38話 将太
ICUでの面会は、1時間に10分間、1人ずつと決められていた。
まずは家族である俺が入る事になった。
部屋に入る前に、給食当番のようなガウンと帽子、マスクを付けられ、中に入った。
何だか、昨日まで一緒に暮らしていたはずなのに、久々に見た気がした。
コイツの顔。
いろいろとチューブやら機械やら取り付けられていて、鬱陶しそうだけれど、顔だけ見れば、いつもの昼寝姿と変わりはしない。
特に苦しそうな様子もなく、良く寝ている。
「お前、人の気も知らないで、よくグゥスカ寝ていられるな…。」
思わず、そんな独り言が漏れていた。
「だいたい、お前のアニキで俺の本当のオヤジって、どういう事だよ?フツウに衝撃の事実、隠していやがって。全く、気まずいっつーの!」
俺は、頼介の前髪を弄びながら、1人でブツクサ呟いていた。
こうして、落ち着いて考えれば、確かに衝撃の事実だ。
でも、言っている俺自体、それほど実感を持っているわけではない。
「そもそもあの人の事、どー呼べばいいんだよ?お父さん?うわ、めっちゃ呼びずれぇ。」
弄んでいた前髪を軽く引っ張ってみたが、頼介が起きる気配はない。
ネボスケも大概にしてくれよ…。
「頼むから、起きてくれよ…。」
耳を引っ張ったり、頬を引っ張ったりしてみる。
それでも、起きようとはしない。
そのうち、何だか、子供がするような仕草に思えてきて、手を止めた。
何だか悲しくなってきてしまった。
こういう時は、いつもどうしていたっけ?
それすらもわからなくなって、泣きそうになるのを必死で我慢した。
そうこうしている間に、10分の面会時間はあっという間に終わり、俺は後ろ髪をひかれるような思いで、頼介のもとを後にした。




