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60話 将太

オヤジが仕事復帰した。


生死を彷徨う大怪我の後だというのに、特に後遺症も残さず、しかも思ったよりも早くに復帰できた。

喜ばしい事だ。


そうして、今は深夜0時。

オヤジはまだ帰ってこない。


俺は勉強に全く手がつかないでいた。


オヤジの帰りが遅い事なんて、珍しいわけじゃない。

そもそも何時に帰るかなんて、聞いていない。


親に早く帰ってきて欲しくて、そわそわしているなんて、自分がガキみたいで認めたくなかった。

でも、どうしても落ち着かない。


俺は頼介のスマホに何度も電話したが、全く繋がらなかった。

何故かGINJIさんも繋がらない。

GINJIさんと一緒なのかと思ったが、佐久間さんに電話したら、今日、オヤジは1人で帰ったという。


俺は居ても立っても居られず、馬鹿みたいに何度もオヤジのスマホに発信していた。


結局、一睡もできずに朝を迎えた。

登校時間になっても、頼介は帰って来なかった。


学校に行く気にもなれず、昨日の夕飯も食っていないのに、朝飯を食う気にもなれず、リビングで1人ぼんやりとしていた。


その時、玄関の開く音がした。


頼介はリビングまで来て、俺がいた事に驚いたようだ。

「あれ?将太、学校は?」

と、いつもの間の抜けた声を出す。

しかも、どうやら飲んでいるようだ。


「こんな時間まで飲んでたのかよ!?遅くなるなら、連絡くらい入れるのが常識だろう!」

俺は怒鳴り散らしていた。

さっきまで泣きそうだったのに、頭に一気に血が上って、自分が抑えきれなくなっていた。


「いや、だって、今まではお前、そんな事言わなかったじゃん。」

「着信も無視しやがって!」


「え?」

頼介は慌ててスマホを確認し、ギョッとした顔をした。

そりゃ、引くだろうな。

俺からの着信、100件近く入れたから。


でも頼介は、ようやく俺のイライラの原因に気付いたようだ。


「…。ごめん。」

と、小さな声で謝ってきた。


それなのに、俺は自分を抑える事が出来なくなっていた。


気付いた時には、頼介をボコボコに殴っていた。


頼介は俺にされるがまま、何の抵抗もしなかった。

殴って殴って、さすがにヤバイと思って手を止めた時には、頼介は動かなくなっていた。


「おい、頼介!」

自分で殴ったくせに、身動きしなくなった頼介を見て、俺は真っ青になった。


「ごめん!ごめん!」

倒れた身体を抱き起して、泣きながら謝った。


頼介はグッタリしていたけれど、一応、意識はあった。

「俺の方こそ、ごめんな…。」

そう言って、手を伸ばし、俺の頭を撫でてくれた。


だけど、このまま放っておける状態じゃなさそうだった。

「頼介、病院に行こう!」

俺はそう言ったが、

「ダメだ!」

と言われてしまった。


「だって、このままじゃ…。」

「いいから!」


そう言って、強引に立ち上がろうとしたが、上手く立てずにふらついている。

慌てて支えて、とにかく頼介の部屋まで連れて行った。


ベッドに寝かせたが、やはりキツそうだ。


確かに、こんな明らかに殴られた傷で、病院にかかったら、警察に通報されてしまうかもしれない。

でも、俺は仕方ないと思っていた。

自分でやった事だし。

それよりも、頼介の身体の方が心配だった。


俺はそっと部屋を出て、スマホを取り出した。


『どうしたんだ?将太君。』

電話をかけた相手は、すぐに出てくれた。


「俺…。」

俺は泣きながら、GINJIさんにすべてを話した。

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