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63話 頼介

どこからか、人の話す声が聞こえる。

それ程、大きな声というわけではなく、静かな声だったのだけれど。


「ん?目が覚めたみたいだぞ。」

その声が言葉として、はっきりと聞こえて、自分の意識が覚醒しようとしている事に気が付いた。


「兄ちゃん…。」

目が覚めたら、兄ちゃんがいた。

この間と同じ展開だ。

だけど、この間は兄ちゃんを将太と間違えたけれど、今回は間違えなかった。


それと、もう1人。

「GINJIも居てくれたんだ。」

俺の傍には、兄ちゃんとGINJIが付き添ってくれていた。


「気分はどうだ?」

GINJIが訊いてきた。

「ん…平気。」

痛くないわけじゃないけれど、この間みたいに全身に耐えがたい痛みがあるという程でもない。

これくらいなら、我慢できる。


「将太は?」

俺は2人に訊いた。

「家で待っている。」

GINJIの方が答えた。

「心配しているだろうから、すぐに連絡して。俺、大丈夫だから。」

とにかく、将太に無事を伝えないといけない。

アイツがどうにかなってしまいそうで、俺の方が心配だった。

「わかった。電話してこよう。」

GINJIはそう言って、席を外した。


俺は兄ちゃんと2人きりになった。

「兄ちゃん、来てくれてありがとう。」

俺は兄ちゃんに礼を言った。

「仕方ないだろう?何度も大怪我しやがって。心配させるな。」

そんな事を言いながら、兄ちゃんは俺の頭を軽く小突いた。

痛くない程度に。

兄ちゃんの口調は穏やかで、昔に戻れたみたいな気がして、嬉しかった。


今回は目が覚めても、医者が様子を見に来るような事もなく、基本的には放置みたい。

やっぱり、裏社会の病院だから、患者の扱いも一般の病院とは違うのかな?

でも、兄ちゃんが居てくれたから、その方が良かった。

前の時は、様子を見に来た医者と入れ替わりで、兄ちゃんは帰っちゃったから。


会話が弾むというわけではなかったけれど、一緒に居てくれるだけで、凄く幸せな気分になった。


でも、気がかりなのは将太だ。

心配しているだろうな…。


そう思っていると、将太に連絡しに行ったGINJIが戻ってきた。


「手術は、無事に終わったと伝えたよ。」

GINJIはそう言った。

「ありがとう。将太、他に何か言っていた?」

「俺に礼を言っていた。‘病院に連れて行ってくれて、ありがとうございます’ってな。お前が無事だと知って、安心したんだろう。思いの外、落ち着いていたぞ。」

それを聞いて、俺も安心した。


そんな話をしていると、ようやく医者が現れた。

若そうに見えるけれど、隙のなさそうな背の高い医者。

この医者が、俺の手術をしたのかな?


「麻酔は醒めたようですね。」

医者は刺すような目で、俺を見下ろしている。

「はい。」

その視線にちょっと気後れしながら、俺は答えた。


「じゃあ、お帰りください。抗生物質はお出ししておきます。」


その言葉に、俺は…というより、兄ちゃんとGINJIが度肝を抜かれた。


「ちょっと待ってください!今、手術が終わったばっかりなんですよ!?それをもう帰れって、言うんですか!?」

「麻酔も醒めたばかりで、本人も碌に動けません。この状態で、どうやって帰るんです!?」

兄ちゃんとGINJIは、医者に掴みかからんばかりの勢いだった。


「ここは療養所ではないんですよ。手術が終わったら、さっさと帰ってください。後のお世話はご自宅でどうぞ。」

医者は、表情も変えずにそう答えた。


更に医者に詰め寄ろうとする兄ちゃんとGINJIを、俺は制した。

「いいよ。兄ちゃん、GINJI。俺、早く将太の所に帰りたい。」

それは本心だった。

だから、即退院はむしろ好都合だ。


兄ちゃんとGINJIは、それでもまだ何か言いたそうだったが、医者はさっさと出て行ってしまった。


結局、俺はその日のうちに退院する事にした。

俺は兄ちゃんとGINJIに抱えられて、GINJIの車に乗せられた。


「身体はツラくないか?」

GINJIは心配そうに訊いてきた。

「うん…大丈夫。」

流石に、まるきり大丈夫とは言い難いけれど、心配かけたくなくて、そう答えた。

それより、GINJIが優しいのが嬉しかった。

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