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69話 GINJI

「おい、GINJI。」

「どうしたんだよ?アイツ…。」

再びの仕事復帰から1週間。

頼介は、これまでの穴埋めをするかのように、勢力的に仕事に取り組んでいた。


今日も朝から深夜にまで及ぶ仕事。

俺達もようやく私服に戻ったところだった。

そんなUSHIOとNAOTOが、俺にそう声をかけてきた。


復帰してからの頼介は、最高にキレが良かった。

歌声は冴えわたり、射貫くような視線も健在。


だが…。


「お疲れサマ。」


頼介も私服に戻って、出てきた。

いつもだったら、和やかな雰囲気が立ち込める帰り間際の俺達の間に、緊張感が走る。


「本当、疲れたな、頼介。腹減っただろ?メシでも行かないか?」

俺はできるだけ穏やかに、頼介に声をかける。

しかし、あえなく断られ、アイツはさっさと帰って行った。

慌てて佐久間さんが後を追う。

だけど、あの調子じゃ、佐久間さんも追い払われるかもしれない。


頼介が、全くオフモードに戻らない。


オフモードの犬コロみたいなアイツを知っているから、周りの人間は怜悧なアイツにも普通に接してくる事ができたんだ。

こっちを通常モードに持って来られたら、周りの身が持たない。

遠くから見ている分には、その魅力に酔いしれる事ができるが、実際に一緒に仕事をしていこうと思うと、隙のなさすぎるアイツはダメだ。

実際、アイツの視線で過呼吸を起こしたスタッフもいた。

これじゃ、チームが崩壊してしまう。


俺は頼介を追って、外に出た。

「頼介!」

頼介を呼び止める。

「なんだ?」

頼介が一際、鋭い視線を向ける。

それに怯みそうになる自分を励まし、頼介に話しかけた。

「1人で帰る事はないだろう。佐久間さんまで断って…。一応、有名人なんだからな。俺が送ろう。」

「必要ない。どうせ、私服じゃ気付く奴なんて、いないからな。」


否、気付く。

今の頼介なら、私服でも充分に気付かれる。

ただ、話しかける勇気のある奴はいないだろうが…。


「とにかく!減るもんじゃないんだ。いいから、乗れ。」

そう言って、俺は強引に頼介を車の助手席に乗せた。


車中でも、俺達は無言だった。

頼介から話しかけてくる事はなかったし、俺も何と話しかけて良いかわからなかった。


だが、何か話さなければと思い、俺は口を開いた。


「頼介。」

「なんだ?」

「お前、寂しいんだろ?将太君がいなくなって。安易に蓮介に任せようなんて言った俺が悪かった。将太君を迎えに行こう。な?」


そんな俺を一瞥し、頼介は吐き捨てるように答えた。


「将太?関係ない。俺はアイツに傍に居てほしいなんて、1度も頼んだ事はないぜ?いるから、面倒見ていただけだ。実の父親の下へ帰りたいなら、もう俺には何の責任もない。勝手にすればいいさ。」

そんな頼介に対して、俺も段々イライラしてきた。

「いい加減にしろ!心にもない事、言いやがって!」

俺は頼介の肩を掴んで、強引に引き寄せた。


驚いた。

もともと着痩せする質だから、今まで気付かなかったが、たった1週間で信じられないくらい痩せてやがる。

そう言えば、あれだけ食べる事が大好きなコイツが、マトモに何か食っているところを、この1週間見ていない。


「頼介!」

堪らなくなって、俺は頼介を抱きしめた。

頼介は抵抗しなかった。


「こんな路肩で、何をどうするつもりだ?誰に見られているか、わからないんだぜ?」

そう挑発的に呟くアイツの口唇を、俺は自分の口唇で塞いでいた。

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