表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/90

46話 蓮介

頼介が事故に遭ってから、今日で2週間。

俺はあの日、頼介の意識が戻ったのを確認して、すぐに病院を後にした。

その後の回復具合は気になったが、再びアイツのもとを訪ねる事はできずにいる。

それをするのは、いけないような気がしていた。

社長はそんな俺を気遣ってか、何度かメールでアイツの容体を伝えてくれていて、命の危機は脱したという事はわかっていた。

それで充分だと思った。


俺は敢えて、社長のメールにも返信しないでいた。

それでも気になって、仕事が終わると俺の足は、自然と病院に向かっていた。

仕事が終わるのはいつも深夜で、当然、面会時間だって過ぎている。

病院の前まで行き、そのまま帰るというのを、この2週間、繰り返していた。


今日もそうやって、深夜に病院の前まで来てしまった。

こんな馬鹿な真似は、今夜でやめよう。

そう思った時である。


「えっと、あの、すみません。」

突然、呼び止められた俺は、振り返って、心臓を鷲摑みにされた。

「あ、えっと、その」

相手の名前はよく分かっているのに、その名前を呼ぶ事はできなかった。

それは相手も同じだったようだ。


将太…頼介が育てた俺の息子だ。


「えーっと、その、こんな時間にどうしたんですか?」

戸惑いながら、俺に話しかけてくる。

「あ、気になって来てみたんだけど。面会時間は過ぎているだろうから、もう帰るよ。」

俺はそそくさと帰ろうとした。

「待ってください!」

「え?」

「えっと、俺も気になって来てみたんです。面会時間には、来られない理由があって。でも、時間外でもコッソリ入っちゃえば、大丈夫です。もう寝ていると思いますが、顔だけでも見て行きませんか?」

そう言って、彼は半ば強引に、俺を病院の中に連れて行った。


深夜の病棟は薄暗く、どこか気味が悪かった。

でも、彼は特に気にしている風でもない。

慣れた様子だった。


深夜の見舞いに慣れている?

彼なら、面会時間に堂々と来られるだろうに。

そう言えば、面会時間に来られない理由があると言っていた。

もしかして、俺のせいだろうか?

俺にバッタリ会うのが嫌で、面会時間を避けているのか?

否、だったら、今日だって、俺の姿を見かけても、わざわざ声をかけたりしないはずだ。


そんな事を考えながら、2人でナースステーションの前を忍び足で通り抜け、頼介の病室に向かった。


「頼介、入るぞ。」

彼は小さく声をかけながら、扉を開いた。

それに対する返事はなく、部屋の中は暗かった。

やはり、もう眠っているようだ。


「オイ、頼介。」

彼はベッドの傍まで歩み寄り、頼介を起こそうとした。

「あ、起こさなくていいよ。せっかく、気持ち良さそうに寝ているみたいだから。」

相変わらず、寝ている時と食べている時のコイツは、幸せそうだ。

こっちまで幸せな気分になる。

「でも、会いたがっていると思いますよ、頼介は。」

「いいんだ。起こさないうちに、帰ろう。」

俺はそう言って、病室を後にした。


足早に病院の外まで出てきた俺を、彼は追いかけてくる。

「待ってください!なんで、会ってやってくれないんですか!?アイツ、絶対に会いたがっていますよ!」

「俺がアイツの実のアニキだからか?」

「そうです!」

「じゃあ、君は自分の実の父親に会いたいと思っていたか?」

「あ…。」

彼は下を向いてしまった。

「特別会いたかったわけじゃないだろう?」

「正直に言えば、そうです。今回、たまたま会う事になりましたが、今だって、まるで実感はなくて。別に恨んでいるって、わけではないんです。ただ、なんか展開が早すぎて飲み込めないっていうか…。」

「だろう?アイツだって、それは同じだ。イヤ、アイツは多分、恨んでいると思う。無責任かもしれないが、アイツに会う資格は俺にはない。」

そう言って、その場を立ち去る俺を、彼はもう追いかけて来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ