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54話 蓮介

「なぁ、銀司。」

俺は食後のお茶を飲みながら、狭い台所で食事の後片付けをする男の後ろ姿に声をかけた。


「なんだ?蓮介。」

銀司は振り返らずに、返事だけする。


「お前、今日、機嫌悪いだろ?」

やはり振り返らないので、表情はわからないが、一瞬、答えに窮したように、押し黙る。


「そんな事ないぜ。なんで、そう思うんだ?」

しばらく間をおいて、銀司はそう答えた。


「機嫌が悪いっていうより、落ち込んでいる感じか?お前、頼介と喧嘩でもしたのか?」

そう訊くと、今度は間髪入れずに

「頼介は関係ないだろ!」

と、怒鳴られた。


図星か…。


「なぁ、銀司。お前にした事は謝るよ。だけど、お前も俺みたいな奴に構っている場合じゃないだろう?今はもう、俺達は住む世界が違うんだ。R-GUNのGINJIが、こんなくたびれたオッサンの部屋で、茶碗洗っているなんて、ファンが知ったら卒倒するぜ。」


「RAISUKEは、ライヴで歌っただけでも、ファンは卒倒するけどな。」


「話をすり替えるな。何度も言うが、もう俺達は住む世界が違うんだ。俺に構うな。自分の場所に帰れ。」


「俺の場所?どこだ?それは?」


「R-GUNに決まっているだろう。頼介のところだ。」


ここで、初めて銀司は振り返って、俺の顔を直接見た。


「頼介の傍は、お前の居場所じゃないのか?」


そう言った銀司の視線を、俺は受け止めきれず、下を向いた。


「頼介は俺を恨んでいるはずだ。」

「それはお前の勝手な思い込みだ。頼介はお前に会いたがっている。いくら俺がアニキ代わりになっても、結局、アイツはお前を求めていた。いや、実際には、俺は頼介の純粋なアニキ代わりにはなれなかった。俺はアイツの気持ちを踏みにじる想いを隠し持っている。」


「銀司?」


すると、突然、銀司は俺に顔を近付け、深く口唇を重ねてきた。


「銀司!?」


「俺は頼介を傷付ける事はしたくない。この想いを忘れるために、利用させてもらうぞ、蓮介。」


再び口唇を重ねてきた銀司は、妖艶としか言いようがなかった。


‘利用させてもらう’


その言葉で、俺はすべてを理解した。

そして、それに付け込もうと思った。


その晩、俺は銀司が身動きひとつ出来なくなるまで、その体を貪った。

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