74話 頼介
俺とGINJIは、無言でエレベーターに乗り込んだ。
俺のマンションのエレベーター。
最上階の俺の部屋に向かう。
後ろ手に玄関を閉めると、GINJIに抱きすくめられた。
本当にこれから、俺、GINJIに抱かれるんだ。
GINJIはそのまま俺を寝室へ連れて行った。
ベッドに押し倒されて、シャツを剥ぎ取られる。
結構、無理やり脱がされたから、破れたかもしれない。
そんな手荒な動作が、少し怖かった。
身体を見られるのは恥ずかしかった。
痩せすぎているのが、わかっていたから。
自分でも鏡を見た時、ギョッとした。
でも、GINJIはさっきの手荒な動作から一変して、優しく身体を撫でてくれた。
だけど、GINJIの手が局所にまで伸びた時、俺の頭の中に、またアイツの顔が浮かんできた。
ここに来るまでに、何度も何度も打ち消したはずのアイツの顔が。
小さい頃の泣き虫だったアイツの顔。
最近、見せるようになった、生意気そうなアイツ顔。
俺に文句を言いながら怒っているアイツの顔。
嬉しそうに笑うアイツの顔。
俺に怪我させて、久しぶりに見せた泣き顔。
俺を世話する時の、優しくて、寂しそうな笑顔。
「将太…。」
ほとんど無意識のうちに、その名を口にしていた。
目尻から涙が零れ落ちた。
そんな俺を見て、GINJIは黙って俺の身体を離した。
そうだ。
なんて事をしてしまったんだろう?
俺はGINJIを受け入れると決めていたのに。
「ごめん、GINJI…ごめん!」
俺はGINJIに泣いて謝った。
しばらくGINJIは俺に背中を向けていた。
こんな時に、別の人間の名前を出すなんて、最低だ。
GINJIだって、怒っただろう。
だけど、振り返ったGINJIは、優しかった。
額にキスされたけれど、ヤラシイ感じは何もなくって、そのままベッドで横にさせられた。
「何もしない。何もしないから、安心しろ。」
涙を指で拭って、そのまま抱きしめてくれる。
GINJIもわかったんだ。
俺の本当の気持ちを。
GINJIには傍にいて欲しいのに、GINJIを受け入れる事はできないワガママな俺の気持ちを。
わかった上で、一緒にいてくれると決めたんだ。
申し訳なさでいっぱいになる。
それなのに、GINJIの腕の中で、安心している自分も居た。
「朝まで一緒に居てやるから。何処にも行かない。だから、安心して眠れ。お前、夜も眠れていなかったんじゃないのか?今晩はぐっすり眠って、明日になったら、何か少し食べてみよう。もしかしたら、少しは食べられるかもしれない。」
そう言って、優しく指で髪を梳いてくれる。
それが気持ち良くて、なんだか何も考えられなくなってきた。
身体は疲れ切っていた。
目を閉じるとGINJIの匂いを直に感じた。
それに安心して、急速な眠気に包まれていった。




