34話 GINJI
社長がケイタイ使用可能エリアから戻ってきた。
「社長、頼介のアニキって人は、来てくれるんですか!?」
自分の実父であることを知って尚、将太くんは蓮介のことを‘頼介のアニキ’と表現した。
「わからん。連絡はつかなかったんだ。留守電にはいれてきたから、本人にその気があれば、来てくれるだろう」
社長はそう答えた。
「その気があればって、アイツの命がかかってるんですよ!住所も知っているんですか?迎えに行きましょう!」
「わかった。そうだな。蓮介は今も都内に住んでいる。引っ越していなければな。ここから車で30分ほどのところだ。行こう。将太くん、付いてくるか?」
ここで将太くんが、初めて戸惑ったような表情を見せた。
だから、俺が横から口を挟んだ。
「社長、俺と行きましょう。将太くんは、頼介のそばにいてやってくれ」
USHIOやNAOTOも行ったほうが良いかと訊いてきたが、俺は断った。
大人数で行っても仕方ないし、説得することになるなら、俺がすべきだと思ったからだ。
俺は社長とともに、蓮介のもとへ向かった。
走る事30分。
着いたのは古びたアパートだった。
「ここだ」
2階の一室が、今のアイツの住処のようだ。
社長がドアをノックしたが、応答はない。
部屋の灯りもついていない。
もう深夜だから、寝ているのかもしれないと思って、もっと強めにノックしてみたが、やはり反応はない。
こんな時間に留守なのか?
それとも、引っ越してしまったのか?
俺達が立ち尽くしていると、鉄製の階段を登ってくる足音がした。
コンビニ袋をぶら下げ、無精髭を生やした男。
実際の年数以上に年をとった蓮介だった。
「銀司…か?社長まで…どうしたんですか?」
こんな時にケイタイも確認せず、何を寝惚けた事を…と思ったが、ちょっとボケた話し方は、頼介とよく似ている。
「まだ、留守電を聞いていないようだな。単刀直入に言う。頼介が事故に遭った。輸血が必要だが、珍しい型らしい。お前と頼介の血液型は合うのか?」
俺は感情を抑え、要件だけを伝えた。
だが、頼介が事故に遭ったというと、蓮介は俺に掴みかかってきた。
「頼介が!?オイ、どういうことだ!?アイツは無事なんだろうな?」
アホか?コイツは。
「無事じゃないから、お前のところに来たんだろうが!」
俺に一喝されると、蓮介は落ち着きを取り戻し、俺の質問に答えた。
「俺も頼介もAB型のRH-だ。珍しい型だから、何かあった時には、お互いに助け合おうと、昔は話し合っていた」
「じゃあ、今すぐ一緒に来てくれ。わだかまりはあるかもしれないが、今はお前が必要だ」
「わかった」
「但し、ひとつ言っておくことがある。病院には将太くんもいるぞ。お前が実父であることは、たった今、知ったばかりだ」
蓮介が目を丸くした。
「将太?律子が産んだ俺の子か?今、頼介と一緒にいるのか?」
「将太くんを育てたのは頼介だ」
「頼介が?でも、律子が亡くなった時、頼介はまだ…」
「17だった!それでも将太くんにとっては、頼介が父親なんだ!お前じゃない!」
俺は何だか辛くなってきた。
「わかった…。‘将太の父親’を助けに行こう」
蓮介も辛そうな顔をしていた。
俺達は、社長とともに再び車に乗り、病院へ、頼介と将太くんのもとへ向かった。




