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49話 GINJI

蓮介の部屋に辿り着くと、灯りはついていた。

寝てはいないようだ。

俺はノックもせず、部屋の扉を開けた。


部屋は六畳一間。

ほとんど家具もないような部屋で、アイツはボンヤリと座り込んでいた。


「銀司?どうしたんだ?」

間の抜けた声と視線が返って来た。

それが、あまりにも頼介に似ていて、一瞬、怒る気が失せたが、そういう問題じゃない。


「お前、頼介の病院に行ったんだろう。」

「え?あぁ。なんで、お前が知ってるんだ?」

「お前を追いかけて、頼介が走り出したんだ。まだ動いてはいけない身体で。おかげで、傷が開いて、大変だったんだ。」


俺はそう蓮介に告げた。

蓮介は、驚いたような顔をしていたが、すぐに視線は落とされた。

「アイツ、何考えてやがるんだ…。そんな身体で走るだなんて。」


頼介を責めるような蓮介の言い方に、俺は一気に頭に血が上った。

「みんな、お前のせいだろうが!」

俺は蓮介に掴みかかった。

だが、蓮介は簡単に俺の手をすり抜け、反対に俺は押さえつけられた。

そう言えば、コイツ、喧嘩は滅茶苦茶に強かったな。


「そうだ!何もかも俺のせいだ!わかっている!だから、会えるわけはないんだ!」


そう言って、奴は馬鹿みたいに強い力で、俺を壁際に押さえつけた。

俺も腕力は強い方だが、とてもじゃないが、適わない。

蓮介は俺の髪を後ろから掴んで、無理やり頭を固定した。


その視線に、俺はゾクッとした。

いつもの間の抜けた視線じゃない。

これは歌っている時の頼介だ。

否、かつての、俺達の仲間だった頃の蓮介だ。


そして、噛みつくように激しく、口唇を奪われた。


え!?なんだ!?なんなんだ!?

よく事態が飲み込めないが…。


「何、考えているんだ!?蓮介!」

俺は必死に奴の口唇から逃れて、抗議の声を挙げた。

「この状況で、考える事なんて、一つに決まっているだろう。」

蓮介は暗い声で、囁く。


首筋を舐められる。

ゾクッとして、俺は声にならない悲鳴を挙げた。

情けない事に、足が震えて、立っていられない。

すり落ちそうになる俺の身体を、蓮介が支えた。


それから先は、もう抵抗する気力も萎え、俺は蓮介のされるがままになった。


翌朝になって、俺は蓮介の部屋で目が覚めた。

粗末な毛布が1枚かけられている。


いつの間に眠ったのか?

思い出そうとしてみたが、そうじゃない。

行為の激しさに失神したんだ。

それに気付いて、俺は頭を抱えた。


既に蓮介の姿はなかった。

そして「昨夜はすまなかった。仕事に行ってくる」という走り書きが残されていた。


「‘すまなかった’じゃねえだろう…。」

俺は深く息をついた。

こんなオッサンに、なんて事しやがる。

おかげで身体はガタガタで、マトモに歩く事さえ出来ない。


それにしても、喉がカラカラだ。

俺はアチコチ悲鳴を挙げる身体を引きずって、冷蔵庫を開けた。


………。


酒しかない。

あの野郎、どんな生活していやがるんだ。


仕方なく、俺は蛇口をひねり、水道水で喉を潤した。


アイツ、本当に何を考えているんだ?

だが、思い返してみて、ぞっとした。

これは、俺が頼介に対して、してみたい行為じゃないか…。


自分の浅ましさを見せつけられたような気がして、俺は壁に強く拳をぶつけた。

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