79話 頼介
GINJIと兄ちゃんの間には、そういう関係がある。
あの晩、俺はそれを知ってしまった。
勿論、俺はそれをどうこう言える立場じゃない。
俺はGINJIを受け入れられなかったんだから。
だけど、GINJIは俺の傍にいながら、兄ちゃんと繋がっていたんだ。
将太も、GINJIも、兄ちゃんに奪われていく。
俺はその日から、ますますGINJIの傍を離れられなくなった。
自分でも、おかしいんじゃないかと思う。
だけど、GINJIの姿が見えなくなると、不安で気が狂いそうだった。
でも、俺は気付いてしまった。
兄ちゃんが俺のものを奪っていくわけじゃない。
俺が兄ちゃんのものを奪ってきたんだ。
なんで、今まで気が付かなかったんだろう?
将太は、兄ちゃんの実の息子だ。
GINJIも、もともと兄ちゃんの仲間だったんだ。
R-GUNを結成したのも、兄ちゃん。
律子さんだって、もとはと言えば兄ちゃんの…。
俺は兄ちゃんの居場所をすべて奪ってきてしまった。
俺の居場所は、すべて兄ちゃんから奪ったもの。
そして今、兄ちゃんが現れて、そのすべてを奪い返そうとしている。
俺のすべてが持っていかれる。
兄ちゃんに、持っていかれる…。
怖い…。
怖い!!
「頼介、どうした?」
気が付くと、GINJIが俺の顔を覗き込んでいた。
そうだ。
ここはTV局。
これから、音楽番組の収録だった。
今からメイクに入るところ。
俺のヘアメイクさんが、どうしたら良いのかわからなそうな顔で、佇んでいた。
俺は片時もGINJIから離れたくなくて、本来、別々に用意されている控室があるのに、GINJIの控室で準備しているところだった。
「なんでもない。お願いします。」
俺はヘアメイクさんに声をかけた。
GINJIも自分のメイクをやってもらおうというところだった。
GINJIが自分のヘアメイクさんと談笑している。
俺もよく知っている人。
だけど…。
「あれ?」
俺は目を擦った。
よく知っているはずのGINJIのヘアメイクさんが、違う人物の顔に見えたんだ。
GINJIと楽しそうに話しているのは…兄ちゃん?
そんなわけはない。
だけど、ヘアメイクさんの顔が、兄ちゃんの顔に見えた。
「あの、始めてもいいですか?」
俺のヘアメイクさんが、俺に声をかけてきて、俺は振り返る。
その顔も兄ちゃんだった。
「あ、あ…。」
俺の様子がおかしい事に気付いて、GINJIと佐久間さんが寄ってきた。
佐久間さんの顔も、兄ちゃんの顔だった。
「うわぁぁああー!!」
俺は大声を出して、控室を飛び出した。
吃驚して、周りの人間が寄ってくる。
そのすべてが、兄ちゃんの顔をしていた。
そこから逃げようと思って、振り返ると鏡があった。
そこに映っているはずの自分の顔が…ない。
「嫌だぁー!!!」
俺は喚き散らした。
その後は、記憶が途切れている。
ただ、GINJIが必死に俺を抱きとめていたのだけが、頭の隅に残っていた。




