少女の悩み、はてさてどうなるやら
その後の事。宮は胡月の屋敷での朝食を取った二刻の後に自分の屋敷へと帰る支度を始めた。今はその真っ最中である。
「どう、忘れ物はない?」
胡月は宮に問うた。
「たぶん、無いと思いますの」
まあ、持ってきたものがあの自作の奴だけだからね、と胡月。
「まあ、それもそうですわね。……さて、私はもう行きますの」
「わかったわ。なんならお姉さんが玄関まで見送ってあげましょうか?」
宮はその言葉に胡月が無性に自分を子ども扱いしているように感じた。
「なんか、偉そうですの」
「そんなことないわよ~?」
「そうなんですのー?」
宮は少しの疑いを持ったまま、胡月を半目で見つめた。
「ええ、そうよ」
宮は言葉の途中からどんどん胡月の口の端が半月のようになっていくことに気づき、嫌な予感が感じた。
「そんな、あなたを一人で行かせたら、あれを思い出して怖くて泣いちゃうんじゃないかしら、なんて思ってないわよ~」
宮の嫌な予感は的中した。
「もう~!胡月ぃ!あれなんて怖くないって言ったじゃありませんのー!」
胡月は宮のその様子に腹を抱えて笑った。
「な、なにがおかしいんですのっ!?」
「べ、別に……~~っ!」
「わ、笑わないでくださいますの!?」
宮は赤面して胡月を咎めるが胡月は一向に笑いを止めずに笑っていた。
「~~~っ!!もう、知りませんわ!」
宮はそういってそっぽを向いてはいたが、内心ではこのような光景が愛おしくもあった。
そして、彼女たちはその態勢のまま玄関へと向かった。
あの後、胡月の屋敷を迎えに来ていた牛車に乗って出ると、まだ未知であるあの謀反人のことが自然と思い出された。宮は牛車の中で色々と容姿や年齢、どんな性格の人なのかなどを逐一考えていた。その間に随分な時間が経過していたことを宮は知らない。
半刻後に牛車は藤原の屋敷に到着した。宮はいつの間にか時間が経ってしまったことに驚いた。そして牛車を降りてみると、自分が想像していた光景と違って再び驚いた。なぜならば、居るはずの屈強な兵士たち、またその兵士たちを統括する司令官などが一人たりとていなかったからである。
宮はとにかく理由を知りたがった。そこで、おとなしくもの知りぬべき顔したる侍女を呼びて、などと言った様子で宮はちょうど庭を掃除している年配の侍女を呼んで事情を聴いた。
「ねえ、昨夜朝廷の人はきませんでしたの?」
「いえ、お越しになりましたよ、宮様」
宮はこの言葉にある程度の混乱をした。
「じゃ、じゃあなんでその人たちはいませんの?」
「その人たちはここを昨夜の休憩地点にお選びになったようでして。早朝に次の場所に向かって移動をなされたのです」
「えっ……」
宮は一旦の呼吸を得ると、勢いを殺さぬまますべての息を吐き出すよう叫んだ。
「ええええええっっ!!??」
少女たちの、ひいては宮のあの苦悩は何であったのか。そんなものは誰も知るわけがなく。無駄である。




