3話 将太
俺のオヤジ、北里頼介。年齢は多分、27歳前後。只今、TV画面に映っているド派手なミュージシャンRAISUKEの正体である。
俺はもともと本当の父親を知らない。オフクロは‘未婚の母’って、ヤツだった。でも、それ自体は、今時珍しくもないだろう。
ところが、俺が5つくらいの頃、オヤジがやって来た。はじめは‘たまに家に来て遊んでくれるおにいさん’だったが、そのうち住み着いてしまった。オフクロも若かったが、オヤジはさらに若かっただろう。
俺が7つの時、オフクロが交通事故で死んだ。オフクロに親類はいなかった。俺はそういう子供達を集めた施設に入れられるものだとばかり思っていたが、どういうわけか、そのままオヤジとの2人暮らしが始まった。
オヤジがビジュアル系バンドR-GUNのボーカルRAISUKEとしてデビューしたのは、この頃だ。ちなみにバンド名は、メンバーの頭文字をとったという単純なものらしい。
要するに、俺と自分の生活費を稼ぐために、今まで趣味でやっていたバンド活動を本格化したのだ。ここで就職するとか、真っ当な道で稼ごうとしないあたり、オヤジらしいよ…。でも、まあこれだけ売れたのだから、才能があったのだろう。