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58話 蓮介

「この店か。」


銀司に部屋を追い出され、言われるがままに、指定された店に来た。

頼介を迎えに。


それにしても、高そうな店だな。

俺には縁がなさそうだ。


入りづらかったが、ここまで来たなら、仕方ない。


「すみません。」


そう言って、俺はその店に入っていった。


「いらっしゃいませ。あ、お待ちしておりました。頼介さんのお迎えですね。」


「え?」


俺が名乗る前に、すぐに店員はわかったようだ。

不思議に思っていると…。


「だって、お顔がそっくりなんですもの。お身内の方ですね。」

と、笑顔で言われてしまった。


店員に案内されて部屋に行くと、すっかり寝入っている頼介と、若い女性が一緒にいた。


「あ、こんばんは。」


女性は戸惑ったような様子で、挨拶してきた。

そう言えば、銀司は頼介が誰と一緒にいるかは、言っていなかったな。

この女性…確か病院にも来ていた。


頼介の恋人か?


そう思いつつ、

「弟がご迷惑をおかけして、すみませんでした。」

と、彼女に挨拶した。


「いえ、私が飲ませすぎてしまったんです。申し訳ありませんでした。」

そう言って、頭を下げた彼女を見て、病院以外でもこの顔は見た事があると、気が付いた。


実際に会ったわけじゃない。

TVだ。

名前までは出てこないが、きっと彼女は芸能人なんだろう。

美人だしな。


芸能人の恋人がいるのか…。

やっぱり遠い世界の人間になったな、頼介は。


彼女から頼介を引き取って、タクシーを拾った。

タクシー代も、俺にとっては痛い出費なんだが、コイツらにはわからないだろうな。


タクシーの中で、頼介のスマホがやたらに鳴っていた。

気になったが、俺が出るわけにもいかないので、放っておいた。


アパートに辿り着いても、頼介はまるで起きる気配はない。

仕方ないので、銀司の布団に寝かせ、俺は隣でタバコに火をつけた。


歌っていた頃には、銀司に隠れて吸っていた。

喉がやられるからタバコはやめろと、銀司にはいつも言われていた。

だから、未だに銀司の前では、吸えずにいる。

今更そんな事、言われないのはわかっているんだが…。


頼介は多分、吸わないんだろうな。


その時、頼介が何か言ったような気がした。


「どうした?」


気分が悪くなってきたのかと思って声をかけたが、目が覚めたわけではないようだ。

煙が嫌だったのかと思い、吸いかけのタバコの火を消した。


すると、

「GINJI…。」

と、今度は聞き取れるような声で、確かにそう言った。


銀司でなくて、悪かったな。

心の中でそう思ったが、寝言に答えてはいけないらしいので、声には出さなかった。


俺はケイタイを取り出し、電話した。

かけた相手は、すぐに出た。


「俺だ。」

と言うと、

『なんだ?』

と、不機嫌そうな声が返ってくる。

「お前、今、どこにいる?」

『どこって、自分の家だ。お前が部屋を出て、すぐに帰った。それより、頼介はちゃんと迎えに行ってやったんだろうな?』

「じゃあ、今すぐ戻ってこい。頼介がお呼びだ。」

『は?』

「俺は、今夜は外で時間を潰して、そのまま仕事に行く。お前はここで、頼介の面倒をみてやれ。」

そう言って、通話を終了した。

すぐにかけ直してこられたが、無視してケイタイの電源を切る。


俺はそのまま自分の部屋を出た。

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