48話 将太
頼介に声をかけないまま病室を後にしたあの人を追って、俺は外に出てきた。
でも、あの人は行ってしまった。
俺の心を見事に見透かして。
俺はこの時、初めてこの人は俺の父親なんだなと思った。
俺の考えている事なんて、お見通しみたいだ。
その時、後ろでドサリという何かが倒れたような音がした。
音のした方に振り返って、俺は息が止まるかと思った。
「頼介!」
頼介が倒れた音だったのだ。
「何、やってるんだよ!?お前!」
ここまで駆けて来たのだろうか?
きっとそうだ
俺を、否、あの人を追いかけてきたんだ。
俺は駆け寄って、頼介を抱き起こした。
なんなんだよ!?
あの人は!
息子の気持ちはわかっても、弟の気持ちはわからないのか!?
こんなになるまで、会いたがっているじゃないか!
俺は病院の中に駆け込んで、人を呼んできた。
頼介はストレッチャーで運ばれて、そのまま処置室に入ってしまった。
俺はとにかく誰かに連絡しなくてはと思い、スマホを取り出した。
ほとんど無意識に、真っ先に連絡したのは、GINJIさんだった。
深夜にもかかわらず、GINJIさんはすぐに電話に出てくれた。
俺は頼介の容体が急変した事を伝えた。
あの人が会いに来た事は、言わなかった。
その他の関係者には、GINJIさんから連絡してくれると言ってくれた。
そして、GINJIさん自身もほんの僅かな時間で、病院に駆けつけてくれた。
GINJIさんの方が、頼介にとってアニキみたいじゃないか。
あの人も少しは見習ってほしいよ。
その頃には、頼介の処置も終わっていた。
急に動いたから、傷が開いてしまったようだ。
だけど、大事には至らなかった。
本当に良かった。
処置室から運び出された頼介は、目を覚ましていた。
俺とGINJIさんを見つけ、ばつの悪そうな顔をする。
「いきなり走ったそうじゃないか。こんな夜中に何やっているんだ!?頼介!」
GINJIさんが、頼介を叱りつける。
「ゴメン…。」
奴の見えない尻尾がションボリ垂れ下がる。
「何があったんだ。話してみろ。」
頼介が俺の方を見た。
俺が詳しい事情を話していない事を悟ったのだ。
頼介は話して良いかわからないといった表情だったので、俺が話に割って入って、説明した。
「あの人が来たんです。」
「あの人…蓮介か?」
「はい。あの人を追って、頼介は駆け出したんです。」
その途端、GINJIさんが顔色を変えた。
「待ってよ!GINJI!兄ちゃんのせいじゃないんだ。それに兄ちゃんは俺を助けてくれたんだ。それで十分だよ。」
そう言った頼介の言葉を無視し、GINJIさんは病院を飛び出して行った。




