クローン計画
とある大学か理化学研究所かの科学者が開発した、世界の秩序をひっくり返すような装置、『クローン』
このクローンと呼ばれるものは、今まででは考えられなかったことを簡単にやってのけてしまうスーパー装置らしい。その焦点に当てられたのが『死』というものであった。
少し話を変えよう………。
俺が住む県は首都東京に近い、いわば近郊地域である。そんなこの場所だが、俺が生まれる五十年ほど前までは高いビルも多少ある程度で、東京には恐れ多い立場であった。
しかし時が流れていくにつれ、街の発展や国の発展、そしてなにより科学技術の発展によって、どの県も首都と変わらぬ風貌を見せるようになっていった。
当然の如く、今まででとは景色も学業も職業も全て一変し、この国の何もかもが五十年前とは違っていた。
そんなある日、ニュース番組を騒がせた情報が届いた。それはある科学者が開いた論会で、名もわからないような無名の科学者が弁論をはかっていた。
「私はついにこの理不尽な世界の法則に、僅かながら抵抗できる装置を発明することに成功した。事故死、他殺死、病死。そうやって死んでいってしまった人間はどんな気持ちだっただろうか。きっとその人たちもこの装置で報われるはずだ…」
その言葉の終わりと同時に、彼の背後のホワイトボードに移されたPCの画面が切り替わった。
そこには計算式や用いた材料、法則式などが羅列に並べられていた。その一語一句見落とさずに記憶することはできなかったが、彼が話続けていたことを断片的に聞き取ると、
寿命で死んでいった者以外の人間を自動で判別し、その人物たちを擬似世界に飛ばして戦わせ、生き残った者一人だけが現実世界に無事帰還することができる。
というものだった気がする。
その時俺は鼻で笑っていたと思う。記者の人達も笑っていたのが画面越しでも伝わってきた。