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52話 GINJI

頼介とのメシの約束をキャンセルした。

記憶にある限り、多分、初めてだと思う。


退院祝いに奢ってやると、俺の方から言ったのに。

アイツ、今頃しょげているかもしれない。


蓮介と関係を持ってから、俺は頼介の顔を見られずにいる。

後ろ暗い思いが、俺を頼介から遠ざけていた。


その代わり、何故か蓮介の部屋には通い詰めている。

俺達と袂を別ってから、おそらくは真面な生活はしていなかっただろう蓮介を思うと、世話を焼かずにはいられない気持ちになってきたのだ。


頼介にさえ食べさせたことのない俺の手料理を食べさせて。

まあ、頼介はいつも将太くんの手料理を食べているし、自分の料理の腕も確かだから、メシを食わせてやる時は、外食になる。

あ、でもよく考えたら、蓮介も料理は得意だったっけ。

じゃあ、コイツ出来ないんじゃなくて、やらないだけか!


それに気付いたものの、やはり足は蓮介のアパートに向いてしまう。


だが、それも今日までか…。

頼介が回復して、仕事復帰の目途が立ったからだ。


こうなれば、俺も頼介を避けてはいられない。


復帰一発目の仕事は、写真撮影だった。

俺達の写真集が発売される予定なのだ。


そこで、久しぶりにメンバー全員が揃った。


「よ!RAISUKE。」

「ホント良かったな~。思ったより早く復帰できて。」

USHIOとNAOTOが、それぞれ頼介に声をかける。


頼介はそれに対して、上の空で返事を返した。

これは、いつもの事だ。

USHIOもNAOTOも気にしてはいない。


アイツは、こういう仕事が苦手なんだ。

歌うわけでもないのに、衣装だけ整えさせられるから、通常モードか仕事モードか、自分で上手く切り替えられないらしい。


だが、俺を見つけると、どちらかというと通常モードに近い調子で駆け寄ってきた。


「GINJI!」

メイクしている時には、滅多に見せない笑顔を見せる。

俺はその笑顔を正面から、受け止めてやる事が出来なかった。


ついつい素っ気ない対応をしてしまう。

「RAISUKE。仕事中だぞ。」


自分でも冷たい言い方をしてしまったと思う。

一瞬、傷付いたような顔をした頼介だが、次の瞬間にはRAISUKEに切り替わっていた。


そのおかげで、撮影は実にスムーズに進行した。

クールなRAISUKEの表情を余すところなく撮影できて、カメラマンは上機嫌だった。


だが、俺達の微妙な空気にメンバーは気付いていた。


「おい、GINJI。」

頼介が控室に戻ったのを確認し、USHIOとNAOTOが声をかけてきた。


「なんだ?」

俺は2人に睨みつけるような視線を向けた。


この程度でたじろぐ2人ではない。

かえって、俺と頼介の間に何かあった事を確信したようだ。


「せっかく、アイツが復帰したってのに、どうしたってんだよ?」

「久々だってのに、メシにも誘ってやらないのか?」


「俺はアイツの保護者じゃない。なんで、俺がいちいちアイツのご機嫌とらなきゃいけないんだ。」

「いつも保護者面しているクセに、よく言うぜ。」

「何があったんだ?」


頼介との間に何かがあったわけじゃない。

蓮介との間にはあったが…。


それを説明するわけにもいかず、俺は2人を押しのけるように、控室に戻った。


私服に戻り控室を出ると、頼介が待っていた。

俺に声をかけようとしているのはわかったが、今日はアイツと一緒に居たくはなくて「お疲れサマ」とだけ声をかけて、俺は立ち去った。

声はかけたが、ほとんど無視に近い。


泣きそうになった頼介を慰めるUSHIOとNAOTOの気配を背後で感じながら、俺はその足で蓮介の部屋に向かった。

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