貴族の娘、藤原の娘二人の間にあるは友人の契
宮は友人である胡月の屋敷に自作の和歌を持ち込んで泊まり込みに行っていた。その際、胡月に案内されて廊下を歩いていく途中、屋敷の中央部に位置する庭を暇つぶしがてらに見た。その庭は自分の屋敷の庭と比べてとても小さい4分の1の面積ほどしかなく、宮にとってはとても小さいように感じ取れた。そこで宮は隣を前を歩いていた胡月に、
「何故、あなたの所の庭は小さいのかしら」
と疑問を口にしてみた。
その疑問に胡月は呆れ顔になりながら、
「あなたの所の庭が大きすぎるのよ」
と言うと宮の方に踵を返すように向き直り、
「あなたはやはり経験が足りないのよ」
「やはりそうなのかしら……。私昔から屋敷から出たこと余り無いものね」
「自覚あったのね……」
どういうこと、と宮は問うてみる。
「あなたって昔から奇想天外なことを言うじゃない」
「そんなことはないでしょう。どんな時も私はちゃんとしてますわ」
「なにを言ってるのかしらね、この娘は」
胡月は深いため息をつく。
「前なんて……」
ここには「滝」を入れるべきですわ。
「って言ってたじゃない」
その言葉に何を頓珍漢なことを言ってるのかしらといった風な顔をした宮は、
「何を言いますの。それは当たり前の事じゃありませんの」
とさも当然のように言うと、したり顔をしながら胡月の前にでる。
胡月は顔を手で覆い俯きがちになりながら、、
「どこがよ。せせらぎが枕にあるのに何で滝が出てくるのよ」
と呟くと、宮の隣に並んだ。
宮はむっとして、
「再び何を言いますの。せせらぎの途中に滝があるのなんてちっとも不思議じゃ無いではありませんの」
もうこの娘は……!
胡月は再び顔に手を当てながら左の宮を盗み見るようにしながら、少々声を荒上げる様に言った。
「何処にせせらぎの途中に滝があるのよ……!」
「だ、だって、私の屋敷には……」
「あなたの屋敷は豪勢すぎるのよ!普通の庭に滝なんてないのよ!」
宮は頭に電流が走ったような感覚を受けた。
し、知りませんでしたわ……
なにかと鈍い汗をかき始めた宮の隣、胡月は宮の前に出ると同時に向き直り、びしっと指を立てながら宮に告げた。
「ほら見なさい。あなたは自分のその狭い経験知識の中でしか物を語れないのよ」
むむむ、ですわ……!
「何がむむむよ。そんなこと言う暇あるんなら、外を散歩でもしてきなさいな」
宮はその言葉を聞くと俯いた。
それは……
「それは無理ですわ……。お父様がお許しにならないもの」
宮はそういうと決まりが悪いといった様に目を伏せた。
胡月は宮の家系を思い返すと、
「そう…だったわね。私軽率だったわ。ごめんなさいね・・・」
胡月も宮同様決まりの悪いように俯くと、
「き、気にしないでもらえるとうれしいですわ。いつもの事ですし、慣れてますわ」
胡月は宮が場の空気を和まそうとしているのを察しながらも、心の奥底では外の世界への願望を捨てきれていない様に感じた。しかし、自分が一介の貴族の娘、到底藤原の娘をどうこうできるはずもなく・・・。そのことをずっと前から理解していた胡月は今、私ができる限りこの娘を笑わせてあげようと常に心に抱いていた。
「ねえ、そういえば今日はどうしてここに来たんだっけ、宮。」
胡月はこの場を無理矢理にでも転換させることにした。
「……!そうですわ、あなたに見てもらいたい和歌がありましたの!私の自信作ですの!」
すっかり忘れてましたわ!と宮は言うと、胡月は、
「じゃあ、それの品評も兼ねて私の部屋に行くわよ」
となるべく先程の事を掘り返さないように言った。
「ええ、わかりましたわ!」
宮は嬉しそうに咲くような笑みを浮かべると、二人、宮と胡月は足音速く胡月の部屋へと向かった。




