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32話 将太

今日もオヤジの帰りが遅い。

でも、そんなの心配するようなことじゃない。

いつものことだ。


なのに、俺は妙にそわそわしていた。

何故か頼介の顔を早く見たかった。

そうしないと、安心できないような気がしていた。


これが‘虫の知らせ’っていうヤツだったのかもしれない。


家の電話が鳴った。

俺はビクっとした。

出てみると、NAOTOさんだった。

この時点で、俺はアイツの身に何かが起こったことを悟った。


NAOTOさんは、ともかく佐久間さんがすぐに迎えにいくから、それまで家で待つようにと言った。


佐久間さんが来るまでの間は、すごく長かった。

実際には、大した時間じゃなかったんだけど、俺の中ですごく長かった。


俺はオフクロが死んだ時のことを思い出していた。

やっぱり交通事故だった。

オフクロは即死だった。


だけど、頼介は生きている。

それを自分に言い聞かせた。


佐久間さんがやってきた。

お互いに言葉少なだった。

病院までの道程も無言だった。

とにかくお互いに、心の中でアイツの無事を祈るだけだった。


病院に着くと、アイツは手術中だった。

NAOTOさんは比較的気丈に振舞っていたけれど、GINJIさんは憔悴しきった様子だった。


意外だった。

GINJIさんは、いつでもクールなイメージだったからだ。


そして、俺はNAOTOさんから、事故の顛末を聞いた。

その日初めて会ったアイドルを助けるために、自分がはねられたって?

バカじゃないのか?

バカだバカだと思っていたけれど、やっぱりバカだ。


しばらくすると、医者が出てきて、今の状況を説明したいと言ってきた。

俺とGINJIさん、佐久間さんに事務所の社長で聞くことになった。


「今の頼介さんの状況ですが、幸いにして脳や脊髄に大きな損傷はありませんでした。ただ、胸を強打しており、肺と心臓に肋骨が突き刺さっています。緊急開胸手術でこれを修復しようとしたのですが、出血が激しいため、輸血なしではこれ以上の処置はできません。ですが、頼介さんの血液型…AB型のRH-ですね」

頼介の血液型がAB型というのは、聞いたことがあった。

でも、RH-って、どういう意味だろう?

「ABのRH-は、日本人では2000人に1人の珍しい型です。献血センターに問い合わせましたが、今現在、この型はありませんでした」

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

「ご兄弟で、AB型の方はいらっしゃいませんか?その場合、RH-の可能性が高くなります」

その言葉に、俺以外のGINJIさん、佐久間さん、事務所社長は、ハッとしたような顔をした。

そして、GINJIさんが口を開いた。

「社長…今の蓮介の連絡先、知っていますよね?」

「それは…イヤ、しかし」

「知っているんだろう!」

GINJIさんは、社長に掴みかからんばかりの勢いだ。

「ちょっと待ってください!レンスケっって、誰なんです!?」


俺がそう口を挟むと、皆の視線は俺に集まった。

言って良いのか悪いのか悩んでいる…そんな感じだった。


「教えてください。アイツの命がかかっているんでしょう」

その言葉に、GINJIさんは口を開いた。


「アイツの…頼介の兄だ」

「頼介のアニキ!?そんな人がいたんですか?」

「そして、将太くん。キミの実父でもあるんだ」

突然、明かされた事実に、俺は打ちのめされていた。


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