少女の思考、拙くとも明確に
「ところで今夜あなたのところに朝廷の人が来るんですってね」
胡月はふと思い出したように切り出した。
「そうなの?」
宮はお菓子として出された梨をついばみながら言う。
「『そうなの?』じゃないでしょ。お父様や侍女の人たちが噂してたわよ」
宮は両の人差し指をこめかみに立てると小首を傾げた。
「……思い出しましたわ。確かそんなことを言ってたような。でもなんで私のところに来るのかしら?」
「どうも聞くところによると朝廷転覆を企てた人を捕まえにいくらしいわよ」
「謀反、ってことですの?」
「ですの」
そう胡月は言うと差し寄り、そのまま梨を一かじりした。
「謀反ねぇ~、やはりといったらあれだけど、あんまり実感無いわね」
「それもそうですの」
「……ん?」
「なんですの?」
「い、いや……」
胡月はふと理解したことを言おうか迷った。
「なんですのよ?」
「なんというかね……?朝廷の人があんたの屋敷に来るってことは」
胡月は一拍の間を空けた。
「その謀反人とやらもこの近くにいるんじゃない……?」
宮は胡月が言ったことを頭の中で反復した。そして、そのことの重大さを理解した。
「でで、でも!でも、ですわ!私の屋敷を中継地点にして一泊したら次の場所にいくのかもしれないですわ!」
「そ、それは無いわ」
「な、何でですの!?」
「だって、あなたの屋敷を抜けたら森と崖だけじゃない。それも崖は下方面に続いてるし」
胡月の言葉の真意は宮にしっかりと届いた。そして宮の焦りも胡月にしっかりと届いた。
「で、でもでも……!」
宮は慌ててる向こう頭の回転は速く、かつて侍女の幾人かが食材調達の話の途中森の中にある空き屋敷の事について話してくれたことをかすかながらに思い出していた。
「そ、そういえば、あの森の中には空き屋敷がありましたわ!もしかしてそこに行くのかも……」
胡月はその情報に少々驚いた様子を見せた。
「ど、どうしましたの、胡月」
「……きっとそこよ」
「……なにが、ですの?」
胡月は額に手を当て、少し考えながら言った。
「ちょうど半月前の事かしら。ここ周辺の森の中の屋敷に人が住み始めたって侍女たちが噂をするようになったのよ。そこで、一応興味があった私はそれについて調べてみたのよ。でも、ここ周辺の森に屋敷なんてなかったのよ。だから、私はずっとよくある眉唾物なんだわ。と思っていたのよ。でも、その情報からするに一概にそうは言えないみたいね」
「つ、つまり、なにをいいたいんですの……?」
宮は胡月の語り口に少々の恐怖感を覚える。
「つまりね、この屋敷の情報と行った先に森と崖しかないような所に朝廷の人が来たこと、この二つをうまく組み合わせると、一つの事実が生まれてくるのよ」
「そ、それは……?」
それは
胡月が大仰に左手を横に振ると、右手を胸に当てた。
「それは、その屋敷が件の謀反人の本拠地であるということよ!!」
「な……」
宮は深呼吸した息を吐き出すように言った。
「なんてことですの――――っ!?」




