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72話 頼介

GINJIの車から飛び出した後、俺はタクシーを拾って、家に帰った。

誰も待っていない家。

自分で灯りを点けて、部屋に入る。


慣れなきゃいけないと思った。

これから先、ずっとこうなのだから。


だけど、自分の部屋に戻るともう限界で、俺はひとりで泣き崩れた。


あれから、3日が過ぎた。

俺は相変わらず仕事をこなしていたけれど、身体は悲鳴を上げていた。


何も食べられず。

全く眠れず。


今日も仕事が終わって、何か食べなきゃと思って、用意してもらったサンドイッチとお茶に目をやった。

食欲なんてまるでないけれど、無理やり口に押し込んで、お茶で強引に流し込む。


なんとか胃に入れようと格闘したけれど、やっぱりダメだった。


「ゲホッ!ゲェ!」

結局、吐き出してしまう。


その時。


「頼介!」

物音に気付いたのだろう。

GINJIが俺の控室に飛び込んできてくれた。


GINJIはあれ以来、マトモに俺の顔を見てもくれなかった。

だから、来てくれて凄く嬉しかった。

だけど、今は苦しくて、言葉が出ない。


「大丈夫か!?」

GINJIは俺が落ち着くまで、背中をさすっていてくれた。


胃に入ったものを全部出しきっても、しばらくは苦しくて、俺は肩で息をしながら涙ぐんでいた。


「お前…ずっとこんな調子なのか?」

GINJIが俺の顔を覗き込んで、訊いてくる。

俺は黙って頷いた。

GINJIは悲しそうな顔をしていた。


「とりあえず、ここは俺が片付けるから、お前は横になっていろ。」

「でも…。」

「いいから。少し休め。」

GINJIに優しくそう言われ、また泣きたくなった。


軽く口を漱いで、言われた通りに休んでいた。

横になりながら、床を片付けてくれているGINJIを見つめていた。

申し訳なくなってくる。

GINJIも何だかツラそうな顔をしていた。


「頼介、帰ろう。今日は1人で帰すわけにはいかない。佐久間さんに送ってもらえ。佐久間さんも心配している。」


気を遣っているのだろう。

GINJIは自分が送るとは言わなかった。

だけど、俺はワガママを言った。


「GINJIがいい。」


「え…。」


「俺、GINJIがいい。」


GINJIは戸惑ったような顔をしたけれど、結局、俺を送ってくれる事になった。


俺はGINJIに傍にいてほしい。

だけど、それならGINJIの気持ちを受け入れるべきだ。

GINJIの気持ちを知っているんだから。

だけど、GINJIを受け入れようと思うと、別の人物の顔が頭に浮かぶ。

俺はその人物の顔を、何度も何度も打ち消した。


GINJIにあんな事をされても、嫌な気持ちは起きなかった。

大丈夫。

俺、きっとGINJIを受け入れられる。


「GINJI。」

車が家の前にまで着くと、俺はGINJIに話しかけた。

「なんだ?」

優しくGINJIが返事をしてくれる。

「今晩、泊って行ってよ。」

「え?」

GINJIがここまで送ってくれるのはいつもの事だけど、泊って行った事はない。

「何、言っているんだ?頼介。」

戸惑ったような声で、GINJIが訊き返してくる。

だけど、俺はもう決めていた。


「俺、GINJIのものになりたい。」

俺は振り絞るような声でそう言った。

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