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10月17日ーAM5:00
私は寝室のダブルベッドで仰向けになっていた。付けっ放しの腕時計から絶え間無く秒針の音が聞こえる。ベッドサイドに置いた暗いオレンジ色の間接照明が、起こした上半身に長い影を作っていた。昨夜から一睡もしていないが疲れは全く感じていなかった。私は腕を伸ばしてサイドテーブルの上の小さな写真たてを掴んだ。柔らかな木目のフレームの中で彼女は微笑んでいた。濃いブロンドの緩いウェーブのかかったミディアムヘアに、透き通るように輝いたブラウンの瞳が私を捉えて離さなかった。ゆっくりと右手の親指で彼女の頬を撫でた。
「ティナ」
小さく彼女に呼び掛けた。私の声は広い寝室の闇に吸い込まれた。
「俺のやることはひとつだ。そうだろ」
彼女は変わらない微笑みを私に向けていた。それで一向に構わなかった。私は写真たてを元の場所に戻すと、ベッドから起き上がり身支度を始めた。