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36話 頼介

ここはどこだろう?

俺は1人で草原のような場所を歩いていた。

‘歩いていた’というのも、違うかもしれない。

フワフワ漂っている感じ。

昼なのか夜なのかもわからない。

暗いわけじゃないし、だからと言って、明るいのとも違う気がする。


ここに来てから、時間の感覚もない。

いつからいるのか、どうやって来たのかもわからない。


そんな不思議な空間で、懐かしい声が聞こえた。


「頼介くん」


聞こえるわけない人の声だったから、空耳かと思った。


「頼介くん」


だけど、その声はまた呼びかけてきた。


辺りを見渡すと1人の女性が傍にいた。

いつからいたのかわからないのに、何故かそこにいた。


「久しぶりね。頼介くん」

「律子さん」


優しく微笑むその女性は、死んだはずの将太のママだった。


「どうして律子さんが、こんな所にいるの?」

「それはこっちの台詞よ。頼介くんは、まだこっちに来ちゃいけないのよ」


そう言われて、俺はトラックにはねられた事を思い出した。


「もしかして、俺、死んじゃったの?」

だとしたら、この不思議な空間は天国なのかもしれない。


「いいえ、頼介くんはまだ生きているわ」

「そうなの?」

「あの人が、あなたを助けに向かっているところよ」

「あの人?」

「頼介くんの大好きな人よ。きっと会いたいと思っていたはずよ」

「?」

「でも、それだけではダメなの。あなたが自分の意志で、向こうの世界に戻らないと」


そう言われて、俺は急に寂しくなってしまった。

律子さんとせっかく会えたのに。

話したいことがいっぱいあるのに。

そう思っていると、俺の気持ちが伝わったようだ。


「安心して。私にはまた会えるわ。もう少し先になると思うけれどね。でも、将太にはまだあなたが必要なの。お願い、戻って」


そうだ。

将太のことを忘れていた。

なんで、忘れていたんだろう。

戻らなきゃ。


「ごめん、律子さん。俺、戻るよ」

「ありがとう。本当に感謝してる。いずれ、その時がきたら、必ず私が迎えに行くからね」


そう言うと、律子さんの姿が揺らいだ。

俺は強く元の世界に戻りたいと念じた。


そうすると、さっきのフワフワした感覚は消え、身体中に耐えがたい激痛が走った。

だけど、それと同時に、声が聞こえた。

さっきまで聞こえていた律子さんの声じゃない。


「頼介!」


その声に呼ばれて、ゆっくりと目を開ける。

そこにいたのは、将太だった。

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