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90話頼介

結局、俺は先生の言いつけを守れなかった。


GINJIを独占したかった。

片時も離したくはなかった。


GINJIは、次第に疲労の色を隠せなくなってきた。

その日もGINJIは、疲れ切った顔で何やら考え込んでいた。


「GINJI?」

それでも、俺が顔を覗き込むと、笑顔を見せてくれる。


「なんでもないよ。」


GINJIはエアコンのリモコンを手に取った。

俺は不思議な思いでそれを見つめた。


「暖房?」

「そうだ。お前は寒くないのか?そんな薄着で。」


言われてみれば、少し寒い。

そう言えば、今、何月だったっけ?

俺はそれすらも、わからなくなっていた。


「受験…もう追い込みの時期なんだよね。」


ようやく感じた季節の移り変わりで、将太の事が思い出される。


俺の事を捨てた将太。

今は兄ちゃんのもとで、俺の事なんか忘れて暮らしている。


将太…。将太!!


また、俺の頭の中が爆発した。

こうなると、もう自分でも止められない。


俺を止めようとするGINJIと、揉み合いになった。


無理やり飲まされたものが、薬だったと気づいた時には、もう眠くなっていた。

「ほら、薬も飲めたから、もう大丈夫だ。もう怖くない。怖くないからな。」


GINJIの声が子守唄のように聞こえた。

GINJIに押さえつけられたまま、俺はまた眠ってしまった。


どれくらい眠ったかは、よくわからない。

俺は床の上で目が覚めた。

毛布がかけられていたから、寒くはなかったけれど、固いところで寝ていたから、身体が痛い。

いつもは俺がどこで寝ても、目が覚めればベッドの上だったのに。


不思議に思って辺りを見回したけれど、GINJIの姿が見えない。


「GINJI!?ねぇ、GINJI!?」

俺が大声を上げると、奥から人が出てきた。

でも、それはGINJIではなかった。


「佐久間さん…。」

「目が覚めたみたいだな、RAISUKE。」

「GINJIは?」


佐久間さんは困ったような顔をして、答えた。

「今、出掛けているよ。」


俺が寝ている間に勝手に?

「どこに行ったの?」


「蓮介さんの所だ。心配しなくても、すぐに戻って来るよ。」


兄ちゃんの所?

俺の頭の中が真っ白になった。


そして、また叫びだしたくなった。


「RAISUKE!大丈夫だ。GINJIはすぐに戻って来るから、落ち着け!」

佐久間さんが、慌てて俺を宥めようとする。


『休養をさせてあげてほしい。』


先生の言葉が甦る。


もう遅かったの?

俺がGINJIを離さなかったから、GINJIは壊れちゃったの?

もう戻って来ないの?


GINJIも、兄ちゃんの所に行っちゃったの?


俺はそれ以上、何も考えられず、ただその場に座り込んでいた。

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