校だったんだ」
胸が躍る音がする。心にも、温かい花が咲く。
嬉しさが、溢れ出す。
春は出会いの季節だから。
「また、同じクラスだといいな」
もう一度出会った君に、私は、もう一度、恋をする。