83話 頼介
俺はいつの間にか入院させられていた。
周りの人間がすべて、GINJI以外のすべての人が兄ちゃんに見えた。
喚き散らして、何が何だかわからなくなって、気が付くと病院のベッドの上にいた。
ボンヤリしている俺の頭を撫でながら、GINJIが何やら話しかけている。
何を言われているのかは、よくわからなかったけれど、GINJIが傍に居てくれるなら、それで良かった。
病院にいる間は、頭がボーっとして、何をしているのかよくわからなかった。
どれくらい入院したのかもわからなかったけれど、しばらくすると、退院して、うちに帰る許可が下りた。
GINJIが当然のように付いてきてくれた。
今、GINJIが居なくなったら、多分、俺、死んじゃう。
家で、GINJIと2人きりで過ごした。
時折、佐久間さんが食料品とか届けてくれる以外は、ずっとGINJIと2人きりだった。
病院にいる時ほど、頭はボンヤリしてはいなかったけれど、それでも俺は薬を飲まないといけなくて、そのせいかいつもだるくて眠たかった。
GINJIが傍に居てくれるのは嬉しかったんだけれど、俺の中であの夜の事が、シコリになっていた。
あの夜、GINJIは兄ちゃんに会いに行って…多分、そういう関係を持っていた。
GINJIが本当に好きなのは、兄ちゃんなんだ。
俺じゃない。
もしかすると、俺は兄ちゃんの代用品程度に思われているのかもしれない。
将太もきっと兄ちゃんの所で、幸せに暮らしている。
俺の事は、きっともうどうでもよくなっている。
もしかしたら、将太とは、もう一生会えないのかもしれない。
「頼介、大丈夫か?」
気が付くと、台所を片付けていたはずのGINJIが、俺の顔を覗き込んでいた。
腕に歯型ができていて、そこから血が流れている。
いつの間にか、自分で噛みついていたみたい。
痛みは感じなかった。
GINJIはすぐに薬を持ってきて、飲ませてくれた。
この薬を飲むと、何も考えられなくなる。
「ほら、怖くない。怖くない。」
薬が効いてくるまでの間、GINJIは俺を抱いていてくれた。
GINJIは居なくならないで…。
将太みたいに、離れていかないで…。
兄ちゃんの代用品でいいから、傍に居て…。
そのうち眠くなってきて、GINJIの腕の中で、俺は眠りについた。
だけど、夢を見た。
口の中に何かが入ってくる。
身体の上を何かが這っている。
薬のせいで、変な夢を見たんだろう。
GINJIの声が聞こえた気がした。
笑い声のような気もしたし、泣き声のような気もした。




