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81話 蓮介

仕事が終わって、自分の部屋に帰る。


将太が俺の帰りを待っている。

先にメシを食って寝ていろと言ってはいるが、玄関の隙間から灯りが漏れているのを確認すると、ホッとする自分がいる。


「お帰りなさい。」

玄関のドアを開けると、将太がそう声をかけてきた。


赤くなった目を擦っている。

コイツ、また泣いていやがったな。

ひとりにしておくと、いつもそうだ。


「ただいま。」

俺は気付かないふりをしながら、そう応えた。


本当は、何か言葉をかけてやるべきなのかもしれない。

それとも、黙って抱きしめるべきなのだろうか?


頼介だったら、どうするのだろう?

‘父親’として、新米な俺は、どうして良いのかわからずにいた。


メシの支度は、将太がしてくれている。

一緒に暮らしてみてわかったが、将太はかなり家事ができる。

頼介の躾の賜物だ。


将太は勉強道具を片付け、ちゃぶ台にメシの用意をした。

俺は何気なくTVをつける。


『本日、入ってきたニュースです。』


アナウンサーの声が流れてくる。


その時、耳を疑うニュースが飛び込んできた。


『R-GUNのRAISUKEさんが、今日、番組収録のために訪れていたTV局で倒れ、救急車で搬送されました。』


‘R-GUNのRAISUKE’って、頼介の事だよな?

そんな当たり前の事が、頭の中で一瞬、繋がらなかった。


将太の顔を見ると、TV画面に釘付けになっている。


『RAISUKEさんは、最近、2度の急病で療養しており、健康問題が心配されています。今回の件で、長期療養に入るのは必至と見られており、事務所側は、全国ツアーのチケットの払い戻しなどの対応に追われています。』


アナウンサーはそう続けた。


俺はケイタイを取り出し、銀司に電話した。

だが、繋がらない。

続けて、社長にも電話したが、やはり繋がらない。


「頼介は、頼介は大丈夫ですよね!?」

将太が俺に縋りついてきたが、安心させてやるような事は、何一つ言えなかった。


TVのニュースからは、それ以上の情報は得られなかった。

俺達は、銀司か社長が折り返し連絡してくるのを待った。


2度の大怪我を乗り越えたというのに、アイツの身に何が起こったのだろう?

なんでアイツばかり…。

俺は我知らず、拳を握りしめていた。


程なくして、銀司が電話してきた。


「銀司!頼介はどうしたんだ!?」

『ニュースを見たのか?』

「そうだ。無事なのか!?」

『無事とは言えないが…ともかく、命に別状はない。』

「病院はどこだ!?」

『それは…今は、刺激しない方がいい。』

「何?刺激しない方がいいって、どういう意味だ?俺に来るなって事なのか?」

『そうだ。今回の件は、精神的な事からきているんだ。怪我もしちゃいるが、それよりも心の問題の方が重い。将太くんが出て行ったのも大きいが、もっと根本的なところで、問題を抱えていそうだ。だが、詳しい事は、まだわからないんだ。何かわかったら、またお前にも連絡する。』

「ともかく命に別状はないんだな?」

『あぁ。』

「わかった。将太にもそう伝える。」


そこまで話して、俺は電話を切った。


「頼介はどうなんです!?」

将太が訊いてくる。


「どうもはっきりしないんだが、精神的な事が原因らしい。俺が行くと刺激になるから、今は来るなと言われた。だが、ともかく、命に別状はないそうだ。」


精神的な原因と言われ、将太は茫然とした様子だった。

いつもの頼介からは、その手の病気は連想できない。


将太が出て行ったのがキッカケとなったのだろうが、銀司はそれだけではなさそうな事を言っていた。


ともかく、事態を見守るしかない。

俺達は、アイツの傍に居られないもどかしさを感じていた。

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